㏗1のプール

増岡

本編

プロローグ:無関心と優しさ

 ◇◇◇



 今になって思う。

 僕はあまりにも他人に対して無関心だった。

 これは怠惰と言い表すのは適切ではない。また、人として果たすべき義務を怠ったとか、生きていくための最低限の生存本能すら持たなかったというような、僕自身だけで不利益が完結する表現は全く実態に沿わない。

 持てる少ない語彙からなるべくしっくりくる言葉をすくいあげ、薄汚く絡まりついたプライドや意地を丁寧に取り除く。

 あれは、他人への甘えだったと思う。

 だれにも頼らないと、心の中で唱えながら、誰かの気遣いにずっと助けられていた。

 人に興味や関心を持つこと、人の求めていることを察知すること、人がどういう背景を持って生きているのかを慮ること、人が物事に対してどう心を動かしているのか知りたいと思うこと。僕はそういったことを一切自ら考えようとはしなかった。だから、そのために何をすればいいのかも知らなかったし、他人が、僕の周囲の人が、内に閉じこもって生きている僕のために配慮してくれることを当たり前だと思っていた。

 だから、いじめられていた僕に話しかけてくれたあの人が僕に対してどんな感情を抱えていて何を望んでいて何を期待していたのかとか、転校してもう会えなくなってからようやく思ったりして、自分自身の都合のよさに、ずいぶんと利己的な罪悪感を抱いたりするのだ。


 僕はとても図々しくて、他人の優しさを奪いながら、自分のことだけを考えて生きている。

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