ハイリワード

春夏かなた

第1話 はじまりは、洞窟の中


バロウの森の奥深く、凶悪なゴブリンが巣食う洞窟の中で、大柄な戦士とハーフエルフの盗賊娘が、ゴブリンたちとの激闘を繰り広げていた。


戦士と盗賊娘は、まるで迷路のような複雑な洞窟内を縦横無尽に駆け回り、群がるゴブリンたちをバッタバッタと…いや、そこまで華麗ではないが、とにかく必死に逃げつつなんとか撃退していく。


ザンッ!


ゴブリンA:「グギィィィィッ!」


エディの長剣が閃光となって空を裂き、ゴブリンの胸元を深く貫いた。甲高い悲鳴と共に、緑色の小鬼が血溜まりに崩れ落ちる。


だが、勝利の余韻に浸る間もなく――


エディ:「くそっ、何匹いんだよ。」


洞窟の奥から、石斧を振りかざしたゴブリンの群れが、地鳴りのようにぞろぞろと湧き出てくる。


エディ:「これじゃあ、埒があかねぇ……!」


エディは舌打ちしながら、迫りくる敵の攻撃を紙一重でかわす。剣を振るうたびに金属音が洞窟に響き、彼の額にはじっとりと脂汗が滲み始めた。


シュッ、シュッ!


トレミィ:「エディ、こっち!こっち!」


後方からトレミィの甲高い声が飛んだ。


彼女の手にしたボウガンから放たれた矢がゴブリンの足を的確に射止め、その動きを止める。


その一瞬の隙を見逃さず、エディは駆け出して、トレミィの元へ合流した。


エディ:「引くぞ!」


トレミィ:「うん!」


二人は押し寄せるゴブリンをかわしつつ、洞窟のさらに奥へと進んでいった。



___洞窟の入口


薄暗い洞窟の入り口に、一人の男が立っていた。


ローブを深く被り、その顔は影に隠れて見えない。しかし、彼が放つ独特の気配は、ただの旅人ではないことを物語っていた。


魔術師:「おや、珍しい。」


その男が、洞窟の奥へと足を踏み入れると、地面を揺らすような重低音とともに、一際大きな影がゆっくりと近づいてくる。


魔術師:「あなたが、お出迎えしてくれるとは。」


魔術師の言葉に、影――ゴブリン・ボスは不敵に笑った。


ゴブリン・ボス:「なぁに。ネズミが紛れてきたようなんでね。今、対処させてる。」


魔術師:「ねずみ、ですか。」


魔術師の細められた瞳が、ゴブリン・ボスの巨体を疑わしげに見上げる。その視線に気づいたのか、ゴブリン・ボスは威圧的に問うた。


ゴブリン・ボス:「なんだ。」


魔術師:「どうやら、ここも冒険者どもにかぎつけられたようですね。またお引越しが必要なようですね。」


魔術師の言葉に、ゴブリン・ボスは鼻を鳴らす。


ゴブリン・ボス:「ここも、あきてたところだ。」


どこか面倒くさそうに吐き捨てられた言葉に、魔術師は肩をすくめた。


魔術師:「まぁ、いいでしょう。では、この間の戦利品をみさせてもらいましょうかね。」


魔術師とゴブリン・ボスは、軋むような足音を響かせながら、洞窟の奥深くへと消えていった。




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