〔Side:Juli〕22. 仮初の
「ジュリ……するならするって……言ってくれないと、困ります……」
赤くなった顔で荒い呼吸のまま小さく呟くシノンの声は、たぶん私にしか聞こえていない。
「びっくりして……心臓が……」
そう言って右手を左胸に置いて瞳を閉じるシノン。
はぅ……!
苦しそうなのにどこか苦しいとは別の
「言ったとしても、していいと言うことでは無いですからね? わかっていますか、ジュリ?」
「ごめん、気をつけたい……けどムリかも……」
「あの……お嬢様方、もしかして……お付き合いとか、されております、よね?」
いやー、そうですよねー……
普通の距離感ではないのは重々……
ただ、付き合っていると明言できる関係でもない……
今のはただ単に、
でもシノンが付き合ってもいないのに、させる軽い人に見られるのも私としては許せないというか……
「シノンっちょっとだけ耳を貸してね?」
「……うん?」
「このお店の中でだけ、カップルってことにできます? 私、シノンが誰とでもああいうことをする人なんて思われたくないのよね……」
「…………うん、わかりました。ここでだけ、今だけの限定でってことですよね? それなら、はい、よろしくお願いします」
「こ、こちらこそ、よろしくお願いします」
やったー……!!
こんなお願いダメかとも思ったけれど、シノンは殊の外あっさりとOKしてくれた。
あくまで仮初の設定のお話で、ここを出ればまたただのルームメイトに戻ることにはなるけれど、シノンが冗談や仮であったとしても私とそういう役を演じることは大丈夫ということがわかったのが大きい。
それだけで本当に今日デートに誘ってよかったと思える。
また明日から頑張れる。
「ええと、申し訳ございません。わた、僕、何か勘違いを?」
「いいえ、その通りですよ
「あ、はい、かしこまりました。では、執事の黒ネクタイゲームは僕抜きでしていただいた方がよろしいですよね?」
「
盛り合わせの中からポッキーを1本引き出して、口に咥えた。
そして、先程と同じようにシノンの頬を抑え、顔を寄せる。
「続き、って? ジュ、いえ
先程の半分では物足りなかったところを、
顔を赤らめながらもシノンはポッキーを口の中に少しずつおさめていく。
この距離でお互いに目を開けたままでいたことはあまりなく、いやおうなく心拍数が上がる。
チョコの部分が溶け始めている。
パキッ!
ポッキーの折れる音。
……ん……
「……んはっ……いひなりゅんん……これもっちがっ、んんっ……!??」
シノンが触れる手前で食べ進めるのを止めてしまい、私は待ちきれずにポッキーを折った。
シノンはまたも私からの不意打ちを受けることになった。
先程は人前だしと少し遠慮しがちに唇が触れるだけだったけれど、今度は対外的な免罪符を得たのですから、好きにさせてもらいましょう。
シノンの唇に付いたチョコを舌で舐めとる……
綺麗になった唇を食む……
チョコはないのに……あつくて……甘くて……
すごく美味しい……
ポッキーゲーム、今までしたこともなく、する気もなかったのだけれど……
病みつきになりそう……
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