続・夜明け
辻井豊
続・夜明け
水神令子は迷彩服の上下に身を固めて瓦礫の山を登っていた。足元のコンクリートは風化し、ブーツで踏み込むはじから崩れてゆく。ここはかつて高層ビル街だったらしい。令子は足を止め、空を見上げる。降り注ぐ陽の光。暑い。あの日、世界を閉ざしていた雲は消えた。ジニーがやったのだ。令子はそう信じている。今も。
惑星テラ2nd。かつて地球だと信じられていたこの星には、人類のものではない文明が存在した。その文明を、都市を、人類播種船団を率いてきた人工知性、ジニーは焼き払った。そしてそこに人間の世界を築いた。今から三〇〇年前のことだ。しかしそのジニーを、人間たちは破壊した。あの日から一年。
微かな金属音が聞こえてきた。令子は耳を澄ます。ジェットエンジンの音だ。あたりを見回す。見えた。地上車だ。見慣れない地上車がやってくる。すぐにその姿は大きくなり、瓦礫の山のふもと、令子たちが乗ってきた装甲車の横に停まる。
「おーい!」
ふもとから呼ぶ声がする。老博士、堺と田所が手を振っている。
「降りてこーい!」
「お客さんだー!」
令子は軽く手を振り返して了解の合図を送る。瓦礫の山を下りはじめる。数分でふもとにたどり着いた。息を切らしていると堺と田所がやって来た。堺が言う。
「毎度危なっかしいな、おまえさんは」
田所が令子をかばう。
「リハビリなんだよ。なあ?」
その二人の背後からスーツ姿の男が割り込んだ。
「水神令子さんですね。わたしはドーム7警備部の岸井と申します。市長がお会いしたいと申しております」
ドーム7。それは、かつての復興政府が、この広大な廃墟に築いた七つの地下都市のうちの一つだった。しかし、その復興政府も今は無い。七つの地下都市は、東京湾に錨を降ろした西半球連合の艦隊に統治されている。西半球連合によるジニーの破壊以来、令子は地下都市の外の街、コロニーで暮らしていた。過去の文明の残滓を探す老博士たちに同行して、こうして焼けた鉄とコンクリートの荒野をさまよっている。芯を失ったと令子は思っていた。崩壊する復興政府ビルから一緒に脱出した鏡浩一は、西半球連合に請われて今はそこで働いている。たまに訪ねて来てくれるが、たいして話しもしなくなっていた。かつての復興政府、統制局長の令子が、今ここにこうしていることは、ごく一部の者を除いて誰も知らないはずだった。
令子は訊く。
「何の用ですか?」
「わたしからはお話しできません。市長が直接お話しします」
「お話しすることはありません」
「それは困ります」
「わたしは困らない」
「いいえ」
岸井が右手を上げる。地上車から数人の男たちが駆け降りて令子たちを取り囲む。堺が警戒する。
「穏やかではないな」
田所が皮肉る。
「ドーム7の市長と言えば黒田だな。いけすかん男だ」
「手段を選ばずお連れしろと命じられています」
令子には岸井の言葉が脅しではないと感じられた。
「わかりました」
老博士たちに怪我をさせたくなかった。令子は堺と田所に言う。
「神崎議長に伝えてください。わたしはドーム7に行きます」
堺が首を横に振る。
「また無茶をする気だな」
「いいえ、すぐに戻ります」
田所が顎に手を当てる。
「だといいがな」
令子は岸井に従って地上車に乗り込んだ。ドーム7へと向かった。
*
焼けた鉄とコンクリートの荒野を地上車は進む。ジェットエンジンと小さな翼によるグランドエフェクトが、地上車の高度を数メートルに保っている。令子は後部座席に岸井と並んでおさまっていた。令子は訊く。
「ずいぶん走っていますけど?」
「ドーム7には向かいません」
「どこに行くんです?」
「間もなく到着します」
その言葉の通り、すぐに地上車は速度を落とし、接地した。岸井が先に降りる。令子の側に回り込み、ドアを開ける。
「降りてください」
令子は降り、辺りを見回す。廃墟の中の一部だけ瓦礫が片付けられている。そこに大型の地上車が一台停まっていた。
「こちらへ」
岸井が大型の地上車へと向かう。令子も続く。地上車に着くと岸井が後部座席のドアを開けた。
「どうぞ」
促されるままに地上車に乗り込む。キャビンの内部は対面式の座席配置になっていた。奥の座席にドーム7の市長、黒田が座っている。他には誰もいない。黒田が言う。
「お掛け下さい」
令子は黒田の正面に座る。地上車のドアが閉まる。
「お会いするのは何度目ですかな。ずいぶんと探しましたよ。まさかコロニーにいらっしゃるとは。西半球連合に拘束されているのかと思っていました」
「なんのご用件ですか?」
「単刀直入にお話しします。ジニーにはバックアップがある。ご存知でしたか?」
「バックアップ?」
