第6話HER③

 それから、あてもなく三回ぐらい電車を乗り換えてやっと落ち着いた。地下鉄の改札から地上に出るとすっかり暗くなっていた。ブーとマナーモードにしていたスマホの通知が鳴った。まさか、あの女からか! と思ったが違った。

「雷電広? だれだこれ?」メッセージを見て一瞬で誰だか分かった。

“本田氏、今どこでござるか?”

“連絡まってるでござる(´;ω;`)”

 ……オタクだった。


 何か思い出すかもと思ってオタクとの過去のメッセージのやり取りを確認した。一番、最初のメッセージまでさかのぼった。


                    “今日はマジでありがとう!”


“いえいえ、とんでもないでござる^_^”


              “あの女に危うく殺されるところだったわ!”


“赤の他人でもハサミで刺されるのは見逃せないでござる(╬▔皿▔)╯”


                   “マジ命の恩人!なんかお礼させて!”


“じゃあ、推しの彗星あかりのライブに一緒に来てほしいですぞ!”


                “彗星あかり知らないけどオッケー!行こうぜ!“


 ……あの女にもうすでに一回殺されかけてた。しかも、オタクと出会ったきっかけはあの女から助けてもらったこと? この半年間にどんな事があったんだよ。

 その後もオタクとのメッセージを確認したが一向に思い出せなかった。あの女のメッセージが無いか確認したがすでに無くなっていた。一応、ブロックリストを確認したら“きよか”と女性の後ろ姿の見覚えのないアイコンがあった。どことなくあの女に似ているきがする……この“きよか”はブロックしたままにしておこう。

 それと、なぜかブロックリストに親友の智和が入っていた。ブロックはすぐに解除した。メッセージのやり取りは全て消去されていて確認する事も出来ない。信じられなかった。絶対に何かの間違えだ。きよかと間違えてブロックしたんだろ多分……。あいつには出会ったときから大きな恩がある。あの事は忘れもしない小学生の頃だった。

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