第四論 確率無視の攻撃
ハイドロポンプにおける命中率の主観的非対称性 ― プレイヤー心理と確率認知の歪みに関する考察 ―
要旨
本研究は、ポケットモンスターシリーズにおいて観察される現象、すなわち**「自分が使うハイドロポンプは外れるのに、相手のハイドロポンプは必中する」**というプレイヤー間で広く共有される違和感について分析したものである。統計的確率上は命中率80%であるにも関わらず、この現象は体感的に「自分50%、相手120%」と評価される傾向がある。本論文では、心理的バイアス・確率認知・ゲームデザイン上の演出要素を通じて、この“ハイドロポンプ必中のパラドクス”を考察する。
1. はじめに
ポケットモンスターシリーズにおける命中率80%の技「ハイドロポンプ」は、その威力と不安定さから多くのトレーナーの心を揺さぶってきた。
プレイヤーの間では、**「自分のハイドロポンプは外れるのに、相手のは当たる」という経験則が語り継がれており、これを本研究ではハイドロポンプの主観的命中率非対称性(Subjective Accuracy Asymmetry of Hydro Pump, 以下SAAH)**と呼称する。
2. 方法
本研究では、プレイヤー100名(うちガチ勢40名、にわか勢30名、旅パ勢30名)を対象に以下の調査を行った。
(1) 過去のバトルにおけるハイドロポンプの体感命中率の自己申告
(2) 「相手のハイドロポンプ」に対する被弾率の印象
(3) 技外し時の心理的ダメージスコア(1〜10段階)
また、Twitter上における「ハイドロポンプ 当たらない」「相手 ハイドロポンプ 当たる」の投稿数を分析した。
3. 結果
自分のハイドロポンプの体感命中率:平均 57.3%
相手のハイドロポンプの体感命中率:平均 113.2%
技外し時の心理的ダメージスコア:平均 8.9(「外した瞬間に負けを悟る」などの記述多数)
Twitter分析では、「ハイドロポンプ 外れた」の投稿件数が「ハイドロポンプ 当たった」の約3.6倍であった。
4. 考察
4.1 認知バイアスの影響
この非対称性の多くはネガティビティ・バイアスに起因すると考えられる。
人は損失や失敗の記憶を成功よりも強く記憶する傾向があり、「外した時の痛み」が「当たった時の喜び」を上回るため、体感命中率が低下する。
4.2 フラストレーション演出仮説
ゲームデザイン的観点から、外れた際の派手な演出(“勢いよく水を放ち空を切る”など)が印象を増幅し、外した記憶を定着させている可能性がある。
さらに、対戦時の「相手の技が当たる=自分がダメージを受ける」ため、心理的印象が倍化される。
4.3 RNG陰謀論的解釈
一部プレイヤーは、「AI側の命中率補正」あるいは「プレイヤー運値操作アルゴリズム」の存在を主張している(例:「急所もAIの方が出やすい」)。
本研究では証拠を見出せなかったが、被験者の75%が「たぶん何かやっている」と回答しており、信仰的側面も無視できない。
5. 結論
ハイドロポンプの命中率非対称性は、確率そのものの偏りではなく、プレイヤーの認知と感情の偏りに由来する錯覚現象である可能性が高い。
しかし、プレイヤーが「相手のハイドロポンプは必中」と感じる限り、その体感的現実は彼らの中で真実であり続ける。
参考文献
ゲーフリ(Game Freak)『ポケットモンスター 赤・緑〜スカーレット・バイオレット』シリーズ
Kahneman, D. (2011). Thinking, Fast and Slow.
Twitter 検索「ハイドロポンプ 外れた」, 2024年データ
対戦勢の叫び:「80%?実質50%だろ!」
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