掌編・『文学青年』

夢美瑠瑠

第1話

 

 「ハムレット、は滑稽といえば滑稽なキャラである。」


 「葛藤し、懊悩する。 それは自分の中の自家撞着…自家中毒。」


 「生きるべきか、死ぬべきか? なんて… 青臭すぎる。 悩んだら、まず行動! そんな人生の黄金律?、経験則は子供でも知っている」


 「兎角に、こういう「文学青年」キャラは、それはブンガクなんだから小説の類には事欠かなくて…だけどアタシはどうしても好きになれないなあ? 女々しいし、結局はメラニーに愛想をつかされたアシュレイ・ウィルクスなんて要するにダメ男の典型だし。」

 

 云々、と、琴乃葉学園高校・文芸部の部長になったばかりの紫文乃は、例によって無意味に入り組んだややこしいような空疎で無内容なひとりよがりの思索にふけっていた。 自分は自家撞着でもないつもりで、ハムレットの滑稽さを理知的客観的に批判しているつもりなのが文学少女らしさ…そういうところが文乃らしさだった。


 ヒマなときの妄想…最近ジョイスの「ユリシーズ」を読んでいるから? 自意識が自己言及なト書きめいてきたなあ、それが自分でも嫌なのだが、どっちにせよコトバというものから逃れることは不可能…21世紀の新しい文学を拓くための、自分はジャンヌダルク! そう自負している文乃は、運命的に背負っている日本語を桎梏、呪縛? そう考えていた。


< to be continued >


 

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