日ノ本の始まり

Ittoh

第01話 日ノ本の始まり

#01 黒曜石の産地

 経済活動というのは、余分な商品があって、初めて始まる活動だと考えられる。自分で採取したものを、そのまま自分で使うだけであれば、そこに経済活動は発生しない。石器時代と呼ばれる時代から、縄文期に入っていった時、最初に商品となったのは、石であった。


 伊豆諸島の一つ神津島、恩馳島は、黒曜石の産地であった。そのために、神津島と呼ばれたのだろうと思われる。また、神話の大八島に隠岐が入るのも、黒曜石の産地であったことが理由のひとつであった。


 北海道遠軽町、長野県和田峠、大分県姫島、島根県隠岐島などが知られていて、多くの黒曜石が採取されたと推定されている。産地によって石の特徴が異なることから、石の交易を調査することが容易になるため、海外を含めて、なんらかの商取引が行われていたことが、確認されている。


 また、黒曜石は、加工することで、付加価値があがり、様々な地域で、加工技術を競うようになり、関東甲信越地域では、黒曜石の産地だけでなく、加工地域による分類や調査・研究も進められている。


文献資料:明治大学、黒曜石研究センター関連資料


 縄文期の交易で扱われた商品は、非常に重要な武器の主要部品としての鏃であり、加工技術という付加価値を含めた商品であったと推定される。縄文期には、獲物や堅果類を保管する土器の製作が始まることで、さらに商取引が活性化したと考えられる。


[newpage]#02 縄文の定住生活、桃栗三年柿八年は、伝承技術である。


 石器時代が、採取生活であったのは、縄文時代では間違いであり、栗や椎といった、堅果類を定期的に収穫する農耕生活による定住がはじまっていた。縄文期には既に、集落の周囲で堅果類を植えることで、発芽し育成し、植林する形で、堅果類の森を築いて、食料を確保する生活が可能だった。日本では、桃栗三年柿八年という言葉が、木々の採取可能になる時期を、小話として伝承されている。

 同志社女子大のWebページ2019/02/15吉海 直人(日本語日本文学科 教授)

「桃栗三年柿八年、梅は酸い酸い十三年、梨はゆるゆる十五年、柚子の大馬鹿十八年、蜜柑のまぬけは二十年」

「桃栗三年柿八年、梅はすいすい十三年、柚子の大馬鹿十八年、林檎にこにこ二十五年、銀杏のきちがい三十年、女房の不作は六十年、亭主の不作はこれまた一生」

 こんな感じで、伝承されていたようです。


 縄文期の祖先が、季節の移り変わりを、数えて子孫へと伝えていく、神話伝承の流れは、最初が「桃栗三年」「柿八年」「柚子18年」「蜜柑20年」「林檎25年」「銀杏30年」と、幾つもの伝承が、日本各地で伝承されていったのだと考えられます。


 採取の対象としては、小型の獣だけでなく、魚なども対象であり、海の民と山の民が交流していた証拠ともなる。


 これも、季節的な海産物となっていて、鮭は、川を遡上して、産卵し稚魚となって海へ還り、親となって川を遡上する。新潟の瀬波河(現・三面川)や青海川のように、川を遡上する鮭は、11月という季節漁の産物であり、縄文期の河川では、大量の鮭が遡上していたと考えられる。長良川や四万十川などの鮎もまた、春先に遡上する、川魚として知られている。


 つまり、縄文期は、堅果類の栽培に始まって、鮭や鮎といった季節魚、動物の罠採取といった形で、定住を可能とする背景が整っていた。当時の状況から寿司即すると、最も食料として当てにされなかったのが、動物の狩猟生活であったと考えられる。(動物は、狩猟対象というよりは、被害を受けるのを防ぐための、防衛対象であった)


[newpage]#03 縄文期の資源大国日本

 山岳部の高地性集落、川沿いの集落、海岸の集落と、黒曜石という物流の流れが、日ノ本の古代史を明らかにしていくこととなる。


 日ノ本は、一般には地下資源の無い国と呼ばれているが、それはおそらく間違いで、縄文期の日本は、資源大国であった。

 つまりは、一万年以上前から、地下資源の加工技術力を持ち、文明を築いていた日本だからこそ、地下資源の採掘は有史以前から進んでいたと推定されるため、可採量の限界に達したと考える方が、より正確である。


 縄文期の交易範囲は、北は北海道から樺太を経由して、大陸との取引があり、西は九州から半島へ渡る交易があり、南は西南諸島から台湾そして大陸へ渡る取引があった。取引品は、各地に産出する黒曜石、新潟糸魚川流域の翡翠が、希少品として扱われていた。


 縄文期の黒曜石は、石器として価値があり、流通品としての価値が存在した。翡翠は、最高級の装飾品として、価値があった。

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