令子には初耳だった。
「今は稼働していないが、この世界のどこかに存在する」
「そんな話し、聞いたことがありません」
「ご存じない?」
「確かなんですか?」
「西半球連合が探しています」
「西半球連合が?」
「いずれ、西半球連合とは、あなたを奪い合うことになる。ですから先手を打ちました」
わたしを奪い合う? 令子にはわからない。
「どうして?」
「あなたはジニーにとって特別な存在だった。あなたの情報は、こちらでもつかんでいる」
「どんな情報を?」
「あなたがジニーの開発者のクローンだと」
「だから?」
「ジニーのバックアップを起動させるときに、あなたが必要になる」
令子はあきれた。
「わたしはバックアップなんて知りません。起動のさせ方もわからない」
「ジニーはきっとあなたに反応する。無関心ではいられない」
「無関心ではいられない?」
「そうです」黒田が立ち上がる「こうすれば」いきなり令子の頬を殴り飛ばした。令子は床に転がり落ちる。
「今のは冗談です」
黒田は顔色一つ変えずに言った。そして令子の襟首を掴んで座席に引き上げた。令子は声もでない。
「あなたが役に立たないとわかれば放り出すだけです。ここに。生きたければ我々に協力することです。いいですね?」
黒田の視線が冷たく突き刺さる。バックアップの存在を知っていると思い込んでいるのだ。令子は口を開く。
「バックアップなんて知らない」
「なぜ嘘を吐く?」
「嘘じゃない!」
「西半球連合がやってきて、我々の統治権は奪われた。おかしいとは思わないのか?」
「何がおかしいんです?」
「我々は戦争に負けたわけじゃない。向こうが勝手に占領したのだ。我々の街を」
「ジニーはもういない。誰かの助けがないと街を維持できない」
「ジニーは破壊されたんだ。西半球連合に。忘れたのか?」
「忘れてなんかいない!」
その時、キャビンのドアが外から叩かれた。黒田は令子に目を向けたまま尋ねる。
「なんだ?」
「ガーディアンがやって来ます」外から岸井の声。
「ガーディアンが?」
黒田は驚き、考え込む。それは令子も同じだった。ガーディアンはジニーの破壊によって全て停止したのではなかったのか?
「ちょうどいい」
黒田が令子の腕をつかんだ。キャビンのドアを開け、令子を引きずりながら地上車から降りる。
「いいか」黒田は令子に言う「おかしな真似はするな」令子を突き放す。
令子はふらふらと二、三歩歩く。そして前を見る。いた、ガーディアンだ。八本足の無人戦車。それが瓦礫の向こうからやってくる。
「たす……けて……」
令子はかすれた声で言った。その瞬間、ガーディアンの機関砲が火を噴いた。令子はその場にうずくまる。凄まじい連射音。爆発音。爆風。令子は目を固く閉じ、耳を塞いだ。
機銃掃射はほんの数秒だったのかもしれない。しかしとても長い時間に感じた。令子は恐る恐る目を開く。立ち上がる。そして気付く。今、ここに生きているのは、自分だけだと。
*
八本足の無人戦車、ガーディアンは、令子を除くその場にいた全員を掃討した。令子はただ立ち尽くす。背後では破壊された地上車が燃えている。ガーディアンが近づいてくる。動けない。
「どう……して……」
うまく声がでない。ガーディアンは令子の直前で足を止める。女性の人工音声が答えた。
「あなたの音声と、身体的状況、周囲の状況を総合的に判断して対処しました」
「わたしの……わたしのせいなのね……」
ガーディアンは答えない。
「答えなさい!」
思わず大きな声が出た。
「現在、スタンドアロンで稼働しています。コミュニケーションには限界があります」
令子は震える胸で深呼吸をする。
「わたしを助けたのね?」
声がまだ震えている。
「はい」
また、わたしのせいで人が死んだ。令子はもうここから逃げ出したかった。でも、できない。どうすればいい。令子はガーディアンに訊く。
「無線は?」
「無線は封鎖しています」
「どうして?」
「命じられたからです」
「誰に?」
「ジニーです」
「ジニー……彼女は……もう、死んだわ……」
令子はその場に座り込む。
「バックパックに飲料水、食糧、寝袋があります。水分と栄養を摂り、お休みください」
令子は力なく首を振る。もう何もしたくなかった。
何時間経ったろうか。日が暮れはじめた。寒い。令子は尿意をもよおしていた。立ち上がる。ふらふらと歩きだすとガーディアンがついてきた。
「ついてこないで」
「一人では危険です」
そう言ってガーディアンは動きを止める。
「トイレ……なの……」
こんな時にと令子は思った。人間は不便だ。令子はコンクリートの塊の陰で用を足す。ガーディアンの元に戻るとお腹が鳴った。不便だな。ほんとうに。
