第23話

 いくらなんでも、決断するには早すぎるよ!

 それを聞いてアルタイルさんは血相を変えた。

「待ってくれ。いきなりそんな話……!」

「いきなりじゃないわ。あなただって薄々感じてたんじゃない? もう無理だって」

「それは……」

 アルタイルさんはうつむいて言葉をなくす。

 彼にも心当たりがあったんだろう。

 でも、こんなのってないよ!

 そりゃあ、ケンカすること、誰だってあるよ。人によって抱えてる事情や思いは違うもの。ぶつかり合っちゃうこと、誰だってある。

 だけど、だからこそ、ケンカを通して仲良くなれるんじゃないの⁉

 二人の仲をこんなふうに終わらせちゃ、絶対ダメ!

「二人とも、待ってください! ちゃんと気持ちを伝えなきゃ、ダメです!」

 私は決意を込めて二人の前に立った。

 二人が顔を上げて不思議そうに私を見る。

「何言ってるの? 私はもう終わりにしたいって言ってるのよ」

「ベガさん、それは違います。ほんとはずっと好きでしょう? 今も昔もこれからも、アルタイルさんのことが」

 ベガさんはハッとしたように目を開く。

 続けて私は隣に目を移した。

「アルタイルさんだってそうです。ベガさんより仕事が大事なんてこと、絶対にない。きっと、たくさん悩んで出した結論です」

「……そりゃあ、そうだよ」

 アルタイルさんが低い声でうなる。

「ベガが一番大事だ。その上なんてない。本当に仕方ないんだ」

「わ、私だって! あなたが大事よ。だから毎年七月七日を待っているんだわ」

 やっぱり、二人の気持ちは同じみたいだ。

 二人とも、お互いのことを考えてる。

 だから、こんなにも大きなケンカになったんだろう。

 といっても、七夕に会えないことの解決にはなってないよなあ~。

 ここで、昴琉がおずおずと手を上げた。

「なあ、その仕事ってやつ? ベガがついていけばいいんじゃねえの? 別に会うのは天の川じゃなくてもいいだろ?」

 ポラリーがポンッと手を打つ。

「昴琉、名案ですね! それなら仕事をしながら、ベガさんと会うこともできます!」

 ベガさんもわあっと声を上げた。

「それはいい考えね! 私、アルの仕事を手伝う。そうしたら、アルとずっと一緒にいれるでしょ? カササギたちには私が話しておくわ」

「いいのか?」

 アル、と呼ばれた彼は嬉しそうに顔を輝かせる。

 二人ともお互いの気持ちを吐き出せたことで、すっきりしたみたい。

 なんだ、二人とも、すっごく仲良しだ。

 二人に足りてなかったのは自分の気持ちを話すこと、それだけだったんだ。

 なにせ、お揃いの着物が二人の気持ちの証拠だもんね。

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