エンドロールは、ハッピーエンド!(だといいな)
西奈 りゆ
自分、こんな読み方してたんだ!?(ある推し作家編)
第一回目なのに、なんか真面目になってきそうでいやだなぁ・・・・・・。なんかこう、つかみからして軽く楽しめる話を、と思っていたんですが、まったく思いつきませんでした。
そういえば先日、とあるお客さんに言われて気が付いたのですが、私が登録しているyoutubeチャンネル、学術系とか、川とか焚火とか、炭酸シャンプーとか、靴磨きの音で作られた睡眠用ASMRとか、生粋の文系で、中学校のときなんて、塾に行っても、入試が終わる最後まで、50点中25点を越えなかったのに、数学の難問解説チャンネルとか、そういうたぐいのものばかりで。
なんていうか、笑いどころが、ないのです(あ、でも一時期話題になった、サイモン・シンの書いた数学ドキュメント、「フェルマーの最終定理」は、評判通りに面白かったです。数学のこと分からなくても、一気読みしました)。
強いて言えば、昔はやたら海外の心霊系動画を見ていたんですよ。ですがそれ系の動画を見ていたある日のこと。いったんトイレ休憩をして扉を開けたら、からの洗濯かごの中に、男性の頭。短髪、お目目ぱっちり。しかもその目が、合っちゃった。
一瞬のことだったので、疲れていただけだと思いますが、それ以来、そのたぐいの動画は、一切見ていません。あとで聞いた話ですが、一般の方が撮られた(映った)海外ものは、危ないものが多いそうです・・・・・・。
ちなみにそのお客さんからは、「もっと楽しいもの、見ましょうよ」と言われましたが、これが楽しいとしか、言いようがなく。
でも昔、「気楽に遊んでください」と言われ、「気楽に遊」ぶ方法が分からず、「遊び」についての文化人類学の本を読み始めたあたりは、我がことながら、反省したほうがいいと思うのですよね。それがまだ若くて、冗談じゃなく真剣だったから、なおさら。
まあ、初回ですから。次回に期待することにしましょう。
ところで、価値観というのは、意外なところで大転換したりすること、ありませんか? 今まで見ていた光景が、全然違った意味合い、色合いにさっと変わる。
世界中のカーテンが開くような、「あ!」っという体験。
今回は、そんなお話を書き置いておこうと思います。
というのも、とあるきっかけがありまして。
まず、話の前置きとして。
かつて十九歳で「蛇にピアス」でデビューし、直近では「ミーツ・ザ・ワールド」が映画化された金原ひとみさんが、最近自分の中で、激烈な勢いで、推し作家さんに成り上がって?いっているのです(西奈の他の主な推し作家さんは、プロフ欄やSNSなどをご参照ください)。
最新作、「踊り場に立ち尽くす君と日比谷で陽に焼かれる君」にいたっては、私からすると超高額の本なのですが、買わずにはいられなかったです。もう、「食費!」とか思いながらも、それでもその代金を払って手にしただけで、泣きそうでした(それは重症)。
と、ここまでが前置きです。
じつは私、つい最近まで、金原さんの作品が大の苦手、というか、二十代の頃は明確に「嫌い」だと言っていました。もちろん、何冊か読んだうえで。
金原さんの文章、そして作品は、端正でいてシャープ、そしてそうであればあるほど、あまりにえげつない。容赦のかけらもない。これは揶揄とか虚飾とかではなく、真剣にそう思っているのですが、金原さんの執筆部屋が血にまみれていても、引き出しやごみ箱に何が入っていても、私は一切驚かないと思います。
ある詩人は、引き出しに腐ったリンゴを常に入れていないと作品が書けなかったと言われていますが、それすらも超越した何かを感じます。
今から思えば、ということはつまり、私は金原さんの作品に対して、ようはただただ圧倒されていたんだと思いますが、翻って、共鳴しすぎて倒れないようにという、防衛本能でしょうか。私はそれらに対する、もはや動物的にともいえそうな反応、そして感覚を、当時「嫌い」の箱に分類したのでした。
そんな私が、何故か買っては売り、買っては売りを繰り返していた、とある金原さん作品。最近では、推し作品として、人にも勧めました。
それが、「AMEBIC」(集英社文庫)。現在は私の手を離れていますが、もうすぐ書店に到着します。何度目?
「AMEBIC」は、字面はアメーバにも似ていますが、特定の意味を持ちません。主人公が堕落して意識を手放した際に残っている、主人公が書いたものと思われる「
ストーリーの内容については、うまく説明できる自信がないので、単行本、文庫から、それぞれあらすじを引用します。
・『さあ私の太陽神よ舞い上がれ、安宿に泊まる私を照らせ。パソコンの画面に残された、支離滅裂な「錯文」。これを書いたのは私なのか、それとも私ではない私なのか。』(単行本 2005年)
・『謎の言葉「アミービック」とは何か?
