第6話 開演直前〜ライブ編 ⑥まこと&秋彦 初のツーマンライブ(土曜日)

■前回までのあらすじ

初ツーマンライブ本番5分前。

新人演歌歌手・霞秋彦(22)は、突然、先輩である中堅演歌歌手・一条まこと(35)から「前説で都々逸を♡」とムチャ振りされて大混乱。

常識人マネージャー・田島(35)は制止するが、サブマネの赤沼(35)が雑学を披露して余計にややこしくし、若手芸人・大空ゲンキ(20)は和太鼓アプリで無駄に盛り上げる。

さらに赤沼は「新人魂のハチマキ」を巻きつけ、会場の緞帳が上がるカウントダウン。

暗闇の客席から歓声が響くなか、秋彦は震える足で舞台へ──。

果たして『新人魂の都々逸』は、演歌ライブの前説として成立するのか!?


■登場人物🎤


●一条まこと(32)…中堅演歌歌手。いつもニコニコしていて絶対に怒らないが、善意のムチャ振りがすごい。おしるこも好き。歌声がキレイ。


●田島(35)…まことのマネージャー。常識人だがすぐ絶望して「もうダメだ」が口癖。まことのムチャ振りを止められない。


●赤沼(35)…まことのサブマネージャー。いつも余計なことをするポジティブ人間。拍子木にハマっている。なぜか雑学王。


●霞秋彦(22)…新人演歌歌手。マネージャーがズル休みするのと、影が薄い自分が悩み。演歌大好き。すぐに孤独を感じるタイプ。


●大空ゲンキ(20)…若手芸人。秋彦と同じ事務所に所属。明るく積極的で、思い立ったらすぐに行動する性格は芸能人向き。


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🍢第6話


【ステージ・開演直前】


緞帳どんちょうが完全に上がる。舞台上も客席も暗闇)


観客「まことー!」「まことくーん♡」

(会場は熱気でいっぱいだが、ペンライトはまだ点滅せず、暗闇)


新人演歌歌手・霞秋彦(22)

(マイクを握りしめ、ガチガチに緊張)

「え、えっと……あの……こ、こんにちは……僕は、まことさんじゃない方の……演歌歌手やってます……」


(観客、静まる)


秋彦(心臓バクバク)

「えっ? 真っ暗……。見えない……。(ドキドキ)前説って、電気つけてもらえないの…? 暗闇から声だけで失礼します。まだ新人で……(焦る)えっと、その……きょ、今日は……」


まことサブマネ・赤沼(35)

(袖から大声で)「都々逸だーーー!」


若手芸人・大空ゲンキ(20)

(和太鼓アプリ連打)「ドンドンドンドン! いけー秋彦さん!」


中堅演歌歌手・一条まこと(32)

(袖でマイクを使って、爽やかに)

「こんにちはー♡ 一条まことでーす。

大切なファンの皆様のために、後輩の新人演歌歌手・霞秋彦くんがこれから初めての都々逸で、前説にチャレンジしまーす♡」


(客席、おおおーっ! と感心したような歓声)


秋彦(ますます緊張。マイクに向かって)

「し、しち・しち・しち・ご……」


秋彦(震えながら即興)

「ツーマンライブ……

よく来ましたね……

緊張しすぎて……

秋彦だ……」


(会場、一瞬の沈黙──そのあと爆笑と拍手!)


まことファンの観客(ノリがよく、熱狂の渦)「かわいいー!」「がんばれー!」


(秋彦ファンは「え、なにこれ? 大丈夫?」とちょっと冷静に心配。ザワつく)


赤沼(拍子木カーン!)

「よっ! 国宝級の新人都々逸!」


ゲンキ(涙目で和太鼓アプリ連打)

「ブラボーです秋彦さん! 今ここに伝説が誕生しました!」


まことマネージャー・田島(35)

(袖で困惑)「……いや、伝説じゃなくて、え? なに……。まあ、すごいウケてるけど」


まこと(ニコニコしながら)

「いいねぇ〜! じゃあ次は、『おしるこ』をテーマにもう一つ♡」


秋彦「(えええ? いや急におしるこって言われても、お客さん意味わからないし!)」


赤沼「いけーーー! 『おしるこ都々逸』だーーー!」


ゲンキ「秋彦さーん!」


(観客まで「おしるこー!」「おしるこー!」と謎のコール)


秋彦(観客の期待に押され、震えながら)

「の、の、飲み干すおしるこ……

恋の甘さよ……

ライブ前には……

超危険……」


(観客、ドッと爆笑&拍手!)


まこと(缶を掲げながら、爽やかに)

「おしるこ、バンザーイ!」


観客「バンザーイ!」


ゲンキ「秋彦さん、天才じゃないですか?」


赤沼「まっ、ちょっと字余りだけどなっ!」


田島「……新人、もう本編前に体力使い果たしてるだろこれ……」


秋彦(汗だくでマイクを握り)

「ぼ、僕……おしるこ……、え? これ前説じゃなくて……そろそろ、本番じゃないんですか……!? ねえ、照明まだ? 暗くてお客さんの顔、全然見えないんですけど」


(まことファンの観客は「かわいいー!」「もっとやってー!」と大歓声。秋彦のファンは動揺しながらも拍手)


赤沼(拍子木カーン!)

「よーし! 次は『おでん』をテーマに詩吟だ!」


まこと(爽やかに乗っかる)

「秋彦くんが、今日これからは、『おでん詩吟』で格調高く、進行を務めまーす!」


観客「おおーっ」「おでーん!」「はんぺーん!」「だいこーん!」(なぜか具材コール)


(秋彦ファン、困惑でドキドキ)


秋彦(焦りが頂点)

「うわ! 次は詩吟!? おでん? 僕まだ心の準備が──」


赤沼「おでんー! お・で・んー!(泣きながら、拍子木をチョンチョン鳴らす)」


ゲンキ(全力で和太鼓アプリ)

「ドドドドン! いえーい! 秋彦おでん、サイコーー!」


秋彦「おで……おでおで……」


(そこへ、袖からまことがしれっと登場。セーターにスーパーのハッピ姿。暗闇の中なのに、妙にオーラがある)


まこと(満面の笑顔で)

「僕、来ましたー♡ じゃあここで、僕の新曲を一曲♪」


田島「いや、前説ぶったぎって本編入ったーー!? いきなり新曲歌うか?」

(慌てて、まことの新曲のカラオケを流す)


(まこと、舞台中央に出てマイクを構える)


秋彦「(焦って反射的に、詩吟ふうに)長らくー! お待たせをー! しました!

一条まことーさんのー、新曲うー、なんだっけ? 『君がいない夜のほとりで』はじ、はじまりいー!」


(まこと、暗闇の中で堂々と歌い始める)


まこと「♪〜君が……君がいない夜には〜」


(観客、一気にまことの歌に引き込まれる)


ゲンキ「すごい、神の歌声……」

(和太鼓アプリ封印。袖で静かに聞き入る)


(ようやく照明がつき、まことにスポットライトが当たる。客席、ペンライトを点灯させ、振り始める)


秋彦「あわわわ……」


(まことが切なく歌い上げるなか、秋彦は、もう自分が袖に引っ込んでもいいのかわからず、ちょっと離れたところで舞台上、うろうろ)


(つづく)


※すべてフィクションです。

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