第2話 2

織田フィールド。

そこで、私達の実技の授業は、

行われている。


というのも、体育大学の受験には、

学科試験の他に、実技試験というものが

あって、その試験に向けて、

このスクールでは、実技の授業が

組まれているのである。


「貴子。どの辺に並ぼっか。」

「いつも通り、最後のほうでいいんじゃない。」

「そうだね。」


鈴木貴子、このスクールに入って

友人になった貴子とそんな話をしつつ、

私達は、列の後ろの方に並んだ。


「よし。今日は、トラックの芝の中で

トレーニングしよう。」


アメフトの元日本代表だという浩二先生が、

そう言いつつ、みんなは芝の方へ移動する。


「スタートの時、後ろの人が前の人の軸足の足の

所に自分の足を添えてな。」


先生二人が見本を見せながら説明されて、

トレーニングはスタートした。

私の後ろの人は、初めてこのスクールに

入った時に、すれ違った伊坂だった。


走り終わると素早く戻ってきて、

彼は、足を添えてくれる。

そのおかげで、私はスタートの練習を

きちんと出来た。


几帳面な人なんだなと思ったんだった。

まだ、名前も知らない時の話だった。



*******



5月の後半。

私は、中間テストのため、6日ほど予備校を休んだ。

そして、テスト終了日。

実技を休んで、学科の授業から出席した。

1階の教員室で、先生に確認すると、

A、Bクラス合同の英語だった。


鞄を教室の席に置いて、

教室を出た階段の踊場で、

道路を見つつ待っていた。


遅いなあと思いながら待っていると、

後ろから声を掛けられた。


「あれ?久し振りだね。」


振り向くと、後ろに伊坂が立っていた。


「うん。久しぶりだね。」

「なんで休んでたの?」

「中間テストだったの。」

「そうだったんだ。」


雑談をしていると、横をクラスの女子が

通って行った。


「あのこ達遅いなあ。」

「ああ。鈴木達?」

「うん。」

「さっき、コンビニに居たから、

もう少しでくるんじゃないかな。」

「そっか。教えてくれてありがとう。」


それにしても、私は、緊張もせずに、

男子と話していた。

こんなに話したのは…。あの人以来だな。

なんて思いながら、来る直前まで、

伊坂と話していたのは、自分でも、

びっくりだった。



******



高校の授業が終わると、

自転車に飛び乗って、家の最寄り駅に

行って、電車に飛び乗る毎日。。


今日の実技は、マット運動だった。

何度も、倒立前転や側転などの、

実技試験に必要なマット運動の

練習が行われる。


そして、肩の力を抜いていた時、

視界に伊坂が入った。


「はれ?」

「おう。」

「後ろにいたんだ。」

「気づかないんだからな~。」


「何?いつの間に、伊坂君と仲いいね。」


貴子がコソッという。


「え?そうかなぁ。」


「伊坂君。大変だね。」

「ははは。」


それからは、マット運動で、

悪い所を教えて貰ったり、教えたり

していた。


そんな授業の後の話。


「私、突き指したことないんだ。」

「なんで?」

「ピアノ弾きだから、気をつけてるの。」

「ピアノ弾けるんだ…。」

「うん。伊坂くんは?」

「おれ?俺は、ピアノ弾けないよ。」

「そうじゃなくて、突き指の話。」

「ああ。俺も突き指したことないよ。」

「なんで?」

「指が短いんだな。」

「え?見せて。」


ほれ。と言って、伊坂は見せてくれる。


「あ。ホントだ。」


私は、無意識に伊坂君の手に、

自分の手を合わせてしまった。

伊坂は、びっくりしたみたいだったが、

合わせてくれた。


「短いね。でも、手の甲は大きいね。」

「ああ。そうなんだ」


クスクス笑いながら、話していたら、

そろそろ着替えようって、声をかけられた。


「はーい。じゃあ伊坂君行くね。」

「ああ。」

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