第4話
それは想像以上に歯が浮くようなキラッキラの青春で、
これが
終点までバスに乗り、
自動改札を抜けてホームに上がると、地元の住民や同じ高校の生徒、見知らぬ制服の学生がてんでんばらばらに電車を待っていた。早くも乗車口の前で並ぶ人がいれば、
「そう言えば、爽太君は部活どうするの?やっぱ野球部?」
「いや、いまんとこはまだ何も」
さらりと嘘をついた。僕の中では既に帰宅部と決まっていた。だから嘘をついた。今日初めて知り合ったクラスメイトに、何部に入るの?と聞かれて、帰宅部と即答したらどうだろう。どう
「野球やらないの?」
「別に続ける理由ないし。久木さんは入りたい部活とかないの?てか、中学は何部だったんだっけ?」
「何部だと思う?」
「バドミントン部」
「ざんねん」
「じゃあ、吹奏楽部」
「違う違う」
「りくじょう?」
「運動部じゃないからね」
「.......文芸部?」
「ちょっと近づいたかな」
「......わからないので答えを教えてください」
「当ててくれたら、ご褒美で教えてあげる」
「めんどくせぇなぁ、この子」と言うのは心の中で
部活ぐらいで一体何を隠す事があるんだ?みんなあっけらかんと公言してるじゃん。
最初こそ部活を言おうとしない彼女を
部活ってただの課外活動な
「女の子の秘密は許されるの」
「ふーーん。で、高校はどうするの?」
「マネージャーやりたいんだよね!わたし、運動が苦手だから、自分がプレイするのは
「いいんじゃないかなぁ.....」
「なに、その反応」
口を
「いや、普通に
別に、マネージャーに向いていないとは思っていなかった。
むしろ、
久木未依は
そんな状況、他の女子マネージャーは面白く思わないはずだ。
本気になっちゃう男子、お
「じゃあ!一緒に野球部入らない?」
人の
久木の
「入りません」
「えぇーー、なんで?例えばだよ、マネージャーの私が朝練の準備で朝早く学校に来たら、先に来てた君が自主練してるでしょ。おはようって私が声をかけると君もおはよって返してくれて。そしたらさ、アップに付き合って欲しいって君が言うから、しょうがないなぁって言いながらも制服のまま私が君とキャッチボールを始めるの。
うんうん、すごくいいシュチュエーション。やっぱ、野球部入ろうよ!」
「ホントに野球はいいんだって。中学は友達に
「ずいぶん
「どっちかと言えば、
「嫌いじゃないよ、そういう人」
彼女のその一言に、僕は思わず目を
「なに、意外かな?」
僕は
「Time is money って言うでしょ、時間も体力も
「そりゃあ、そうだ」
「だったら、いつか
久木はロマンチストである以上にリアリストであった。理想を
「疲れない?」
「それはもうへとへと。でも 、楽しいよ。何も変わらない毎日より、全然
久木未依もまた、澄香と同じく、
そういう主人公
それに比べ、やはり僕は青春不適合者なのだ。
「一つ聞いてもいい?」
「何個でもいいよ」
「世の中ってどうにも出来ないことがあるじゃん。例えば、この天気とか。そういう時はどうするの?やっぱ、諦めるわけ?」
「天気なら大丈夫だよ」
「何が......?」
彼女の言いたいことがさっぱり分からない。天気を思い通りにする方法なんて、
「なら勝負しよう!3年後の卒業式は必ず晴れにして見せるから。もし、晴れなかったら爽太君の勝ちでいいよ」
「いいよ、乗った」
彼女には
そんなことはわからない。
でも運だろうが何だろうが、彼女が晴れると言って晴れたのなら、それは
とんだ
「晴れたらご飯でも奢ってね!晴れなかったら私が奢ってあげるから」
「じゃあ、久木さんの名前で高そうな焼肉屋でも予約しとくよ」
「その言葉、そのままお返してあげる」
どう考えても
雨でいつもよりテカついた電車に乗ると、彼女は長い座席の
「僕らって、最後まで友達でいると思う?」
今はクラスメイトで席も後ろ、入学初日で知り合いも少ない。
だから、久木と接点が生まれる。
時間が
仲の良い友達ができ、所属するグループが生まれ、席は替わり、クラスも変わる。
「どうだろう?今年の夏には
「それ言っちゃう?」
「ありえちゃう話なんだから、しょうがないんじゃない?」
彼女なら
「なんか
「そんな爽太君に、いい提案をしてあげる」
「なに?」
「爽太君」
彼女は寄りかかっていた身体をヒョイと起こし、くりくりの瞳が僕を
「私と付き合ってよ」
出たよそれ、朝も聞いた。そうやって男子の
「
と爽太が聞き返した時、久木は「それ聞いちゃう?」と言いたげに、大人びた余裕を浮かべて
「じゃあ言ってあげる」
「私の彼氏になることに付き合ってよ」
「ほら、決めて。ごーーー」
「よーーーん」
待て。待て。待て。待て。待て。待て。待て。待て。待て。待て。待て。待て。
付き合うって、そういうこと?嘘だろ、何の冗談?今日初めて会ったんだよ?好きになる要素が無くない?
「さーーーん」
彼女が何を考えていようが、何も考えていなからろうが、残り時間は3秒。
「にーーーぃ」
「いーーーち」
「ぜーーーろ」
「待って、分かった、分かったから。付き合う。付き合うから!」
ドッ、ドッ、ドッと
普段なら絶対にムリと
血が足りない今の脳みそだって、そう判断を
電車は気づかぬうちに次の駅に到着し、ホーム上では発車のメロディが
「
彼女は
僕はさっきまで久木がいた場所に寄りかかって、ドア上に表示された行き先案内を
いままでと変わらない、これからも変わらない普通を選んだはずなのに。
久木と出会い、僕の普通は
雨の
雨は
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