それはまるで、恋のようで。
@000konpeito
第1話
出会いは、偶然SNSに流れてきたアイドルである彼女達の姿を見て。
今までアイドルに興味なんてなかったのに。花が咲いたような、キラキラとした笑顔を浮かべて、歌って踊る可愛い女の子を見て、どこか浮足立つような、ふわふわとした気分になったのだ。
同性なのに、それは、まるで恋のようで。彼女の笑顔を見ると、嬉しくなり、どんなことでも恐れずに挑む姿に酷く焦がれた。
それからは、彼女が所属するグループのファンクラブに入り、CDを買い、ひたすら画面越しに彼女の姿を眺めていた。
どんなときも、キラキラとした笑顔をファンへと向けて、「いつも応援してくれてありがとう」と伝えてくれる彼女のファンであることが楽しかった。
初めてライブに行った時には、こんな可愛い人がいるのかと頭を抱えるほどに、その存在が尊いものに思えた。
いつだって声を聞いていた。一人暮らしの夜に寂しくなったあの時も。社会人一年目になって、先輩に怒られて泣きながら夜道を帰ったあの時も、彼女の声を聞いていた。
私と年齢だってそう離れていないのに、いつだって完璧で、真っ直ぐで、私に頑張る勇気をくれる、キラキラとした彼女の姿が憧れであり、大好きだった。
ある時、アイドルとしての裏側を写した動画の中で、いつも笑っている彼女がポツリと涙を流して、小さな声で言った。
「ステージで歌うのが怖かった」
その頃、彼女の歌が非難されたことがあった。それは、彼女のファンでもないんでもない人が言ったものだったけど、口に出すのも憚られるようなその内容に、思わずスマホを壊したくなるような衝動に駆られた。
それと同時に、完璧なアイドルのように思えていた彼女が、自分とそう歳も変わらない、ただの女の子なのだと理解した。
心無い言葉が、どれだけ彼女を傷付けたのか。それを考えるだけで胸がギュッと締め付けられる思いだった。
だけど、『ステージで歌うのが怖い』と言った彼女が、またステージで歌うことを選んでくれて、ファンの前では恐れや迷いなど一切見せずに、ただひたすらにキラキラとした笑顔を見せてくれるその姿に、また大好きになった。
初めての対面での握手会。緊張で用意した長文なんて話せるわけもなく、震えた声で、たった一言。「アイドルという道を選んでくれてありがとう」とだけ言った私に、「こちらこそ。私を見つけてくれてありがとう」と悪戯っ子のように笑って言ったあなたのことを、好きでいて良かったと、心の底から思った。
私の太陽へ
きっと、アイドルというものは、私たちファンが思っているより何倍も、辛いことの方が多い職業だと思います。
それなのに、アイドルという道を選んでくれたことに本当に感謝しています。
学生時代から、大人になった今まで、私の人生は、あなたと共にありました。
初めてあなたに会った時の感情は、言葉では言い表せませんが、敢えて言うとするならば、それは、まるで恋のようだったと思います。
あなたの姿を見て、一緒に一喜一憂する日々は楽しく、とても充実しています。
『あなたのファンでいて良かった』と思わせてくれるあなたのことが大好きです。
これからもずっと、あなたのアイドルとしての人生が、華々しく輝いて、楽しいものでありますように。
あなたはずっとずっと私の太陽です。
あなたに恋した、ただの一ファンより。
それはまるで、恋のようで。 @000konpeito
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