第20話 新米魔法少女ルーちゃんと愉快な仲間たち ⑨


 家に帰った頃には、太陽は空にお別れを告げていた。


 レトルトのカレーを自分で温め、それを食べる。私の家では、自分のご飯は自分で用意するのが当たり前となっている。


 試しに、首にいるゲトガーにも一口カレーをあげてみると、スプーンの先ごと食い千切られた。ふざけるな。


 風呂に入り、就寝の準備をし、私は自分のベッドに横になった。そんな私の手には、ルドヴィグの寄生紋パロテクトの欠片が。


「ゲトガー。今食べてみてもいい?」

「ああ」

「……これ、どっちの口で食べるの?」

「確かに」


 私の口で食べればいいのか、ゲトガーの口で食べればいいのか。


「俺が食べる。俺の方が、余すことなく力を吸収できそうだ」

「そうだね」


 私は、ゲトガーの口の中に寄生紋を放り込んだ。

 ゲトガーはそれを、牙を動かしてむしゃむしゃと食べている。うーん。やっぱりなんだか変な感触。


 嚥下えんげ

 委員長の寄生紋が、胃ではないどこともわからない場所へと落ちていく。


「ど? 力は。戻った感じする?」

「恐らくな」

「私の脳、乗っ取れそ?」

「……はは。試してやろうか?」

「ふふ。私はいつでも挑戦をお待ちしてますよ」

「んだそれ」


 そうして、私たちは笑い合った。


 ゲトガーと出会ってからまだ一日も経っていないが、出会った当初よりは、ほんの少しだけ仲良くなれたかもしれない。

 ……ゲトガーが私のことを、どう思っているのかは知らないけれど。


「ねぇ。ゲトガー。寝る前に軽く変身してみてもいい?」

 今ので、変身できる箇所はどのくらいの範囲にまで広がったのだろうか。


「そんな元気はない」

「まあ、そうか」


 一度の変身であそこまで疲労したんだ。一日に二度なんて、今はとてもできないだろう。


 今日は早く眠ろうと、目を瞑ってみるがなかなか寝付けない。今日は色んなことがありすぎて、思考をやめられないのだ。


 魔法少女モノの漫画でも読むか。

 私は、本棚から漫画を手に取って再びベッドに横になった。


「ゲトガーもいっしょに読む?」

「読む」

 読むんかい。


「お前の好きな魔法少女というものがどういったものか、勉強しておくことにする」

「勉強熱心だね」


 でも、私が好きなものに興味を持ってくれるのは、少し嬉しい。

 眠気がやってくるまで、私たちはいっしょに漫画を読んだのだった。


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