救世主

青いバケモノ

僕は君の救世主

 …ここはどこ?僕は誰?

 意識が回復したかと思った瞬間、目の前には大きな大きな「ナニカ」がいる。ただ分かることは…その「ナニカ」は確実に「敵」だという事だ。


「ひっ…だ、誰…?」


 後ろから声がしたので振り返るとそこには、倒れ込んで、今にも泣き出しそうな顔の少女がいた。


「僕は…」


 僕は、何者だ?…少し考えると、頭の中に一つの単語が思い浮かんだ。それが僕と何の関係があるのかは分からないが、名乗るならこの言葉が一番近しい。それだけは分かった。


「僕は君の―――救世主だ。」


 そう名乗った瞬間。僕の手に剣が出現し、そのまま体が勝手に動いたと思うほど滑らかに、スムーズに目の前の「敵」を倒した。

 僕にも何が起こってるか分からないが、僕が僕の体を動かしていたという事実はなくならない。操られていたとか、自動で動いたわけでもなく、僕が自分で動かした。だが、それでも自分が何をしたのか分からない。


「あ、ありがとうございます!」

「…」


 こういう時どう返せばいいのか分からない。まるで戦闘以外はプログラムされていないロボットのようだ。


「まさか本当に来るなんて…」

「…どういうことだ?」

「あ、えと…――」


 この少女曰く、今の「敵」に襲われて、逃げていたら転んでしまって、もうダメだと思い、「誰か助けて!!!」と強く頭で思ったらしい。そしたら、天から僕が舞い降りてきた、と。

 何を言ってるのかはさっぱりだが、僕も僕で自身の記憶が一切ないので、なんとも言えない。


「あ、あの、本当にありがとうございます!私はロークディア王国第一王女、リボンと申します。」


 第一王女、という事は偉い人?凄い人?…そんな人が、なんで周りに何もない、こんな所に?……王女に対する疑問も、自分に対する疑問も尽きない。が、一つだけ、これだけは絶対に言わなければならないことがある。


「……まだ救われてないな?」

「え?」


 僕自身、なんでこんなことを言ったのか分からないが、絶対に言わなければならない。

そんな気がした。


「今、魔物から救ってくださいましたが…」

「…」


 王女だし、きっと民の事とか、国の事とかで切羽詰まっているのだろう。


「何でもいい。困ってることを言ってみろ。」

「…私の国で内乱が起こり、その主格が魔族だったとのことで、私が他国に助けを求めに秘密裏に動いていたら。馬車が襲撃され、今に至る、という感じです。困っていることとなると、とても規模が大きすぎて…」


 とりあえず今の悩みを簡潔にまとめると、「他国に行くための手段が無くなった」でいいだろう。


「となれば、僕に捕まりなさい。」

「はい。」


 移動するためにはどうするのか、それすらも分かっていないが…ただ場所を思い、念じるだけでそこに行ける。

そんな気がする。


「場所は?」

「ハイヒール王国です」

「…」


 ハイヒール王国がどのような所か、なんて全く知らないが、「ハイヒール王国」この単語を頭に浮かべ、念じる。

 すると、周りが光で包まれ、高速で空中を移動し始めた。少女はものすごく驚いたような顔をしているが、ギリギリ声に出さずに済んでいる。


「ここがハイヒール王国か?」

「はい。色々と、本当にありがとうございます」

「気にするな」


 それが、僕の使命だから。












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