「放課後の国」 カクヨム短歌賞10首連作部門

黒崎葦雀

放課後の国


放課後のグラウンドから聞こえる声は遥かな異国の遠い呼び声


夕焼けに管楽器の音がこだまする 君もどこかでクラリネットを


灯りのない教室を見渡せば 日だまりのあるあなたの机


なめらかに死を予感する曇り空に一緒に帰ろうと君が僕を救う


黒板にひときわ強く残る線 あなたの跡を今日もなぞってる


教壇でステップを踏む君 観客は僕ひとりだけ 麗しのヂゼルよ


粛々と机の位置を整えるあなたの姿は祈りに似てる


理科室の標本棚の馬の頭蓋の黒い虚ろと目を合わせてた


錆びついた音はきっと怖い人が来る合図 みんな帰らなきゃ『新世界より』


起立、礼、跪け 無人の教室で僕は王様 放課後の国  

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「放課後の国」 カクヨム短歌賞10首連作部門 黒崎葦雀 @kuro_kc

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