吉田ちゃん

吉田ちゃんは私の中学時代からの友人です。付かず離れずで四半世紀に渡る付き合い。お互い生活サイクルが違うけれど時間を作って食事したり、電話したり、居心地の良い友達です。


吉田ちゃんは大手商社にずっと勤めてます。職を転々とし、占い師に落ち着きつつある私とは大違い。お互いに全く違う仕事なので、吉田ちゃんも結構あけすけに会社の話をします。私も同じですが、さすがに占いのクライアント様のことは話してません。


8月最終日の日曜日に久しぶりに吉田ちゃんと食事の約束をしました。彼女は美味しくて高い店から、安くて美味しいけど混んでて落ち着かない店まで熟知してるので毎回指定されたお店に現地集合です。今回は個人店の串カツ屋さんでした。


3本ずつ注文し緑茶ハイが卓に置かれると

「はい!お疲れー」と乾杯。

一口緑茶ハイを飲むと吉田ちゃんは声をひそめて話し出しました。

「早速話しちゃうけどさぁ。私、話したいことがあるんだよ。」

うなずく私に

「やーもうこれ、去年の年末行ったカラオケの時にも話そうと思ったんだけどさあ。」

と言うと、口をキュッとし私を上目遣いに見てくる。あー私に話したいけど話しづらい内容、占いとか霊とかなのかな、と気づき

「変に気にしないで話してよ。」と、伝えるなり吉田ちゃんは堰を切ったように話し始めました。


吉田ちゃんの話を時系列にすると

①去年大学新卒入社した男の子A君(仮)が彼女の部署に来たが、とにかく浮いている。女性との距離感がわからないのか、セクハラになるギリギリラインの発言や行動で若い女の子から苦情が絶えない。

②自分が彼にやんわり注意するか、とも思ったが自分自身は何もされてないし部長に軽く相談した。(吉田ちゃんは課長さんです)

③穏やかな部長が何故かキレまくってしまい、A君を部署内で叱責。

④A君は翌日から1週間ほど風邪という連絡で欠勤。その間に部署内で女の子が好き放題A君を罵るような雰囲気になる。

⑤部署内の女の子の数人が部長に個人的にお礼に行ったこともあり、部長がしてやったり顔で部署内の女の子に馴れ馴れしくなる。

⑥A君が出社すると、またも部長が部署内で皆が気持ち良く働けるよう頼むよ!とA君に発言。さすがに女の子達も部長のやり過ぎ間に辟易。A君は英語とフランス語がネイティブ並みに話せ、仕事はできる子だからA君に同情する子も出てきた。


「これ、去年の年末までに起きてた事ってこと?」

「そうだよ。ここから本番だから」


串カツおすすめセットを頼み、私たちはカウンターから奥のテーブル席に移った。






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