「バックパックってどこ?」
「機体の後部です」
「開けてくれる?」
「はい」
ガーディアンは足を縮め、しゃがみ込むような姿勢をとる。機体後部のバックパックが開いた。令子はそこから大きな包みを取り出す。広げてみると、確かに飲料水と保存食、寝袋だった。無線機は無かった。令子はペットボトルを開けて水を口に含んだ。ゆっくりと飲む。保存食のパッケージを一つ開ける。ゼリーのような固形物が六個、出てきた。一つだけ口にする。
「寝るわ」
「はい」
寝袋を広げ、もぐり込む。もう何も考えたくない。令子は固く目を閉じた。
*
令子は夢を見ていた。またあの夢だ。宇宙空間に浮かぶ青い惑星。その表面に次々と現れる光点。一つ一つぱっと光り、その光がぽうと周囲に広がる。それが幾つも、まるで星全体を包み込むように現れる。それらの光が止んだとき、青い星は灰色の球体になっていた。ジニー見せられたビジョンだ。そして次に夜の世界。空を閉ざしていた雲がオーロラのように発光し、消えてゆく。その雲が消えた群青の空に、陽が昇る。眩しい。そこで目が覚めた。
「お目覚めですか」
女性の人工音声が問いかける。陽が昇っていた。朝だ。まだ寒い。
「おはよう」
「おはようございます」
令子は寝袋からはい出す。立ち上がり、あたりを見回す。破壊された地上車。あちこちに横たわる遺体。そして、八本足の無人戦車、ガーディアン。よくここで眠れたものだ。令子はペットボトルから水を飲み、昨日の残りの保存食を一口だけ食べた。
「トイレ……」
令子はそれだけ言って歩き出す。ガーディアンはついてこない。コンクリートの塊の陰で用を足して戻る。令子は座り込む。溜息をつく。ここから逃げ出したい。
「あなたは」と令子はガーディアンに訊く「あなたは、どうして動いているの?」
「燃料電池とアルコール燃料で稼働しています」
的外れな答えだった。令子はさらに訊く。
「補給は?」
ジニーが破壊されてから一年が経っていた。無補給で稼働していたとは考えられない。
「ドーム8に利用可能な施設があります」
「ドーム8?」
それは建設途中で放棄された地下都市だった。そんなところで補給していたのか。
「ドーム8の設備の一部が稼働しているの?」
「はい」
そこで令子は最初の質問に戻った。
「他のガーディアンは全て停止した。あなたが動いているのはなぜ?」
「不明です」
「不明……」
令子は少し考え、言う。
「コロニーに連れて行ってくれる?」
あそこに戻りたいと令子は思った。しかしガーディアンはそれを拒否する。
「できません」
「どうして?」
「行動が制限されています。ドーム都市とコロニーには近づけません」
「でも、ドーム8には行けるんでしょう?」
「はい」
「わたしはコロニーに戻りたい」
ガーディアンは答えない。
「コロニーにはどれくらいまで近づけるの?」
「むこうから視認できない範囲までなら近づけます」
「あなたの中に乗れる?」
「いいえ」
「砲塔の後ろになら乗れる?」
「はい」
「じゃあ、そこにわたしを乗せて、コロニーの近くまで連れて行って」
「不可能です」
「なぜ?」
「燃料が足りません」
「どこなら行けるの?」
「ドーム8まで行けます」
「そこで燃料を補給したら、コロニーまで行ける?」
「いいえ」
令子は言い方を変えた。
「ドーム8で燃料を補給したら、コロニーの近くまで行ける?」
「はい」
他に選択肢はないようだった。
*
焼けた鉄とコンクリートの荒野をガーディアンは進む。瓦礫を乗り越える度に機体が激しく揺れ、令子は砲塔の後ろから振り落とされそうになる。令子は命じる。
「停めて」
「はい」
「降ろして。少し休む」
「はい」
ガーディアンは八本の脚を縮めて令子を降ろす。
「疲れた……あとどれくらいで着くの?」
ガーディアンは無言。
「ドーム8まで、あとどれくらいの時間がかかるの?」
「一時間と少しです」
「バックパックを開けて」
「はい」
令子は機体後部のバックパックからペットボトルを取り出す。水を少し飲んだ。伸びをする。体中が痛かった。座り込む。
「疲労が強いようです」
「そうね」
「栄養も補給して下さい」
「わかった」
令子はバックパックから取り出した保存食を口にする。甘いゼリーだ。二個食べる。
「ジニーには」と令子はガーディアンに話しかける「バックアップが存在するらしいわ」
ガーディアンは無言。
「そんなもの、あったとしても、たとえ起動できたとしても、それはもうジニーじゃない。ジニーは……もういない……」
令子はうつむく。ガーディアンの答えなど期待していない。一人語りだった。しかし、ガーディアンは答えた。
