第二十六章：新たな決意と並行世界へ

神様が指を鳴らすと「あまがみ」「リーネ」そして「アッシュ」を広く囲む床に不思議な文字が幾何学模様に連なり光を放った

その中心に漆黒の渦が出現する並行世界へと繋がる扉だった神様は静かに告げた

「これはお主らの魂の力を増幅させて並行世界へと転移させる魔法陣じゃ」

扉の向こう側からは様々な世界の景色が断片的に見え隠れしていた炎に包まれた荒廃した都市や空飛ぶ島々が浮かぶ幻想的な天空そして、どこまでも広がる静寂の雪原

「この扉は何処かにいる魂の欠片と五つの欠片が宿る世界へと繋がっておる……しかし……どの世界にいるのか……わしにも分からん……お主ら自身の魂の共鳴が真の世界を導き出す鍵となるじゃろう……」

「アッシュ」は渦の向こう側をじっと見つめた

そこには無限の可能性と、まだ見ぬ脅威が待ち受けている

しかし彼の中に迷いはなかった神様が並行世界へと繋がる扉を開いた後に妹の姿をした少女は静かに「アッシュ」に語りかける

「「アッシュ」私は……ここには行けません……」

少女の言葉に「アッシュ」は驚きを隠せなかった

「なぜだ？ 君も僕たちの仲間だろ？」

「はい……ですが私の役目は……あなた達をこの場所に導く事でした……そして……あなた達の魂が一つになるのを助ける事これ以上……私が行くと……あなた達の力が不安定になってしまう……かもしれません……」

少女は悲しげに微笑んだ、その表情は幼い頃に「アッシュ」と別れた妹の面影と重なった彼女は再び「アッシュ」と別れる事を覚悟していたのだ

「しかし……」

「アッシュ」が言葉を詰まらせると少女は彼の手にそっと触れる

「大丈夫です「アッシュ」私たちは……いつも繋がっています私は……あなた達をこの世界から見守っていますから……」

少女の言葉に「あまがみ」と「リーネ」も頷いた彼女たちは自分たちの心の中に少女の魂との繋がりが

あるのを感じていた、そして、それは「アッシュ」の心の中にもあった

「わかった……ありがとう……妹……」

「アッシュ」は初めて彼女を妹と呼んだ、そして涙をこらえながら彼女に背を向け旅立ちの扉へと向かった

「行くぞ……みんな……」

「アッシュ」は「あまがみ」と「リーネ」に静かに声をかける彼らは互いの手を固く握り合い覚悟を決めた

そして神様に最後の別れを告げると漆黒の渦の中へと身を投じた光が彼らを包み込み意識が遠のく中で彼らは新たな世界へと旅立っていった

振り返る事はなかった何故なら彼らには、この旅を終えて必ず彼女たちのもとに戻ってくるという固い決意があったからだった