第40話 王家の隠し事と魔王復活を阻止せよ -4

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9. 報酬はトントン

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魔王復活の儀式を阻止し、世界を救ったヒロインたちは、意気揚々とギルドへと戻ってきた。フィーネは、今回の任務で莫大な利益を上げることを期待していたが、その期待は無残にも打ち砕かれる。


「エルザさん!見てください!魔王復活の儀式を阻止し、世界を救いました!」

「これで莫大な利益が……ぐふふ」


フィーネは、興奮気味に収支報告書をエルザに提出する。エルザは、それを一瞥し、にこやかに微笑んだ。


「ふふふ……ええ、そうでしょうね。わたくしの目論見通りですわ」

「えっ、目論見通り!?」

「ええ。ですが、今回の任務は、儀式場の損害が大きかったようですわね」

「損害……?」


フィーネの顔が青ざめる。エルザは、淡々と損害額を読み上げていく。


「神殿の損壊、周辺地域の魔物の活性化、そして、魔王軍術者たちの治療費、精神ケア費用、呪文の弁償……」

「ひっ……!そんなものまで!」

「ええ。すべてギルドが負担することになりますわ」


エルザの言葉に、フィーネは膝から崩れ落ちた。報酬と損害が相殺され、収支はまさかのトントンだった。


「まさか……トントンなんて……!私の苦労が報われません!」


フィーネは絶叫した。他のメンバーは、その事実に困惑しながらも、どこか楽しそうにフィーネを見ている。


「トントンか!まあ、損してないならいいか!」

「アキナちゃん、そんな問題じゃないです!」

「ふふ、私の魔装具も役に立ちましたね!」

「イリス様、この魔王復活のメカニズム、論文にまとめられますね!」

「ええ、非常に興味深いデータだわ」

「無事……終わって……よかった……です……」


ルナは安堵の呟きを漏らし、リリアは腕を組み、呆れたようにフィーネを見ている。


「まったく、こんなに騒いだのに、トントンなんて」


フィーネだけが絶望の淵に沈む中、他のメンバーはそれぞれに今回の冒険の「成果」を見出し、どこか楽しげな空気を漂わせていた。




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10. 無自覚な自覚と世界の危機

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エルザは、満足げな表情で紅茶を一口飲むと、心の中で呟いた。


(まったく、これだから問題児は手放せないわ。おかげでギルドはホクホクよ。

 いろいろあるけど、あのポンコツたちをまとめられるのは、ギルドで私だけよね……)


エルザは、次の獲物を狙うかのように、鋭い視線をギルドの掲示板へと向けた。



ギルドの奥からは、アリスの歌声が響いてくる。


「〜♪魔王復活は阻止され〜、勇者の剣が光を放ち〜、ツンデレ令嬢の魔力無効化で〜、ポンコツだけど最強の絆で〜、世界を救う物語は続く〜♪」


「ちょっと!適当なこと歌わないでくれるかしら!ツンデレ令嬢って何よ!」


リリアは顔を赤らめてアリスに文句を言う。


「なんだかよく分からないけど、かっこいいな、アリスの歌!」

「俺ももっと強くなって、伝説になるぜ!」


アキナは満面の笑みでアリスの歌を称賛した。




フィーネは、その歌声を聞きながら、すでに胃は限界突破寸前だ。


フィーネは、トントンという結果に納得がいかず、机に突っ伏して唸っていた。


「まさか、魔王復活を阻止したのに、トントンなんて……!私の苦労は一体……!」

「フィーネさん、大丈夫ですか?胃、痛いんですか?」


ルナが心配そうにフィーネの顔を覗き込む。


「大丈夫じゃないです!

 こんな大騒ぎして、損害賠償まで払って、トントンなんて……!」

「でも、魔王復活を阻止したんだぜ!すごいことじゃないか!」


アキナが屈託のない笑顔でフィーネに話しかける。


「そうよ、フィーネ。目先の損益に囚われてはいけませんわ。これは、未来への布石、いわば戦略的な先行投資ですわよ」

「戦略的な先行投資!?こんな大赤字がですかーっ!」


イリスが冷静に解説し、セラが目を輝かせ、エルミナが無表情で頷く。


「ええ。それに、あなたたちの無茶な行動が、世界の危機を回避し、魔王軍の脅威を少しずつ削っているのですもの」


「そうね、フィーネ。私たちは、世界の危機を無自覚に解決しているのよ」



リリアが呆れたように呟き、アリスが笑いながらリュートをかき鳴らす。フィーネは、そんな仲間たちの無自覚な言葉に、もはや何も言えなかった。


しかし、彼女たちの無茶な行動が、世界の危機に繋がっているという真実の片鱗を、フィーネは無自覚に自覚し始めていた。


彼女の胃の痛みは、大黒字の喜びと、エルザの腹黒さ、そしてポンコツな仲間たちのせいで、複雑な痛みに変わっていた。




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11. 物語の結末とアリスの歌

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ギルドの奥からは、アリスの歌声が響いてくる。


「〜♪王家の隠し事は暴かれ〜、真実の片鱗は輝き〜、ポンコツだけど最強の絆で〜、世界を救う物語は続く〜♪」


アリスは、今回の冒険をすでに伝説として美化し、高らかに歌い上げていた。


フィーネは、その歌声を聞きながら、再び机に突っ伏すしかなかった。彼女の胃の痛みは、大黒字の喜びと、エルザの腹黒さ、そしてポンコツな仲間たちのせいで、複雑な痛みに変わっていた。


物語は、彼女たちの騒動と共に、これからも続いていくのだろう。


(おしまい)



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八人の最狂ポンコツヒロイン、最強の絆で世界を護るらしい ~結果的にS級冒険者、でもポンコツしかおらん!~ ざつ@🏆=カクヨムコン参加作品!! @zatu_1953

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