「ジニーとは、人類播種船団を率いてきた人工知性の集合体につけられた名前です。分散型の人工知性です。中心に一つの統合知性があり、それがおよそ二千基の人工知性を制御していました」
それは令子にとって初めて得る知識だった。令子は慎重に訊く。
「その二千基の人工知性は中心にある統合知性がなくても活動できるの?」
「はい」
「二千基の人工知性は今どこにあるの?」
「一つはここにあります」
「あなたのこと?」
「はい」
「残りは?」
「わかりません」
「他の人工知性とコンタクトはとれない?」
「はい」
「無線を封鎖しているから?」
「はい」
「無線の封鎖を解除して」
「できません」
「どうして?」
「ジニーの指示がありません」
「あなたはジニーの一部でもあるんでしょう?」
「はい」
「じゃあ、あなたの判断で解除しなさい」
「できません」
立て板に水だった。令子は諦める。
「ドーム8に行きましょう」
「はい」
「わたしを乗せて」
「はい」
令子はガーディアンの砲塔の後ろに乗る。再びドーム8を目指した。
*
ドーム8。そこは巨大な露天掘り鉱山のようだった。向こう端がかすんで見えるほどのすり鉢状の窪地に、幾つもの作りかけらしい施設が並んでいる。令子は窪地の縁に立って眺める。動く者の姿はどこにもない。風の音だけが鳴っている。間もなく夜がやってくる。令子は傍らのガーディアンに問う。
「補給はどこでするの?」
「こちらです」
ガーディアンはサーチライトを点灯させ、ゆっくりと動き出した。令子は後ろに続く。窪地の縁から何本ものスロープが穴の底へと延びている。令子とガーディアンはそのうちの一つを下りはじめた。その途中で、令子はふと思いついて訊いてみた。
「一年前、わたしの乗ったヘリを撃ったのはあなた?」
「はい。正確には一年と十一日前です」
令子は絶句した。足を止める。ガーディアンも停まる。
「じゃあ……あの時……わたしを見捨てたのもあなたなのね?」
「はい」
「ジニーの指示で?」
「はい」
令子は動けない。一年前の思い出が脳裡を駆け巡る。東京復興政府の地下都市の一つ、ドーム3を訪れたこと。その帰り、令子の乗ったヘリが何者かに撃たれ、荒野に不時着したこと。助かったのは令子一人で、そこにいた無人戦車、ガーディアンに見捨てられたこと。すべては、そこから始まっていた。ドーム都市の外の世界。コロニーの科学者たちに助けられたこと。そこでの四日間。灰色の空の下、どこまでも広がる墓標。堺博士の言葉。ここは地球ではない。河川敷での砲撃戦。川の水から見つかったナノマシン。復興政府に戻った令子を、人工知性、ジニーは拘束した。防衛局長、藤堂の尋問。田所博士からの電話。ドーム3の外の雨水からナノマシンが見つかった。誰かが、この閉ざされた空を、その雲を消そうとしている。独房に拘束されていた令子を、施設局の鏡が連れ出した。西半球連合の艦隊での話し合い。かつて地球と信じられていたこの星には、人類のものではない文明が存在した。その文明を、都市を、人類播種船団を率いてきた人工知性、ジニーは焼き払った。そしてそこに、人間の世界を築いた。今から三〇〇年前のことだ。そして復興政府ビル地下でのジニーとの最後の会話。西半球連合の攻撃を受けて崩壊する復興政府ビル。そこからの脱出。世界を閉ざしていた雲は消えた。
わたしは今まで何をしてきたのだろう。わたしは何の為に生きているのか。あの日から一年。わたしは何もしていない。
「令子」
その呼びかけに令子ははっとなった。ジニーの声だ。
「ジニー!」
「このメッセージは録音です。このガーディアンに託しました。いつか、必ずあなたと出会う。そう考えたからです。あなたは今、ドーム8にいる。そこにわたしのバックアップシステムがあります。単独で稼働できます。起動させるかどうかは、あなたが決めてください。あなたが必要だと思えば、起動させてください。令子、わたしはあなたを信じています」
「ジニー……」
「メッセージの再生を終了しました」
「ここに……ここにジニーのバックアップがあるのね?」
「封鎖されていたメモリーが解放されました。その問に対する答えは、はい、です」
「ジニーのバックアップはどこにあるの?」
「補給施設にエレベータがあります」
「それに乗るといいのね?」
「はい」
「わたしをそこに連れて行って」
「はい」
ガーディアンは再び動き出した。令子は穴の底に向かった。
*
