第3話 オンラインの世界へ
「立花、小森、矢部ちょっといいか?」
午前の授業が終わり校内にある売店へパンを買いに行こうとする三人組に声をかける公平
「えっ?なに先生。俺たち急いでるんだけど」
「三人ともこれから生徒指導室に一緒に来てもらえるか」
公平の言葉に三人は顔を少し青くする
「えっ!俺たちなにかやらかしました…?」
三人が不安になるのも当然だ突然教師に生徒指導室に呼び出されればたとえ心当たりがなくても不安にもなる。
「ああ…すまない。別に悪い話をしようというわけじゃないんだ。少し個人的にお前たちに教えてほしいことがあってな」
それを聞くと三人は安心した顔を見せる
「俺たちに…まあ、いいぜ。ただ、昼メシ買ってきてからでもいいだろ。」
「その心配はいらない。」
公平はそう言ってパンのたくさん入った買い物袋を三人の前に出した。それを見て三人は「おお!!」と凝視する。学生達の貴重な食料調達場所である校内の購買で教師が買い占めてしまうのは全生徒を敵に回してしまうため学校近くにある早朝から営業しているスーパーのパン売り場で購入したものである。
「なんほど、つまりワイルドアドベンチャーオンラインを始めるにはどうすればいいのか俺たちにに教えて欲しいと」
パンをたべながら公平にいう立花
「まあ、俺たち三人でよくこのゲームやってるからな俺たちにに相談したのは大正解だな。」
矢部も自分のスマフォを操作しながら話す。
「先生には進路相談にいつものってもらってるからね。これくらいお安い御用さ。」
「まあ、1食の恩義はしっかりはたしてやるさ。それじゃあ先生俺たちは学校近くの商店街で時間潰してるから仕事おわったら連絡くれ。まずは必要なものを揃えるぞ」
「いや、教えてもらえればそれくらいは自分で揃える」
「いやいや、機材とかコントローラーとかはピンキリでいいもの悪いものもあるしここは俺たちの知識に甘えとけって」
立花にそう言われ少し申し訳ないとは思いつつも三人の提案に甘えることにした。
三人に勧められた機材を購入して遅くなってしまったので三人を車で自宅まで送り届けたあと書斎に入ってパソコンの設置をはじめる。自室は美香と共有でオンラインゲームなんてやってたらどうしたのかと心配されてしまいそうなので基本的に自分しか入らない書斎でゲームをすることにしたのだ。
立花に教えてもらった動画を参考にゲームのセッティング。案外簡単にできるものだなと関心してしまう。
「さて、いよいよ。ゲームスタート。まずは自分のキャラクターを作るんだな。」
子どもの頃からゲームに興味もなかった公平にとってはゲームデビューである。適当に作ろうと思ったがキャラクター作りは思いのほか楽しく気がつくと1時間以上かかっていた。ようやく完成した。
「ようやく、完成した。次は職業…すごい…20種類以上もある…これを一つ一つチェックしてたら何時間かかるんだ…ん!」
カチカチと職業をチェックしているとふと目に止まった。
「探検家…懐かしいな子どもの頃は大人になったら探検家になるって言ってあちこち走り回ってたな。一人で山に入ろうとして親父にゲンコツくらったり…本当に懐かしい…よし、これにしよう。現実では叶わなかった夢。ゲームで叶えてみるのもきっと悪くない。最後は名前か…これがある意味一番難しいかも…ん?」
名前をなににしようか考えていると書斎の本棚にある1冊の本が目に留まる
「ロビンソン クルーソー」
何度も読んだ公平のお気に入りの1冊だ。
「これから名前をもらうとしてさすがにそのまま名乗るのは少し気恥ずかしい…よし、決めた」
ロビック。これがワイルドアドベンチャーオンラインのなかの公平の名前になった。
すべての設定が完了したあとオープニングムービーが流れる。まるで、映画のような臨場感ある映像を見ていよいよゲームスタートというとき公平のスマートフォンから音楽がなった。時計を見ると23時になっていたゲームをはじめるための準備だけで数時間かかってしまったようだ。明日は朝一番で職員会議がある。これ以上の夜更かしはさすがに影響が出てしまう。
「今日はもう寝よう」
公平はパソコンの電源を落として書斎をあとにした。
MMORPGで妻の連れ子と仲良くなりたい 三樹 サトリ @satori162
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