作家である「私」のパソコンに残された意味不明の文章=錯文。錯乱した状態の「私」が書き残しているのだが、しかしなんのために? 「私」が抱える孤独と分裂の行き着く果てとは……?』(文庫版 2008年)
謎ですね。私も、そう思います。というか、大学生の時、時期をあけて二、三回読んだのですが、それでも意味が分かりませんでした。
前述したように、当時私は金原さん作品に対して良い感情を持っていなかったのですが、そのひとつの理由として、作品が「露悪的」に見えたということがあるように思います。もっと意地悪な言い方をすれば、「露悪趣味」というか。
作家として作品を、商業的に売り込む方法として、作品に悪い部分を投げ込む。前述の「えげつなさ」は、当時独りよがりな「美」の観念を崇拝していただけの、その実、無駄に潔癖なだけだった私の目には(このルッキズム的なお話は、また、いずれ)、当時「蛇にピアス」を評していた「若者のリアル」などではなく、単なるわざとらしさとしか、映らなかったのです。
「錯文」もまた、しかり。「AMEBIC」の主人公の「私」は、言ってしまえば、(無意識にでも)エキセントリックにふるまう自分を、じつは思う以上に許容しているんじゃないの、とすら、思っていました(明確な拒食症の描写が、淡々と、けれど繰り返し登場するのにも関わらず)。
ただ、この「AMEBIC」。最近ふと、思ったのです。
“これ全部、ただの本当だったとしたら?”
文法的におかしな言葉になっているのは、思い浮かんだ言葉をそのままに描いたためなので、ご容赦ください。つまりそれは、金原さんの世界で、という意味で、なので、極端な表現をすると、金原さんの体験している世界そのものが「錯文」であり、「AMEBIC」なのだという、断定的直観です。そうだとすると、世界はまったく違う様相を呈します(ちなみに、「それは私小説では?」という声が自分からも聞こえますが、文学上の定義はともかく、自分の中では違うものと位置付けられています)。
これは、何て苦しいリアルなのだろう。「露悪趣味」だなんて、とんでもない。これは、「書かなくては生きていけなかった」、そんな文章なのではないか。だってこれは、まるで生きたまま、壊れていくみたいじゃないか。思い出さなくても、分かるだろう。自分だって、そうだったじゃないか(カクヨム以前のお話です)。
そういう意味では、「生きてるだけで、愛。」(本谷有希子・著)の、個人的には今まで読んできた小説の中でも屈指の、とある名セリフを思い出します。このお話は、またいずれということにします。更新があればのお話ですが。
ところで先ほど気が付いたのですが、約二年半前、カクヨムでスタートを切る際に、私は自作に対して、(今も続いている)あるテーマを掲げていました。
「あなただったかもしれない物語」
「AMEBIC」は、もう十数年も前から、私に「私が書くこと」の核を、教えてくれていたのかもしれません。だからこそ私はそれを恐れ、それでも忘れることができなかったのでしょう。だって書くことは、今でもとても、怖いことだから。
皆さんの推し本を、もう一度手に取ってみてください。もしくは、「嫌いな」本を、もう一度手にしてみてください。鏡が反対の自分を映すように、そこには皆さんだけの、真実が見えてくるかもしれません。
今、「AMEBIC」は再び、我が家を目指して、どこかの配送業者さんのルート上に乗っているところです。
再会した
あらためて、金原ひとみさん作品。手持ちの未読本では「アンソーシャルディスタンス」「デクリネゾン」「マザーズ」「持たざる者」、そして読んで手放してから、十数年ぶりにリターンの、「蛇にピアス」。皆さん、あらすじだけでも読んでみてください。震えますよ。いろんな意味で。
これらの作品とは、はたしてどんな出会いになるのでしょう。私の見る景色は、今私が思う以上に、もっとずっと、未知のものなのかもしれません。
あれ、面白さはどこにいったのだろう。私もっと、エンターテインメント的なものを想像していたんだけど・・・・・・。
何で毎回、こんな理屈っぽい展開になってしまうのか。小説では、こんなことは(たぶん)ないのに! このエッセイの行先には、早くも困難がチラチラ、ちらついております。
(だってこのほうが、楽しいから・・・・・・)
え、何か聞こえたって? き、きっと風の音ですよ!!
それでは今回は、この辺で。続く・・・・・・のか?💦
タイトル詐欺はともかく、せめてタグの「創作論」は、消しておいたほうがいいのかも・・・・・・💦 今回、ギリギリセーフな気がするんですが!!(必死)
一話完結になったら、すみません💦 チャレンジ休止か、失敗です💦
さあ、もうすぐお出かけの時間です。用事が済んだら、安くて美味しい某店のラーメンが、私を待っています。あ、近くに本屋さんもある!!
でも帰ってきて、反応ゼロだったらと思うと、あの「顔」を見た時と同じくらいホラーです・・・・・・。それも修行のうち! そう思ってくれ、私よ・・・・・・。
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