第2話『少年少女』
「…アル、これからどうするの…?」
私とアルはスラム街から街中に出る路地裏を駆けていた。
旅に出るのはいいのだがスラム街住みの私はともかく、アルは昨日出会った時から手ぶらなのでこのままだとほんの数日で餓死してしまうだろう。
なんて心配していると、
「宿に荷物一式置いてあるから大丈夫だ」
なんて答えた。
…いや宿とってんのかい!昨日のあれは嘘だったんですか!?
アル、この人はなに考えてるんだろう…。
なんて心の中で思っていると路地裏を抜けて街に出た。
「あれ?なんか人いなくね…?」
アルが怪訝としたので私が答える。
「あー、今日は確か『神託の日』だったかな…」
『神託の日』、月に1度王国の全王国民が街の中央にある大教会に集まり、神・テミスからの予言を全王国民が授かる日。
もちろん宿は神託が終わる今日の昼までお休みである、が…。
「窓割って取ってきた」
えぇぇ…この人怖いよぉ…。
「ついでに今のうちに馬車も盗もうぜ!」
アル、それは犯罪…いや不法侵入してる時点でもう遅いか。
それはそれとして…。
「アル、『神託の日』に罪を犯した人は神の怒りに触れて殺されるんだよ…。だからやめよ…?」
流石に死にたくはないだろうし忠告すればやめてくれるよね…?
と私が思ったのもつかの間、アルの口から出た言葉に私は唖然とした。
「…俺は1度、神に殺されている」
それは、信じられるものではないけれど、彼の目は真剣で、そして、その言葉が嘘ではなく真であるかのように思えた。
『神に殺された』それが意味することはただ1つ、『反逆者』であること。
「…」
「…この話は忘れてくれ、な?」
なかったことに、忘れてはいけないような、そんな気がした。
だけど…それは「私」が「私」じゃなくなる気がして…。
「…アル、はやくこの街出よ…?」
今はただ、この街を出ることだけを考えよう。
それがきっといい、この判断はきっと、正しいはずだ。
そうして街中の馬車を盗み、街を出た。
星歴10017年7月8日午前10時7分、私とアルの長い長い旅が始まった。
◈◈◈◈◈
「失敗したのか?お前ら」
タロットカードの耳飾りを右耳に身につけているウルフカットの細身な男が大柄の男の顔を踏みつけながらそう問いかける。
「は、はい!竜の角が生えている生意気そうなガキに邪魔されまして…」
「お前には聞いてねぇよ、タル」
山賊の3人組の一人、タルと呼ばれたガリガリの男はすみませんでしたと謝る。
「…角…か、竜人…?」
「竜人とはなんでしょうかボス?」
ボスと呼ばれたウルフカットの男が問いかけにこう答える。
「『竜人』は東の大陸…『魔法国家』にかつて存在したドラゴンと人間のハーフだ。今はもう絶滅したと聞くが…」
「魔法の国…、俺らが所属する西の大陸『科学国家』とは犬猿の仲と言われている…」
「あぁ、というかお前よく知ってるな。山賊のくせに」
「まぁ学校には行ってたので…」
「…まぁいい、タルお前は今日から俺の補佐になれ。今の補佐は戦闘能力はあるのに学がなくて困ってた所なんだ」
ウルフカットの男はそういうとコートのポッケから煙草を取り出し火を点ける。
「とりまその竜人とあの女…『東の姫君』を捕らえにいくぞ、何故スラム街にいたのかも気になるしな」
「へ、へいボス」
「補佐になった以上もうボスと呼ばなくてじゃなくていいぞ、その代わり『黒炎』と呼べ」
「はい、黒炎様」
「様付けか…それもまた一興」
と薄暗い部屋を出ようとすると大柄の男が頭から血を流しながら立ち、
「ボス!お、俺も連れて行ってくれ!次は必」
と言うと黒炎が銃をコートから取り出し、眉間を撃ち抜いた。
すると大柄の男は死んだのか頭から倒れた。
「お前はもういいよ、山賊の頭領してた割には弱すぎるし」
「…」
「どうしたタル、いくぞ。外に車を停めてある」
「へ、へい。」
そして黒炎とタルは外に出て外に停まってた車に乗り
「白炎、今から首都に向かうから運転頼む」
と運転席に乗っていた黒炎と瓜二つの顔をした白髪の男に言った。
「はい…お兄様、首都『カザエラム』ですね」
そして彼らは首都『カザエラム』へと向かう。
アルとルナ、彼らを追って——。
◈◈◈◈◈
同時刻、アルと私は街を出てはや数時間経ち空が暁に染まり始めた頃、小さな村に着いた。
「今日はここで休もう」
と言いアルは馬車の中で布団をひき始めたので私は数時間前から思っていたことを口に出す。
「…もしかしてお金ない…?」
「ナンノコトカナ」
だから街出る前に店からも食糧盗んだのかこの人!
「嘘でしょ…、どうするの?」
「…まぁひと月はもつからオールオーケー?的な」
どっかで金稼ぐ必要あるな、これ。
まぁそれはそれとして眠くなってきた…、布団は一つしかないけど2人入れるし、大丈夫だよね…。
「お休み…アル」
とアルがひいた布団に入り目を瞑る。
「…ああ、お休み」
私が眠りにつく直前にアルの悲しそうな声がして、私のその日の記憶はそこで途切れた。
翌日、アルはパンを食べながら私に首都『カザエラム』に向かうと言ってきたがよく分かってないのでうん、とだけ返事した。
アルはなんか複雑な顔をしていたがパンを食べ終えると馬車を走らせた。
目指すは首都『カザエラム』。
科学国家の中枢国へ——。
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