第20話 予選開始の朝


大会初日。

学園の訓練場は、普段の静けさとはまるで別物だった。

観覧席には家族や関係者がすでに詰めかけ、朝の空気を震わせるようなざわめきが響き渡っている。

魔力で補強された広大な闘技場は、まるで小さな戦場のようで、生徒たちは一様に顔を引き締めて立っていた。


ティナは深呼吸を繰り返しながら、出場者の列に並んでいた。

制服の上に纏った簡易の防具がやけに重い。

胸の鼓動が、耳の奥でやかましいほどに響いている。


「……いよいよだね」

すぐ前に立つアリスが、振り返ってにこりと笑った。

太陽のように明るいその笑顔は、緊張している周囲の生徒たちを一瞬で和ませる。

その場の空気さえ変えてしまう彼女に、ティナはやはり眩しさを覚えるしかなかった。


「う、うん……」

返事はしたが、声は小さく震えていた。


アリスは特に気負った様子もなく、余裕すら漂わせている。

精霊契約の儀式で光の大精霊を呼び出した彼女は、誰から見ても大会の最有力候補だ。

――そんな相手と同じ舞台に立たなければならない。


「選手諸君!」

開始の合図を告げる先生の声が場内に響き、ティナの背筋がぴんと伸びる。


「予選は個人戦だ! 一人につき三試合、勝利数で突破者を決める! 観客も見守っている、全力を尽くせ!」


歓声と拍手が湧き起こり、闘技場が大きく震える。

空気が熱を帯び、ティナの頬にまでその熱気が伝わってきた。


隣に立つ彼――禁じられた契約を交わした存在――の気配を、ティナはそっと感じ取る。

姿こそ目立たぬように控えているが、彼の声や存在感は確かに傍らにある。


「ティナ、大丈夫だ。練習通りやればいい」

耳元に届くその声に、張り詰めていた心が少しだけ和らぐ。

ただ一人、自分を信じてくれる存在。

その言葉に支えられて、ティナは震える唇を結んだ。


「……うん、負けない」


やがて、最初の組が呼ばれる。

観客のざわめきが一層高まり、砂塵の舞う戦場に二人の生徒が進み出ていく。

緊張と期待が渦巻く中、ティナの予選もすぐに始まろうとしていた。


――自分を証明するための戦いが。








一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一



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