〔Side:Juli〕24. デートの終わりに
シノンに選んでもらったのと、私がシノンに選んだものをそれぞれ試着してサイズを確かめてから購入した。
用途の1つしかないもの。
今回の買い物は、シノンが私の不在中に勝手に部屋に元カノ(とその今カノ)を連れ込んだ事への一応の罰ということにして誘ったので、シノンからすると強制参加の面が強い。
けれど私としてはシノンには自分から私と積極的に一緒に出かけたりすることを楽しんで欲しい。
そのための理由付けの1つとして買ったもの。
荷物がだいぶ増えてきたので、この後のディナーで少し邪魔になってしまうし、すぐに使うものでもないので、手荷物をまとめて部屋まで配達を頼むことにした。
「お待たせ、シノン。お店に向かいましょう?」
「うん、そうしよ。はい」
シノンからにこやかに右手のひらが差し出された。
「う〜ん、これ?」
私はシノンの差し出した右手のひらに、カバンにしまおうとしていたお財布をのせた。
「え!? ちがうちがう返すよっ、そ、そうじゃなくって、これはその、ちゃんと言わなきゃだったよね? ごめん」
「うん? ありがと……それで?」
「……あの、さ。先程はその……袋を持っておりましたので、左手とは、繋いでない、から、繋いだり……とか……どう、かな? って……」
視線を泳がせながらも再び右手を差し出して、シノンがゆっくりと言葉を絞り出すのがたまらなく可愛くて……
しかもそれは私と手を繋ぎたいからってことに……
その右手とシノンの顔を交互にみやりながら、私は口角が上がるのを止められず、右手で口元を覆う。
「うん……」
なんとかそれだけ言えたけれど、絶対声に嬉しさが滲んでたと思う。
やっぱ私チョロすぎるよね……でも今のはシノンがずるいもの。
――
今日のディナーはドレスコードもなく気楽に話しながら食べられるお店にした。
シノンが作ってくれるものは洋食が中心なので、和食はあまり好みではないのかもしれないから、洋食のお店で候補を絞り込んだ。
フレンチのコースとかとも迷ったけれど、今日のところは記念日とかでもなく普通にお出かけする目的だったので、無難にイタリアンにしておいた。
それでもコースとして注文しているので、それなりにバラエティに富んだものが出てくる。
「わぁ~」
さきほどの執事喫茶でお酒を飲んだせいもあるのか、反応が素直で可愛い。
私も最初にこういうコース料理を食べたときは似たような状態だったのかな。
かわいらしい見た目で色彩に富んだ Antipasto Misto 。前菜の盛り合わせ。
夏に優しい冷製 Zuppa 。イタリアの煮込み料理で具材の多いスープ。
一皿でテーブルが華やかになる Piatto , Pesce , Carne が続く。パスタ料理とメインの魚や肉を使った一品料理。
お腹がいっぱいでも不思議とデザートフォークを手にさせる後味爽やかな Dolce 。デザート。
シノンが目を輝かせながら食べる姿から目を離せず、食べるのがいつもより遅くなりがちだった。
口にした料理がお気に召したのか
「ジュリ、この表に載っているカ・ネ・ロ・ニって、なんですか?」
「パスタの一種のカネロニがあって、太めのパスタで茹でた後に具材を詰める形が一般的な食べ方になるの。それで、前菜のサーモンのカネロニ風なんだけれど、サーモンをそのカネロニっていうパスタに見立てて、野菜をサーモンで巻いた円筒形のがあったでしょう?」
「ああ、あれが」
「カネロニ風は肉や魚で何かの具材を巻いたもの、他の料理に例えると肉巻き野菜のような感じね」
「ありがとうジュリ、イタリアにもそういう料理があることを初めて知りました」
そんな調子で書かれている食材や料理名を眺めながら、興味を持った料理や私にも味の感想を聞かせてほしいとお願いされた。
シノンにとって楽しい時間になってっくれていたら私の今日のデートプランはおおむね成功と言ってもいい。
このディナーで今日のデートが終わってしまうと思うとさみしいけれど、こういう風にまた今度も楽しくデートができたらいいな。
Dolce を2口ほど食べ、少し休憩。
おいしいけれど、お腹はいっぱいで一気に食べるのは難しい。
シノンもそれは同じようで、ゆっくりと味わいながら食べている様子。
「ねぇシノン。聞いてもいい?」
「はい、どうぞ。何を聞きたいのですか? どんな質問でも答えますよ?」
「今日のデートって、100点満点でいったら……何点くらい?」
私にとってはシノンと一緒にいられるのなら100点なんて一番低い点数だけれど、大事なのはシノンがどう思ってくれたのかを知っておくこと。
あなたにとっての今日がどんな日だったのかを教えてほしい。そう思ってシノンの瞳を見つめる。
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