もしも異世界転生させる神になったら
真田 了
第1章 異世界転生させる神になった
お約束のトラック
「あれ? ここはどこだ…?」
僕は突然見知らぬ部屋の中に立っていた。
高校から帰る途中で隣に住んでる幼馴染と偶然会ったから一緒に帰って…。
その後、自分の部屋のベッドに寝転んで、お菓子を食べながらラノベを読んでいたはずなんだけど…?
部屋を見回してみる。
僕の部屋よりずっと広い。
だけど窓も無い白い壁と白い床、白い天井。明るく清潔ではあるけど、どこか殺風景な感じもする。
「ほっほっほ。気が付いたかな?」
「うわっ?!」
誰も居ないと思ったのに、いつの間にか僕の横に老人が居た。
「ほっほっほっ」
驚く僕を見て、老人は愉快そうに笑っている。
老人はゆったりとしたローブを着て、片手に木の杖を持っている。白くて長いヒゲを生やしているし、まるで神様のような姿だ…?
僕は嫌な予感がするのを抑えながら、その見知らぬ老人に向かって丁重に話しかけた。
「あの、ここはどこですか?
僕はさっきまで自分の部屋にいたと思うんですが…。…まさか?!」
「ほっほっほ。最近の日本人は話が早くて助かるのう。さよう、ここは転生の間。
おぬしはトラックに轢かれて死んでしもうたのじゃ」
僕の心臓がドキンと跳ね上がった。
僕は…死んだ?!
「いやいや待って待って。トラック? 僕は自分の部屋に居たんだよ? 僕の部屋は2階だよ? どうしてトラックに轢かれるの?!
家の前は狭くてトラックなんか通れないし、仮にトラックが家に突っ込んできたとしても…トラックが2階までジャンプしたとか言うんじゃないよね?!」
「トラックを4台のヘリコプターで運んでいたのじゃ。こう、ロープで吊るしてな? そのロープが切れて、トラックが偶然おぬしの部屋の上に落下したというわけじゃな」
「何を言ってるんだあんたは!? なんでトラックをヘリで運ぶんだよ?!」
「トラックが2階まで跳んだり、家の2階の高さがある大きなトラックが町の家々を破壊しながら爆走してきたりするよりは、現実的じゃろう?」
「どこがだ!?」
「いやあ、苦労したぞい。最近は、異世界転生と言えば『トラックに轢かれた』と相場が決まっておるからのう」
「何の苦労だ!?」
「ちなみに嘘じゃ」
「嘘なのかよ!? どこが?!」
「ヘリコプターでトラックを運ぶはずなかろう」
「輸送機で運んでたとでも言うつもりか?」
「…」
老人はそっぽを向いた。
「おいっ!?」
僕は老人に向かって叫んだ。
「だいたい、トラック以外の異世界転生だっていっぱいあるだろ!?」
はぁ、はぁ。ツッコミどころが多すぎて、自分が死んだという衝撃が吹っ飛んでしまったよ。
口調もすっかりざっくばらんなものになってしまったし。
「そうなのか…。…。まぁ死んでしまったものは仕方ない…」
「素直に受け入れてもらえるのは有り難いのう」
「仕方ないでしょ!」
僕は肩をすくめた。
「だけど、まぁ、ラノベ好きとしては望むところではあるよね…。異世界に転生できるってのは」
「じゃが断る!!」
「はああぁぁ?!」
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