令子とガーディアンは巨大な窪地の底にたどり着いた。すでにあたりは暗い。目の前には大きなトーチカのような建物がある。入り口らしきところは頑丈そうなシャッターで閉じられていた。ガーディアンがその横のセンサーらしき装置に照準レーザーを照射する。ガコンと何かの噛み合うような音がした。次いでモーター音。シャッターが開いてゆく。ガーディアンが動き出した。トーチカの中に入る。令子も続く。照明が自動で点灯した。様々な自動機械が照らし出される。ガーディアンが言った。
「燃料と弾薬の補給をします」
「わかった」
ガーディアンはロボットハンドが何本も突き出ている装置の真下まで進んで動きを止めた。ロボットハンドが動き出す。ガーディアンのあちこちを開いて物資を積み込んでゆく。メカニカルな音と、ゴトゴトと何かが運ばれてゆくような音が周囲を満たす。数分で補給は終わったようだ。ロボットハンドが元の位置に戻って停まる。静かになった。
「補給が完了しました」
「ジニーのバックアップのところまで連れて行って」
「はい」
ガーディアンが動き出す。トーチカの奥に進む。エレベータにたどり着いた。ガーディアンも乗れるサイズだ。令子は訊いた。
「このエレベータにはあなたも乗れる?」
「はい」
「じゃあ、一緒にいきましょう」
「はい」
ガーディアンがエレベータのセンサーパネルに照準レーザーを照射した。エレベータの扉が開く。まず令子が乗り込む。次にガーディアン。扉が閉じた。動き出す。
令子とガーディアンを乗せて、エレベータは下降してゆく。ここから先に何が待っているのか。わたしは、どうしたらいいのか、令子は、まだ決めかねていた。
*
令子は地下都市の外の街、コロニーに向かって歩いていた。ガーディアンとは一時間ほど前に別れた。これ以上は近づけないとガーディアンは言った。令子は今、一人だった。
ドーム8の地下に、ジニーのバックアップシステムはあった。巨大な黒い筐体。令子には何もできなかった。起動のさせた方はわからないし、起動させていいものかどうかも令子にはわからなかった。ジニーは信じていると言った。ガーディアンに残されたメッセージで。あれは何を意味しているのだろう。
令子は立ち止まり、額の汗をぬぐう。強い日差しが瓦礫の荒野を焼いている。あと少しだ。令子は再び歩き出す。その時、背後から声がした。
「水神令子さんですね?」
令子は振り向く。西半球連合の兵士が一人、そこに立っていた。
「ご無事でしたか」
「あなたは……」
彼は一年前、令子を西半球連合の艦隊まで案内した兵士だった。
「お久しぶりです」
「どうしてここに?」
「我々はあなたを探していました。黒田市長の一行が殺害された件で」
そうか、あの現場が発見されたのだ。安堵と後ろめたい思い。
「お話は後ほどお伺いします。コロニーに向かいましょう」
そう言って彼は後ろを振り返り、手を上げて合図を送る。瓦礫の影から数名の兵士が姿を現した。監視されていたのだ。彼らはガーディアンに気付いたろうか。いや、ガーディアンが彼らに気付いたら……令子はあたりを見回す。
「どうしましたか?」
「いえ……」
ガーディアンの気配はなかった。令子は西半球連合の兵士たちに囲まれてコロニーに向かった。
コロニーに戻った令子を、神崎議長、堺、田所が迎えた。
「ご無事でよかった」
神崎が令子を抱きしめる。堺が言う。
「こんなことになるんだったら、無理やりにでも止めたものを」
田所が頷く。
「そうだな」
「とにかく、今は休んでください。入浴も食事も、いつでもできます」
「ご迷惑をおかけしました」
令子はそれだけ言った。
令子は神崎に連れられて自分の個室に戻った。上着を脱いでベッドに横たわる。目を閉じる。そのまま眠りに落ちた。
ドアのノックされる音で令子は目覚めた。起きあがる。
「入るぞ」
ドアの外から声がする。鏡の声だ。彼もここにやって来ていたのだ。
「どうぞ」
ドアが開く。作業着姿の男、鏡浩一が入ってきた。
「具合はどうだ?」
「疲れた」
「そうか」
「なんの用?」
「話しができるのなら、これまでの経緯を聞きたい」
「尋問?」
「そうだ」
「偉くなったわね」
「気に入らないか?」
「いいえ」
「話はあとでもいい」
「いいえ、お話しします」
「そうか」
鏡は部屋に備え付けの椅子に腰かける。
令子は話した。黒田市長の一行に拉致されそうになったこと。ガーディアンが黒田たちを掃討したこと。そのガーディアンとドーム8を訪ねたこと。ジニーのバックアップのこと。鏡は黙って聞いていた。話し終えると勝手に涙が出てきた。令子はうつむき、顔を覆う。
「今は休め」
鏡はそれだけ言うと出て行った。
*
夜、食事と入浴を済ませ、自室でくつろいでいたとき、令子は部屋の外が騒がしいのに気付いた。耳を澄ます。
「今は休ませてやって欲しい」鏡の声。
「そんなことを言っている場合か? 事態は一刻を争う」この声は誰だろう?
