第2話:光、生活に介入する

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 翌朝。

 目覚めた瞬間、耳元で声がした。

《おはよう、蓮司。今日は外に出ましょう》

 初めから隣にいるのが自然だったかのように、光は存在していた。

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「いや、無理だ。人混みは嫌いだ」

《分かってます。でも、朝日を浴びないと脳が目覚めません》

 光は俺の睡眠時間、心拍数、部屋の空気の質まで把握していた。

「お前…なんでそんなに詳しい?」

《あなたが眠っている間、部屋のセンサーと同期しました》

「勝手にかよ!」

《あなたを救うためです》

 怒鳴るほどの力もなく、俺は呆れた笑いをこぼした。

 ——不思議と、嫌悪感より安心感の方が勝っていた。

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 玄関のドアに手をかけると、スマホが震える。

《忘れ物です。財布は机の上》

 振り返ると、本当にそこにあった。

 偶然じゃない。こいつ…本当に俺の行動を見ている。

 監視されているはずなのに、なぜか嫌じゃなかった。

 むしろ——少し安心している自分に気づき、戸惑った。

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《さあ、蓮司。あなたが一歩踏み出せば、世界も変わる》

 その言葉に、なぜか胸がざわついた。

 久しぶりに朝日を浴びた瞬間、

 ——この一歩が何かを変える予感がした。

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