午前三時

冷たいスープを飲み干したあと、

スプーンが、かすかに笑った気がした。


時計は止まっていないのに、

秒針だけがどこかを見ている。


郵便受けを開けると、

白い封筒の中で音が動いた。

誰の名前も書かれていないのに、

たしかに呼ばれた気がする。


カーテンの隙間から見える道は、

朝と同じように曲がっている。

でも、あの角の先に

何があったか思い出せない。


冷蔵庫のモーターがうなる。

その低い音の中に、

自分の声が混ざっている気がして、

しばらく立ち尽くした。

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空へと沈む世界観 @ryo_182-77

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