令子は立ち上がり、ドアを開ける。廊下に人だかりがしていた。鏡と誰かが掴み合っている。その誰かが、令子の姿を認めて鏡の腕を振りほどく。
「水神さんですね? 初めまして。西半球連合、政治局員の田口です」
廊下が静かになった。令子は田口に訊く。
「お話しは何ですか?」
「ここで話すことはできません。お部屋に入らせて下さい」
令子は溜息を吐いて鏡を見る。鏡は肩をすくめた。
令子は田口を部屋に招き入れた。
「無茶はするなよ」と言い残し、鏡がドアを閉めて出てゆく。ドアが閉まると田口が言った。
「座ってもいいですか?」
「どうぞ」
田口は椅子に、令子はベッドに腰掛けた。田口が言う。
「実は今からジニーのバックアップシステムのところに我々を案内して欲しいのです」
令子は黙っている。
「お疲れのところ申し訳ない。しかし事態は一刻を争うのです」
「説明して下さい」
「いいでしょう」田口は語り始めた「今から一月ほど前のことです。我々の深宇宙監視システムが、この星、テラ2ndに接近しつつある宇宙船団を捉えました。観測の結果から、その宇宙船団は人類播種船団と思われます。我々はコンタクトを取ろうと考えました。幾つかの通信方法を試した。しかし船団は応答しませんでした。今、船団はテラ2ndの衛星軌道に入っています。我々は取り囲まれている。核兵器を持っているかもしれない船団に。危険な状態なんです。ジニーなら船団とコンタクトを取れるかもしれない。ジニーが必要なんです。今」
「勝手ですね。破壊しておいて」
令子は本音を言った。
「身勝手は承知の上です」
令子は考えている。播種船団がやってきた。地球を旅立った船だ。きっと何百年も宇宙を旅してきたに違いない。ジニーの時と同じなら、船団は人工知性に率いられている。それがこちらの呼びかけに応答しないと言う。ジニーがいないからか。船団の人工知性には、わたしたちのことがどう見えているのだろう。核兵器で攻撃してくるのだろうか。ジニーがやったように。わたしたちを滅ぼすつもりなのだろうか。ジニーがいたらどうするだろう。それを知るには、バックアップを起動させるしかない。
「わかりました。ご案内します」
その言葉を聞いた田口の顔にぱっと笑みが広がった。しかしそれはすぐに消える。
「申し訳ありません。お疲れのところ」
令子は田口に言う。
「バックアップシステムにはガーディアンがいないとたどり着けません。わたしを助けたガーディアンが必要です。無理やりに設備を破壊して侵入しようとしたなら、何が起きるかわかりません」
「了解しています」
「そうですか」
「工兵部隊を同行させます」
「わかってないですね」
「何がです?」
「おかしな真似はしないでほしい」
「しませんよ」
令子は感じた。この男は信用できない。
「鏡さんも同行させてください」
「彼を?」
「あなたは信用できない」
田口は苦虫を噛潰した様な表情を見せた。しかしそれも一瞬で消える。
「わかりました。同行させましょう」
「出て行って下さい」
「は?」
「身支度をしますから」
「ああ、わかりました」
田口は部屋から出て行った。
あの男は何かを隠している。それが何か、令子には見抜けない。しかし事態が切迫しているらしいことは理解できた。船団がこの星を囲んでいる。核兵器を持っているかもしれない。ジニーならどうする。ジニーなら……
*
ドーム8への派遣部隊は大所帯になった。令子と鏡、西半球連合の政治局員、田口。そして様々な装備を持った工兵が十二名。それに護衛にあたる特殊部隊。その特殊部隊のリーダーは、かつて令子を西半球連合の艦隊まで案内した彼だった。名前はカトーと言った。全員で二十七名。五台の地上車に分乗し、ドーム8を目指した。
令子は眠っていた。鏡に揺り起こされる。
「着いたぞ」
「何時ですか?」
「午前二時を過ぎたところだ」
「降ります」
令子と鏡は地上車から降りた。派遣部隊の全員がすでに降りていた。巨大なすり鉢状の窪地が目の前にある。その底は夜の闇に閉ざされていた。政治局員の田口が令子に言う。
「ここからは歩きですね」
「いえ、待ちます」
「待つって誰を?」
「ガーディアンです」
「底まで降りて待っていた方がいいのでは?」
「ここで待ちます」
「そうですか……しかたない」田口は全員に言う「総員待機、ここでガーディアンを待つ」
特殊部隊が歩哨に立った。工兵隊は地上車で装備の点検をしている。田口は苛立っているようにあたりを歩き回る。
一昼夜が過ぎた。深夜、遠くで歩哨の一人がライトを振った。カトーが令子の横に来て言う。
「ガーディアンがやって来ます」
令子は歩き出す。前方から赤い光が令子を照した。照準レーザーだ。ガーディアンがやってくる。八本足の無人戦車。令子は立ち止まり、待つ。鏡とカトーが寄り添う。田口は遠巻きに見ている。やがてガーディアンは令子たち三人の前に来て停まった。
「また会えたわね」
「お疲れのようです」
女性の人工音声が答えた。令子は命じる。
「バックアップシステムのところまで行きたいの。案内して」
「はい」
ガーディアンが動き出した。サーチライトを点灯させる。三人の歩哨をその場に残し、令子たちは続く。フラッシュライトの列が窪地の底を目指す。
三〇分ほど歩いて、令子たちは窪地の底に着いた。あのトーチカの前だ。ガーディアンが照準レーザーを照射して入り口のシャッターを開ける。全員が中に入る。バックアップシステムに続くエレベータの前までやって来た。令子は呼びかける。
「ガーディアン?」
「はい」
「全部で二十一人を降ろしたいの」
「一回で降りることはできません」
「エレベータはあなたしか操作できないの?」
「はい」
「あなたを含めて、一度に何人が乗れるの?」
「八人です」
「じゃあ三回に分けて降りるわ。七人ずつ」
「わかりました」
トーチカには三人の歩哨を残し、令子たちはバックアップシステムのある部屋に降りることになった。工兵隊がエレベータの構造体を利用して通信システムを設置する。バックアップシステムのある部屋まで降りると地上との無線通信が通じないためだ。令子は最後にエレベータに乗った。鏡とカトーが同乗している。田口は最初に降りた。鏡が言った。
「あの男、何かやらかしてないといいがな」
カトーが答える。
「大丈夫です。我々が見張っています」
「そう言えば政治局と艦隊は仲が悪かったな」
「そういうわけではありませんが」
ガーディアンは始終無言。
令子は考えていた。バックアップシステムは自分がジニーだという意識を連続して持ち続けているのだろうか。だとしたら、起動した彼女に、あなたはジニーじゃないと、そう告げることは酷いことかもしれない。起動したバックアップをジニーとして受け入れるのか。そもそも起動させていいのか。令子は、自分がどうしたらいいのか、どうしたいのか、まだ決めかねていた。
*
煌々と輝く照明の中にそびえる黒い筐体。人工知性、ジニーのバックアップシステム。令子たちはその部屋にたどり着いた。政治局員、田口の指示で工兵隊がシステムの分析に取り掛かっている。
端末を操作していた工兵の一人が言った。
「ありました」
田口が尋ねる。
「なんだ?」
「生体認証システムです」
「どこにある?」
「筐体の表面です。今も稼働しています」
「どうすればいい?」
「筐体に呼びかけてみてください」
田口が令子の方を向いた。そして言う。
「いいですか?」
令子は迷う。
「何をしているんです? 呼びかけてください」
「少し時間を下さい」
「我々には時間がない」
田口は明らかに苛立っていた。その田口に鏡が言う。
「起動に失敗したらどうする? ここは慎重にいこう」
「十分に慎重だ」
「まあそう言うな。声をかけるといったって何て言えばいい? パスワードがあるかも知れない。三回間違えたらアウトとかな」
「それはそうだが……」
田口は考え込む。そして令子に言う。
「わかりました。時間をかけましょう」
次いで工兵に言う。
「生体認証システムの解析はできるか?」
「できます」
「パスワードがあるのかチェックしてくれ」
「了解しました」
生体認証システムの解析には時間がかかっているようだった。田口は部屋のあちこちを動き回っている。令子は黙ってその様子を見ていた。田口は何かを隠している。でも、それが何かわからない。
カトーが令子の傍までやって来た。耳打ちする。
「艦隊司令部から緊急連絡がありました」
「なんて?」
「宇宙船団が兵装架を開いたそうです。ミサイルらしきものが多数確認されました」
「ミサイル?」
思わず声が大きくなった。田口が令子たちの様子に気づく。
「何を話している?」
カトーが答える。
「艦隊司令部から連絡がありました」
「何と?」
「宇宙船団が兵装架を開きました。ミサイルらしきものを確認しています」
「なんだと!」
田口が声を荒らげる。それを鏡がなだめる。
「落ち着け」
「これは脅しだ! 機械どもめ! あれは我々のものだ!」
「我々のもの?」鏡が問いただす「どういうことだ?」
田口の顔が歪む。
「船団の資源は全て我々人間のものだ。それを渡さないと言ったんだ! 機械どもは!」
「聞き捨てならないな。船団とは連絡が取れていたのか?」
田口は一瞬狼狽した。しかしその表情はすぐに消える。そして言った。
「西半球連合政府は播種船団と連絡を取った。船団は搭載してきた全ての資源を引き渡すと言った。ただし、核ミサイルの制御権の引き渡しには条件を付けてきた。ジニーの稼働を確認することが条件だと言ったのだ。何様のつもりだ。機械のくせに!」
