タイトル未定
たきのはら
1
今日僕は「もう死ぬ」そう決めた。
ただの死にたがりな発言じゃない。
このつまらない現実に、
「つまらない現実をどうにかしなければならない」というプレッシャーに、
嫌気がさしていた。
それに加え、人を信じられない愚かな自分にも辟易していた。
きっとこんな性格のせいで大切なものを失った。
この世に未練を残せるほど、価値を見出せるものはもう何もない。
さて、死ぬとなったらまずは何をしよう。
……そうだ。どうせ死ぬんだ、散財でもするか。
残しておいても仕方ないしな。
僕はスマホで「パチスロ」と検索し、近所のパチンコ屋を探した。
これまで真面目に生きてきたので知らなかったが、家から徒歩3分に「ふみひゃく」というパチンコ屋があるらしい。
口コミは★2.3と低いが、当たるかどうかなんてどうでもいい。
これまで無意識下で制限してきたことができれば何でもよかった。
踵がすり減った薄汚い靴を履く。何の愛着もない灰色の運動靴だ。
思えばこの靴を履くたび惨めな気持ちになっていた。
見るからに冴えない印象で、
周囲から「ダサい」と馬鹿にされているようで。
歩けば歩くほど、靴底と共に自信もすり減っていく。
買い替えるほど靴に興味はなかったし、ファッションセンスも皆無だけど。
カチャンと安っぽい音を立て、玄関の鍵を閉める。
自暴自棄になっていても日常の習慣は根強いものだな。
どこか他人事なのも、この人生にもう執着がないからだろう。
僕はパチンコ屋に向かった。
タイトル未定 たきのはら @takinohara__39
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