元気はないけど生きています
めそぽた瑛琉
前編
10歳の時。
「グラント。スキル【生存】」
あの日から、俺の人生は変わった。
でも、このスキルには感謝してる。なぜって?死なせてくれないから。
10歳のあの日から4年たった、俺の誕生日。俺は家から__両親と兄から__勘当された。
わかっていた。あの日以前、よく笑っていたウチの家族は、もう、いない。俺が、俺がいなければ、
追放されてから。気がつけば、崖の上に立っていた。
そういえば前世では首を吊って死んだんだよな。確か、事故で結婚を約束していた幼馴染が事故で死んだからだっけ。
…どうでもいいや。
俺は早く死ななきゃいけないんだ。
そう思って、崖から飛び降りた。
…生き延びてしまった。
服は間違いなくボロボロ。忌まわしい【生存】の効果だった。
首吊りを森の中で試した。
溺死しようとした。岩に乗り上げて生き残ってしまった。
毒で死のうと思った。
…全部、無理だった。
なんで、死ねないんだよ。
「見過ごせない」
すっかり髪も白くなって、次は餓死を試そうとしていたある日のこと。
「なんですか。邪魔しないでくれませんか。俺は死ななくちゃならない」
「一月前から、アナタの事には気がついていました。これ以上、命を無碍にしないでください、ご両親から頂いた宝物でしょう」
銀髪の女騎士は言った。なんだ、こいつ。どん底を知らないくせに、俺のことを知ったように語らないでほしかった。
今思う。あいつは単純に善人だったんだ。
「五月蝿い。邪魔だから失せろ」
「そうやって突っぱねてきたんでしょう。私は貴方の行動を問題視しているんです」
「わったよ。俺がいなくなればいいんだろ、無能の穀潰しなのは俺が一番わかってる」
「…そうでは有りません。明日も来ますので」
わからなかった。怖かった。森で暮らし始めて、人と話さなくなって、もう半年は経っただろう薄汚い俺だ。そんなのに声を掛ける、あまつさえ手を差し伸べるなんて、よっぽど世間知らずなんだろう。
「また来たのか」
「何か悪いですか、私は来るだけです」
「…そうかよ」
次の日も、来た。
その次の日も。
飽きもせず、いつも同じ服装、でも言葉はだんだん優しくなっていくように思えた。
「なんで死にたいんですか」
「なんでって…◼️◼️◼️の為…あれ」
「案の定、です」
「は?何しようと勝手だろ、ほっといてくれよ」
「そうですか」
…一ヶ月経った。二ヶ月経った。
奴は来なかった。
⭐︎
ちかいうちに後編出します
元気はないけど生きています めそぽた瑛琉 @airisu_eiru
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