ひまわり〜君がいた夏
@rocky4250
第1話
「ひまわり~君がいた夏」
第一話
「ひまわり~街の片隅で」
その日は太陽が散散と降り注ぎ、この北の大地、北海道、札幌も随分と暖かな天気だった。
皆、晴れてる日が好きだと言う人は沢山いると思うが、当時の僕は、どちらかと言うと晴天が苦手だった。
よどみのない日光に自分の弱さが全て、さらされる様で。。
いつもの病院に通い、薬をもらって、家まで歩いていた。
すると、17歳の僕と同い年位だろうか、制服を着た学生達が賑やかに話をしながら歩いている。
手にはアイスや冷たいシェイクを持ち、本当に楽しそうだ。正に青春ってやつなんだろう。
部活の話や恋愛話が彼等からは聞こえてくる。
そんな光景を羨む様に見ていると、急に自分への劣等感が押し寄せ、呼吸が苦しくなり、持病の過呼吸が出てきた。
僕は持っていた袋に急いで顔を突っ込む様に、荒く呼吸を繰り返していた。
そう、僕は高校を中退してから、いつも、こんな感じなのだ。
精神科にも二月に一回通っている。
僕はすぐに医師から出された頓服薬を飲もうとした。
袋には何種類かの薬が入っていて、中々取り出せない。
人混みがザワザワと自分の方を見ている気がする。
過呼吸がますますひどくなり、僕は薬の袋を地面に落としてしまった。
どれだけの時間、地べたで薬を拾い集めていただろう。
僕の肩をポンっと叩く感触があった。
ビクッと振り返ると、ショートカットの小柄な女性が立っていた。年は僕より少し上、大学生位だろうか。
彼女はしゃがみながら、一緒に薬を拾い集めてくれた。
「あ、大丈夫ですので、、ハァハァ、、」
僕は呼吸を整えて話した。
「大丈夫じゃないやん、自分、そんなに苦しそうにして。無理はいかんよ。」
関西弁とかだろうか、聞きなれない口調で
そう言い、その女性は根気よく頓服薬を見つけてくれた。
「はい、これやろ?直ぐに飲んで!」
僕はお礼を言いながら、持っていたお水で薬を飲んでいる最中、まだ名前すら知らない彼女に背中をさすってもらっていた。
僕が大分、落ち着いたのを見て、彼女はゆっくりと温かな、快活な声で話した。
「よし、もう大丈夫やね!生きてると色んな事あるよね、けど、めげずに頑張ってね!」
続けて彼女は話した。
「君、時間あるんやったら、ちょっと見せたい物あるから、少し一緒に歩かへん?」
「え?あ、はぁ、、」
普段なら名も知らない人に簡単について行ったりしないが、何故だか、その女性に導かれ、僕は狸小路(札幌市の繁華街)の路地裏まで歩いた。
(どこに向かってるんだろう、、)
そう考えてると、彼女は足を止め、「ほら、見て!綺麗やろー!」
と指を指して言った。
「わぁ!」
僕は思わず声を上げた。
目の前には太陽の光をウンと浴び咲いている、170cmの僕の背丈程ある綺麗な綺麗な大きな、ひまわりが咲いていた。
そして、彼女は、しゃがみながら、ひまわりを見上げ話し出した。
「うちも、しんどいなって時、この子の事見に来るんよ。どこから種飛んで来たのか、分からへんけど、見つめていると、元気出るんよ、本当に綺麗やろ?」
「はい。」
僕は、美しく力強い、そのひまわりをジーッと見入りながら、返事をした。
そして、彼女は話し出した。
「私の名はアヤ、また元気が欲しくなったら、この子を見に来ると良いよ! 私もたまに、見に来る時あるから! じゃあ、うちはそろそろ用事あるから、またね少年、あ、ごめんな、うちだけ名乗って、君、名前は?」
「勇気です。」
「ええ名前やん!また会おうね!」
「あ、はい。」
ひまわりも綺麗だったが、僕は微笑む彼女の綺麗な大きな瞳に見入っていた。
そして、彼女はニコリと笑い、僕に手を振りながら、狸小路の方に歩いて行った。
その時から僕の心に何か高鳴る胸の鼓動を感じた。
その日の帰り道、晴天が苦手なはずの僕だが、どこかウキウキし、飛び交う蝶々や、涼しく頬つたう風、見慣れた芝生でさえも、美しく感じた。
そして家に着くと、母が料理の準備をしながら、今日は体調はどうだったか、など気遣い聞いてくれた。
僕は街で出会った彼女の事は話さず、過呼吸があったけれど、大丈夫だと伝えた。
僕の本当に良き理解者の母には、いつも感謝している。
やがて、夜になり、母が僕の大好きなカツ丼を作ってくれた。普段、あまり食欲のない僕だが、その日は不思議とお腹が空き、ペロリと完食した。
そんな様子を見ていた母が、「あら、勇気、良く食べれたね今日!私も嬉しいわ」と温かく微笑んでくれた。
母にご飯、ありがとうと言い、僕はシャワーを浴び、趣味の漫画を数ページ書き、布団に入った。
眠りに就く前、僕は、あのひまわりと、そして、、アヤさんの事を何度も思い出していた。彼女の綺麗な瞳が本当に印象的だった。
(本当に綺麗だったな、ひまわり。)
(また会えるかな、、アヤさん。。)
この時の僕は、まだその気持ちに気付いていなかった。
これが彼女との初めての出会い、そして今でも色褪せない、生きてきた人生で一番、心に残る太陽の様に光り輝く、あの夏の始まりだった。
キュン
–
尊い
–
ぐっときた
–
泣ける
–
好きです
–
推しです
–
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