路上占い、あれこれ⑱【占い師はガッカリされる】

崔 梨遙(再)

たったの558文字ですよ!

 夜のミナミで路上占いをやっていると、こんなお客様達も来る。


「ちょっと、お兄ちゃん、占ってくれる?」

「はい、占いますよ。何を占いましょうか?」

「うーん、これからどうなるか? 占える?」

「では、全体運を見ましょうか?」

「うん、そうして! どんな結果が出るかなぁ」

「どんな結果をお望みですか?」

「そりゃあ、毎日平穏無事。普通、平穏が1番や」

「・・・平穏な卦が出ました(易には平穏・無難・吉でも凶でもない盛りあがらない卦が幾つかある)。あと3年は現状維持、昨日と同じ今日、今日と同じ明日を過ごせるでしょう」


 すると、相手のオバハンはじとっとこちらを見る。目でわかる。めちゃくちゃガッカリしている。嗚呼、わかってるから、そんな目で僕を見ないで! いくらそんな目で僕を見ても、ドラマは生まれませんよ。


 そうなのだ、『平穏無事、平凡が1番いい』と言いながら、本当は心のどこかでドラマを期待しているのだ。実は、ドラマを求めているのが多数派、求めていないのは少数派。今まで苦労してきたきた人には『普通』を喜ばれたりするが、それは少数派なのだ。


「なんや、兄ちゃん、おもろないなぁ」



 ガッカリされると、こちらも凹む。嘘はつけない、ごめんなさい!



 占い師は、またしてもお客様に気を遣うのだった。でも、平穏無事、平凡な卦がでたんだから仕方ないじゃないか-!







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

路上占い、あれこれ⑱【占い師はガッカリされる】 崔 梨遙(再) @sairiyousai

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る