第31話 秘境の温泉地とトラブルメイカー -2

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4. リリアの方向音痴と怪しい洞窟の発見

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アリスの歌による混乱で、温泉地開発は早くも暗礁に乗り上げた。


そんな中、リリアは温泉地の地図を逆さまに持ち、首をかしげながら、なぜか温泉地とは別の方向へと進んでいた。


「この道を行けば、温泉の源泉に辿り着けるはずなのだけど……あれ?さっきと道が違うわね……また、迷ったのかしら……」

「リリア、また迷子ですか!?」


フィーネが呆れたように叫ぶが、リリアは全く気づいていない。やがて、リリアは温泉地とは別の、怪しい洞窟の入り口を発見した。


「ん?なんだここ?地図には載ってないわね……」

「リリア、どこに行くんですかーっ!そっちは温泉地じゃないですよーっ!」


フィーネの悲鳴にも構わず、リリアは好奇心に導かれるように洞窟の中へと足を踏み入れていく。その洞窟からは、どこか不気味な魔力が放たれているようだった。


「ひっ……この洞窟……危険です……!たくさんの……記憶が……」

「ルナさん!?」


ルナが、洞窟から放たれる魔力に情報過多でフリーズ寸前になる。フィーネは、この状況に頭を抱えた。


「リリアまでーっ!勝手な行動は控えてくださいって言ったでしょうがーっ!」


フィーネの叫びが、秘境の温泉地に響き渡る。温泉地開発は、もはや混沌の極みに達していた。







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5. エルミナの「とりあえず破壊」とセラの魔道具暴走

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リリアが怪しい洞窟へと足を踏み入れたことで、温泉地開発はさらに混乱を深めた。フィーネが「リリアを連れ戻さないと!」と叫ぶ中、エルミナが無表情で洞窟の入り口を見つめていた。


「邪魔ですね。とりあえず……」

「エルミナちゃん!?」


エルミナは、そう言うと、洞窟の入り口に向かって、広範囲破壊魔法を放った。轟音と共に洞窟の入り口が崩れ落ち、土煙が舞い上がる。


「エルミナちゃん!何してるんですかーっ!洞窟がーっ!リリアが中にいるのにーっ!」

「効率的な塞ぎ方です」

「効率的じゃないです!」


フィーネが絶叫するが、エルミナは全く気にしていない。その混乱に乗じて、セラが怪しげな魔装具を構えた。


「素敵です!この魔装具を使えば、洞窟の魔力を解析できます!『魔力吸い取り器』起動!」


セラは目を輝かせながら、怪しげな魔装具のスイッチを入れる。洞窟から放たれる魔力が、セラの魔装具に吸い込まれていく。


「セラちゃん!それは何ですか!?勝手に魔力を吸い取らないでくださいーっ!洞窟が暴走しちゃう!」

「な、なんだこれ!?洞窟が光ってるぞ!」

「魔力が……すごいことに……!」


アキナが驚きの声を上げ、ルナが顔を青ざめる。フィーネは、すでに胃がキリキリと痛み始めていた。


「まずいです!セラちゃんの魔装具が暴走してる!洞窟が……洞窟がーっ!」


フィーネの悲鳴が、秘境の温泉地に響き渡る。温泉地開発は、もはや混沌の極みに達していた。







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6. アキナの高所恐怖症とトラブルメイカー

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エルミナが洞窟の入り口を破壊し、セラが魔力を吸い取り始めたことで、温泉地はさらに混乱を深めた。


フィーネが「もう、めちゃくちゃです!」と叫ぶ中、アキナが突如として叫び声を上げた。彼女は、温泉地の源泉近くにある、高い岩場を見上げていた。


「ひっ……た、高い……!足が……すくむ……!」

「アキナちゃん!まさか、高所恐怖症!?」

「な、なんだこれ……体が……動かない……!」


アキナは、剣聖とは思えないほど怯えきっていた。フィーネは驚いて叫ぶ。アキナの高所恐怖症は、予想以上に深刻だった。


「ったく、こんな時に役立たずね。ほら、シャキッとしなさい!」

「リリア……お前は……」

「あんたが倒れたら、みんなが危険に晒されるでしょうが!」


リリアがツンデレながらも、アキナを叱咤激励する。だが、アキナは顔を真っ青にして首を振る。


「だ、だめだ……足が……震える……」

「無理しないでください、アキナさん」


ルナが心配そうに呟く。アキナは恐怖のあまり、その場で剣を振り回し始める。その剣が、偶然にも岩場の魔力結晶に当たった。ガシャン!と大きな音が響き、魔力結晶が砕け散る。温泉地の源泉が、一瞬にして枯れ始めた。


「きゃあああ!何事だ!?」

「温泉が!温泉が枯れたぞ!」


作業員たちが悲鳴を上げる。フィーネは、もはや絶望の顔でその場にへたり込んだ。


「アキナちゃんまでーっ!温泉がーっ!私の利益がーっ!」


温泉地開発は、アキナの高所恐怖症による暴走で、完全に破綻してしまった。

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