鋭意開発中
白川津 中々
■
「もう13時か……」
出社してキーボードを叩いているといつの間にか昼過ぎ。昼食を取る間もなく仕事に打ち込んでいた事に気が付き、溜息交じりの呟きが漏れた。
「森さん、早朝出勤してますよね。疲れないんですか?」
隣に座る柏田君である。先程ランチから戻って来たばかりで、今はぐうたらしている。良いご身分だが、今は何をいってもハラスメントになる時代。嫌味も控えなければいけないため、質問内容に答えるだけに留める。
「そりゃ疲れるけど、仕事だから……」
「前もそんな事言ってましたよね。この分だと、“もう朝か”なんて事になるんじゃないですか?」
「そこまで愛社精神は持っていないよ。休憩時間過ぎているのにダラダラできる程面の皮も厚くないけどね」
おっと、つい口が滑ってしまった。
「パワハラですか?」
「訴えるなら社内窓口よりさっさと社外に持ちだす事をおすすめするよ。あと、録音データなんかもあるとなおいいね」
「次から森さんと話す時はボイスレコーダー準備しときます。経費で落ちますかね?」
「試してみたらいいさ」
無駄話にも飽きたので適当にあしらい作業再開。なぜ動いているか分からないコードになぜかエラーが出たため、なぜか組み込むと直るパッチを鋭意開発中。進捗は芳しくなく、優先度高め。クソ案件だが忙しいと腹も減らなくなるから経済的だ。浮いた金で今日は牛丼の特盛を食べよう。もちろん、終電の後の話だ。
「さ、ちゃっちゃと終わらすかね」
キーボードを叩く。集中、集中……
……
……
「おはようござ……あれ? 森さん、今日も早朝出勤ですか?」
「?」
柏田君の言葉を理解するのに数秒。はたとして時計を見ると、朝の8時。俺は思わず、声を落とした。
「もう朝か……」
鋭意開発中 白川津 中々 @taka1212384
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます