すれ違う気持ち
無我
わからない気持ち
ある山奥の小さな小屋に一人の女性が暮らしていました
彼女は、町の人々から心ない言葉や行動の捌け口にされ、長い年月を耐えてきました
ある日、心が限界に達した彼女の前に悪魔が現れます
「地獄に来る代わりに、お前を強くしてやろう」
その取引を受け入れた瞬間、彼女の姿は恐ろしいモンスターへと変わりました
モンスターとなった彼女は山へ足を踏み入れた人々を次々と襲い、やがてその噂は国王の耳に届きます
討伐を命じられた兵士たちが山へ向かいますが彼女の力は圧倒的で、兵士たちは次々と倒れていきました
やがて残ったのは隊長ひとり
その頃には、モンスターの体は深い傷だらけで、今にも崩れ落ちそうでした
隊長は剣を構えると、ふいに自らの腕を切り、血を流しながらこう言いました
「これで戦った跡は残せる。あとは…ここから立ち去れ」
国王には「モンスターは倒した」と報告し、それから隊長は密かに山へ通い、彼女の手当てをしました
はじめは彼女も牙をむきましたが何度襲っても怯えることも反撃することもない隊長に、次第に心を許していきます
季節がいくつも巡ったある日、隊長は戦の帰りに深い傷を負い、ふらつきながら山へやってきました
そして、彼女の前に立つと静かに微笑み、そっと唇を重ねます
「お前は…悪くない」
そう言い残し、息を引き取りました
彼女にとって、それは人生で最初で最後の、温かく優しいキスでした
彼女は隊長の剣を握りしめると、その刃を自らに向けました
「一緒に…行こう」
二人の姿は、静かな山の中で二度と見つかることはありませんでした
すれ違う気持ち 無我 @mugamuga55
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