孤児たち

「ほら、一人一本だぞ~」

「みんな仲良く食べてくださいね!」

「わーい!」

「うまーい!」

「ありがとー!片目のにーちゃんと赤毛のねーちゃん!」



 育ち盛りって感じだなぁ。

 子供たちの服装は、着古してヨレてはいるが、きちんと洗濯はされてるみたいだ。

 イメージ的には、教会の孤児院の子供たちって感じ、教会も孤児院も行ったことないが。


 みんな、ガツガツと肉に食いついている、食える時に食う精神が生きてるな。

 俺もこの世界にきて最初の方は、そんな感じだったからな、多少は分かる。

 こいつらほどの苦労はしてないと思うけど。


 すると、盗賊風の兄ちゃんが声を掛けてきた。



「見りゃ分かると思うけどな、こいつらみんな孤児だ」

「はぁ、じゃあここは孤児院?」

「ハハハ!まあ似たようなもんだ!」



 話を聞くと、道端で死にかけてた子、迷宮に入って帰って来なかった冒険者の子供、捨て子などを……まあ、ドレッドヘアーのゼットさんが拾って来て保護してたら、こうなったらしい。



「ゼットのアニキも孤児だったからな、俺らも全員似たようなもんだが」

「お人好しなんだよゼットは、顔に似合わずな」

「……チッ、余計な事喋ってんじゃねえぞ」

「ガハハ!事実じゃねえか馬鹿野郎!」



 うーん、人は見かけによらないなぁ。


 しかし……さっきから気になってる事があるんだが。

 もう一人居るんだよな、階段の影に。



「あのー、奥に誰か居るんすか?」

「なに……お前、気付いてやがったのか?」

「チラチラ見てやがるから、まさかとは思ってたけどよ」

「おいおい……ミレアスの隠形を見破るか」

「ただのガキじゃねえってか?」



 ……あれ?マズったか?


 そう思っていたら、フードを被り弓を持った女性が一人現れた。

 ……え?今何処から出てきた?

 まるで最初からソコに居たみたいに、突然現れたんだが。

 これ、マッピングなかったら絶対分かんないな?


 その女性が、俺に鋭い視線を向けてきた。



「……あなた、何者?」



 そう言うと、彼女は背負っていた弓に矢をつがえた。


 ……え?なんで??



「ケン君に何する気ですか!!」

「は!?ま、待て待てリエラ落ち着け下がれ!!」

「いいから答えて、あなた何者?」

「おいミレアス!客人に何してんだ!」

「この片目の少年が来てから、精霊が騒がしい……こんなの初めて、答えなさい」

「いや、ただの探索者ッスけどぉ?」

「私の隠れ身を、普通の子供が見破れる筈無い。あなたまさか、紅牙連?」

「え、こうがれん?いや知らないけど……」

「やめろミレアス!ガキどもも怖がって……ん?あいつら何してんだ?」



 そういえば、子どもたち何処行った……と思ったら奥の方で集まって騒いでる。



「ちょうちょー!」

「ちいさーい!」

「かわいいー!」

「ちょうちょじゃないし!アゲハよアゲハ!」

「すげーな飛んでる!」

「ふふん!あーしくらいになるとね、もうアガりすぎて飛べるってわけ!」

「あげあげー!」

「そうよアゲアゲよ!何よあんた子供なのに分かってるじゃない!」

「あたしもとびたい!」



 ……あいつ、子供に混ざって遊んでやがる。



「お、おいアゲハ!!勝手に動くな戻ってこい!!」

「はあ!?フェアリーですって!?なぜこんな場所に……?」

「あ!そこのあんたエルフじゃん!イケてるわね!」

「いえ、私はハーフエルフよ……本物のフェアリーね」

「ハーフ?まあ、あーしから見たら変わんないし、同じよ同じ!」

「……はぁ。ごめんなさい少年、あなたの所為じゃなかった」



 弓を下げ、女の人がフードを外して頭を下げた。

 おお、たしかに短めだがエルフ耳だ、あと銀髪。



「いえいえ。むしろ連れがご迷惑をおかけしてすいません。

 ほら!アゲハこっち来いってば!!」

「仕方ないわねー、みんな後でねー!」

「えー!」

「アゲハちゃーん!」



 子供たちにゴネられたが、アゲハはいつもの定位置、俺の右肩に戻ってきた。



「何か疲れたわね……とりあえず奥に入って」

「いいのか?ミレアス」

「だって、フェアリーがあんなに懐いてるのよ?大丈夫よ」

「そうか、ならいいけどな」



 何が大丈夫なんだろ……まあ深く考えんとこ、俺も疲れたし。



「疑ってごめんなさい、こんなに精霊が騒がしいのは初めてだったから」

「いやまあ、アゲハのせいなんでいいっすよ」



 大体、精霊とか言われても俺にはわかんないッピ。



「お姉さん、そういう精霊とか見えるんすね」

「見えると言うより感じてるのよ、一応エルフの血を引いてるし」

「へー、俺人族しか居ない田舎出身で、エルフとか常識とか、あんまり知らないんですよ」

「そう、じゃあ仕方ないわね」



 やっぱりエルフは精霊と親和性が良いとか、そういう事かな?

 そして、やっぱり精霊魔法が使えるらしい、アゲハも使ってるアレだ。


 で、アゲハが来てから、この辺の精霊がすごい活発になってるとか。



「これは、喜んでるのかしらね?」

「メッチャ☆アゲよ!今夜はオールね!」

「……まって、まさか夜までこんな感じ?」

「あたりまえっしょ!」

「……今日、寝れるのかしら」

「いやー、なんかすいません」



 本当にすまない、頑張って寝てほしい。

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