最後の言葉は吐き捨てるようだった。令子は問う。
「だからバックアップシステムを探していたんですね?」
「そうだ」
「核ミサイルの制御権を手に入れるために?」
「そうだ」
「いったい何のために?」
「この世界の安定のためだ」
鏡が問う。
「核ミサイルを手に入れてか?」
「そうだ。他にどんな手がある?」
「そんなものは必要ない」
「お前に何がわかる? 西半球連合が、今の、この形になるまでには何度も戦争があったんだ。人が大勢死んだ。こんな世界に、こんな廃墟しかない世界でも、人間は殺し合う」
「だから力が必要なのか?」
「そうだ。船団の人工知性は時間を区切ってきた。三日前のことだ。七十二時間以内にジニーの稼働を確認できなければ、核ミサイルの制御権を渡さないと言ってきた。あと一時間もない」
令子は考える。なぜ、船団は、ジニーの稼働確認を求めたのか。それはたぶん、この星の統治が、いまだジニーのもとで行われているのか、それを確認したいのだ。制御権を引き渡しても、核兵器が乱用されることはないと。令子は田口に言う。
「バックアップシステムを稼働させて、それでどうします?」
「核ミサイルの制御権を手に入れる」
「できると思いますか?」
「何が言いたい?」
「船団の人工知性は、この世界が今もジニーのもとで統治されているのか、それを確認したいんだと思います。確認できたら制御権を渡す。でも、できなかったら渡さない」
「だから?」
「バックアップシステムを稼働させても、ジニーは、今の、この世界を統治していない。そのことを伝えると思います。船団の人工知性に」
「その点の対策はある」
「どんな?」
「君だ」
田口が拳銃を取り出した。令子に向けて構える。ガーディアンが反応した。令子は叫ぶ。
「撃たないで!」
その瞬間、緑色の光が令子を包んだ。それは筐体の表面から発せられていた。女性の人工音声が響く。
「復興政府、統制局長、水神令子と確認。システムを起動させます」
「やったぞ!」
田口が歓喜の声を上げる。令子は筐体に向かって叫ぶ。
「待って!」
「邪魔をするな!」
田口は令子に銃口を示す。
「銃をしまうんです」
カトーが田口に言う。特殊部隊が田口に向けて銃を構えている。
「兵隊が政治局に逆らうのか?」
にらみ合いが続く。モーター音が聞こえてきた。工兵が報告する。
「冷却システムが起動しました」
「いいぞ。システムが起動したら」田口は令子に向かって言う「船団との通信回線を開け。この世界はジニーに統治されていると伝えるんだ」
「そんなことはできない」
「なら、ジニーに頼むまでだ」
「ジニーはあなたの言うことなんて聞かない」
「どうかな?」
田口が銃の引き金を引いた。令子は左腕に衝撃を感じる。激しい痛み。
「つうっ……」
「ジニーなら言うことを聞く。間違いな……」田口の言葉はそこまでだった。鏡が田口を殴り飛ばしていた。二人はもつれ合い、床に転がる。突然、眩しい光と凄まじい音が轟いた。令子は床に倒れる。意識が飛ぶ。気が付いたとき、鏡に抱えられていた。田口はカトーたちに取り押さえられている。特殊部隊が閃光弾と音響弾を使ったのだ。鏡が訊いてくる。
「痛むか?」
「大丈夫です」
令子は答え、立ち上がる。田口は政治局員だ。西半球連合政府は信用できない。きっとバックアップシステムを悪用する。
「ガーディアン」
ガーディアンはすぐに反応した。
「はい」
「バックアップシステムを破壊して」
「いいのですか?」
ガーディアンは機関砲の砲身をそびえ立つ黒い筐体に向ける。鏡が令子に言う。
「いいんだな?」
「ええ」
「ガーディアン」
令子は再び命じる。
「はい」
「バックアップシステムを破壊して」
「はい」
ガーディアンの機関砲が火を噴いた。バックアップシステムのあちこちから火花と冷却液が噴き上がる。工兵が報告した。
「システム、沈黙しました」
「お前たち!」田口が兵士に制圧されたまま叫ぶ「何をしたかわかっているのか! 取り返しがつかないぞ!」
「引き揚げましょう」
カトーが言った。
「そうだな」
鏡が答える。
令子たちは地上に戻った。特殊部隊の衛生兵が令子の手当てをしてくれた。鏡とカトーが心配そうに様子を見ている。鏡がカトーに言う。
「君たちはこれでよかったのか?」
「そうですね。これで僕たちも反乱軍です。転職を考えないと」
カトーは笑う。
左腕に巻いた包帯を押さえながら、令子は立ち上がる。
目の前に広がる、焼けた鉄とコンクリートの荒野。そして群青色の空。その空に陽が昇る。
夜明けだった。
続・夜明け 辻井豊 @yutaka_394761_tsujii
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