第5話 2.開演直前編 ⑤まこと&秋彦 初のツーマンライブ(土曜日)

■前回までのあらすじ

初ツーマンライブ開演10分前、舞台袖はすでに大混乱。

中堅演歌歌手・一条まこと(32)のファンで埋め尽くされた客席に、新人演歌歌手・霞秋彦(22)は不安を募らせる。

そこへ赤沼(35)が「おしるこドリンク」を両手に登場。歌う前は飲食できない秋彦は慌てるが、まことは平然とゴクゴク。田島(35)は頭を抱えるばかり。

さらに秋彦と同じ事務所の若手芸人・大空ゲンキ(20)は開演直前に「今度、衣装買いに行くのお付き合いします!」とまことに話しかけ、赤沼は拍子木で無駄に盛り上げる。

まともな進行をしたい田島と、「芸能界って歌唱力じゃないの……?」と絶望する秋彦。

そして本番5分前、まことから突然の指示──

「秋彦くん、前説よろしく♪ 都々逸でね♡」

えっ、演歌ライブなのにいきなり前説で都々逸? 開演直前、秋彦の心はさらに揺れる……!


■登場人物🎤


●一条まこと(35)…中堅演歌歌手。いつもニコニコしていて、絶対に怒らない。善意100%のムチャ振りで周囲を巻き込み、まわりが混乱の渦に。


●田島(35)…まことのマネージャー。唯一の常識人であり、舞台進行を守ろうと奮闘するが、まこと達の暴走に巻き込まれる。


●赤沼(35)…まことのサブマネージャー。お調子者で、余計な一言と行動で事態をさらに悪化させるトラブルメーカー。おでんもおしるこも好き。


●霞秋彦(22)…新人演歌歌手。真面目で努力家だが、影の薄さと自信のなさに悩んでいる。演歌一筋で生きたいと思っているのに、なぜか毎回ムチャ振りの渦中に立たされる不運体質。


●大空ゲンキ(20)…若手芸人。まことの演歌に衝撃を受け、心酔しすぎて勝手に楽屋や舞台に乱入する。まことを「神」と崇める。


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🍢第5話


【袖・開演5分前】


新人演歌歌手・霞秋彦(22)

(真っ青になりながら必死)「えええ……そもそも『都々逸どどいつ』と『詩吟しぎん』って、何が違うんですか?」


中堅演歌歌手・一条まこと(35)

(にこにこ)「えっとー? リズム? 心? あとだいたい同じ?」


秋彦「……だいたい!?」


まことサブマネ・赤沼(35)

(突然、ドン! と胸を叩いて自信満々に)

「いやいや! けっこう違うんだぞ! 俺、雑学王だから!」


若手芸人・大空ゲンキ(20)

(キラキラ、即食いつく)

「ええっ、すごい! 赤沼さん!」


赤沼(ドヤ顔で)

「都々逸ってのはな、『七・七・七・五』で、江戸時代の終わりに出来た奴で、恋とか人情とか歌い上げるわけ!

『人の恋路を 邪魔する奴は 馬に蹴られて 死んじまえ』とか有名だよな!」


秋彦「へ、へえ……?」


赤沼(拍子木を掲げて続ける)

「一方! 詩吟っていうのは、漢詩や和歌を独特の節回しで……!」


まことマネージャー・田島(35)

(遮って)「本番5分前に説明することじゃないから、とにかく前説!」


秋彦(追い詰められ)

「そ、そんな難しいものを、急に僕にやれって……?」


まこと(にこにこしながら背中をポンと叩き)

「大丈夫! 秋彦くんの『初々しさ』が出てれば、それが正解なんだよ♡」


秋彦(頭を抱え)

「う、初々しさ? うううう……!?」


(そこへ赤沼、なぜかポケットから赤いハチマキを取り出し、秋彦の頭にぐいっと巻く)


赤沼「はいっ、気合いの証! 『新人魂』のハチマキ!」


秋彦「ちょっ、急に何? 頭きつい! 髪が乱れる!」


(そこへスタッフが慌ただしく駆け寄る)


スタッフ「緞帳どんちょう、もう動きます! 前説、お願いします!」


秋彦(悲鳴)

「ええええっ!? 僕!? ほんとに!?」


まこと「(にこにこ)こういうときは、パッ! サッ! ツツツツー! と出よう!」


赤沼(拍子木カーン!)

「秋彦ーーー! いけーーー!」


ゲンキ(和太鼓アプリを連打しながら)

「ドンドンドン! 魂を叫べーー!」


まこと(満面の笑顔で)

「秋彦くん、愛をお客様に届けてね♡」


ゲンキ(スマホの和太鼓アプリ連打)

「新人魂! 新人魂! 張り切ってどうぞー!」


秋彦「いや、結局、なんで都々逸なんですか?」


田島(焦っている)

「……いやいやいや、何? 何だこれ? 緞帳、もう上がるぞ」


(とうとう緞帳が上がり、観客の大歓声。舞台も客席もまだ、真っ暗)


秋彦(心臓バクバク、仕方なく暗闇の中、着物で舞台へ走る)

「(……えええええ?)」


(つづく)


※すべてフィクションです。

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