第2話(回想29年前)ジェイソン(アフリカ系アメリカ人)
現在から29年前。(手形からオーバーラップして)巨大な手がオンボロのトラクターのハンドルを力強く握る。親指から小指間までゆうに40cmはあろうかという手のひら、太く力強い指、そして屈強な手首、肘、肩を持つその身体は、太陽に灼かれ、土埃にまみれている。指の関節は太く、手のひらにはいくつもの硬いマメと傷跡が刻まれ、その過酷な労働の日々を物語っている。彼の両腕は、太陽に灼かれ、筋骨隆々だ。足も巨大で40cmはあり、ペダルの踏み替えが窮屈そうである。
ここは、アメリカ南部ミシシッピ州の農場である。夕焼けに染まる空の下、赤茶けた土埃が舞い、広大なカブ畑が広がる中を、オンボロのトラクターがゆっくりと、しかし力強く畑を耕している。運転席には、身長185cmと、すでに大人のような体格を持つアフリカ系アメリカ人のジェイソン・ハドソン(16)が座っている。
顔立ちは、たくましい顎のラインが際立つ骨格に、優しい二重の大きな目、丸みを帯びた高い鼻筋、厚めに引き結ばれた唇が特徴的である。
トラクターのエンジンが止まり、ジェイソンは大きく背伸びをする。疲労の色は濃いものの、彼の瞳には確かな光が宿っている。
ジェイソン(心の声)(今日も一日が終わった…。)
農場の片隅には、高さもリングも歪んだ、手作りのバスケットゴールが立っている。錆びついた鉄柱に、朽ちかけた木製のバックボード。そこは、彼がバスケットボールと出会い、3兄弟の希望を背負う場所だ。
ジェイソンの背後から、弟と妹が駆け寄ってくる。
弟タイニー(13)(ジェイソン似)「兄ちゃん、今日はバスケしないの?」
妹リリー(11)「兄ちゃん、疲れてる?」
タイニーは、ひょろりと背が伸び、13歳にしては手足は長いが、手足の大きさは普通である。エネルギーを持て余し、大きな瞳で常に動き回っている。
リリーは、ふわりとした茶色い髪が肩で揺れ、輝く瞳で、繊細に人の感情を察するのが得意な女の子である。
ジェイソンは振り向き、彼らに優しい笑顔を見せる。その手で、弟と妹の頭をそっと撫でる。その動作一つにも、彼の手の大きさが際立つ。
ジェイソン(16)「ああ、ちょっと疲れたな。でも、バスケする時間は別だ。」
そう言って、ジェイソンは地面に置いてあった古びたバスケットボールを拾い上げる。そのボールが、まるでミニチュアのように彼の巨大な手にすっぽりと収まる。彼はその手でボールをゆっくりと撫で、まるで生き物のように慈しむ。その表情は、普段の寡黙な彼からは想像できないほど、穏やかで幸福に満ちている。
ジェイソンはボールを高く掲げ、リングを見つめる。彼の瞳には、バスケへの計り知れない「熱量」が燃え盛っている。しかし、その熱量の奥には、家族の未来を背負うがゆえの、重い宿命がある。
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