僕の名は。

野良ガエル

秘されし二文字とサードアイ

 俺は自分の名前が嫌いだった。

 名前を決めた両親のことも、それを止めなかった周りの人間のことも、長い間恨んでいた。


 この名前は別にキラキラネームというわけではない。難しい字ということでもない。しかし、名前としては十中八九好奇の目で見られる。実際、今までずっと俺はそういう経験をして生きてきた。

 

 秋色に色付いた大学構内。ベンチに腰掛けながら己の過去を浅く振り返り、俺は深く息を吐く。そのまま脱力して俯いていると、誰かの歩く音が近づき、俺の視界に映る落ち葉だらけの地面が影で濃くなった。


「よっす! なんだかお疲れだな。大丈夫か山崎ィ」

 俺は身をかがめたままゆっくりと顔だけ上げる。そこには軽薄な笑みを浮かべる金髪長身の男、田口宏が立っていた。俺と比較すると、いや比較しなくても非常に普通な名前の友人だ。宏という名前の普通さは、俺にとって長年羨ましいことだった。


「なんか面白いことでもあった?」

 季節外れのアロハシャツに身を包んだ宏の、軽すぎる心配の声。その先に話したい本題があるのだと、分かりやすいテンションである。

「気落ちする山崎くんにぃ、とっても良いお知らせを持ってきたぜぇ!」


 俺の記憶では、今まで宏の良い知らせで本当に良かったことは半分以下だった。自然と眉に力が入る。宏は構わず喋り続ける。

「俺の知り合いでな、お前のことが気になってる子がいるんだよ! ついに山崎くんにも、心跳ねるスプリングが来たんじゃねーの?」

 俺は自分が奥手なのを重々承知している。だが、その手の口利きは実に大きなお世話だった。幼馴染である宏は、そこまで分かっていながら大きなお世話を焼こうとしているのだ。


「いや、前にも言ったよね。そういうのは不要いいって」

 否定には見栄も含まれている。だがそれを差し引いたとしても、あえて人付き合いを絞っている俺にとっては本気で面倒なことだった。宏の行動が本気で自分を心配してのことか、単なる宏の愉悦か、あるいはそれらの何割ブレンドなのかは関係ない。とにかくこの火種はさっさと消さなければならないと、俺の中の危険信号は告げていた。


「実はなぁ、その子が来るんだよ。コ、コ、に♪」


 時既に遅すぎ。俺の危険信号はなんら役に立たなかった。とはいえ、この根回しを回避しようというなら、未来予知の一つでもして先に動かなければ無理というものである。


「マジかぁ。勘弁してよ」

 身をかがめていた俺は、今度はベンチに身を預けて反り返り、力なく空を見た。紅葉とレンガ調の建物と空の青が、見事に調和していて美しかった。


「いやいや、お前は未来で俺に感謝することになるぜ! なんたって可愛いし!! 良い子っぽいし!!! まぁ、もちろん会ってみて上手く行くかは分かんねぇけどさ」

「なんで、……僕?」

 もう事態は避けられないと諦めた俺は、頭の中を占めている疑問を吐き出す。その観念した姿を見て、宏は得意気に語り始めた。


「お前がこの前解決した『陸のネッシー事件』あるだろ? 彼女はそいつのちょっとした被害者でな。山崎くんに感謝と、興味を持ってるってわけよ」

「陸のネッシー事件? って、アレにそんな名前が付いてたのか……。でも、アレは僕が解決したってもんでもないでしょ」

「いやいや、決め手はお前の名推理だぜ。やっぱり」

「たまたま居合わせただけだし、大したことはしてないんだけどなぁ」

(実際、推理なんてほとんどしてないし)

 宏が例の件で自分のことを買ってくれているのは多少嬉しくもあったが、俺は少し複雑な気持ちだった。

 そのとき、背後から優しめな香水の匂いが漂い、明るい女性の声がした。


「田口くん、はっろー」


 宏に向けられたヤッホーみたいな挨拶に驚いて、俺はベンチからずり落ちそうになっていた尻を正す。宏の顔はニヤついていた。近くまで来ていたのを知りながら、あえて俺に知らせなかったのである。

「こんにちはー、森さん。彼が俺の友達で、例の山崎くんっすわ」

 五指で指して俺を紹介する宏。紹介された俺は座ったままでゆっくりと振り返る。視線の先には、髪を短めのポニーテールにまとめた女性がいた。自然な茶髪と薄ピンクのカーディガンで、柔らかな雰囲気を纏っている。

(確かに。可愛い、な)


「山崎君、はじめまして! 私、森綾子って言います。えっと、田口君から聞いてるかな? 私ね、この前の陸のネッシー事件でちょっと大変な目に遭っちゃっててさ。それで、後から事件を解決してくれたのが山崎君だって聞いてね。その件は、本当に助かりました。ありがとう……!」

 一息に話し切る綾子。俺は立ち上がり、完全に向き直って、言葉少なに挨拶を返す。

「はじめまして……山崎、です。別に、お礼を言われる程のことはしてませんが」

 俺はあえて下の名前を名乗らなかった。


「謙遜しなくてもいいのに。でもなんか、山崎くんって、と結構印象違うね?」

 綾子は自然な笑みをたたえながら、平然と俺の地雷のそばを歩いてみせた。

(名前、知られてたかぁ。にしてもこの子、ナチュラルにちょっと失礼な奴か?)



**********



 俺達三人は、大学内のカフェに移動して世間話に花を咲かせていた。木目調のテーブルを挟み、俺と宏が二対一で綾子と向き合う形である。こういう時、コミュ力の高い宏がはその性能を遺憾無く発揮する。奥手の俺が初対面の女性と話すという状況でも上手いこと会話を繋ぎ、世間話などの他愛ない話の中にもお互いの趣味嗜好を知ることのできる機会を自然と紛れ込ませるのだ。

(宏ありがとう。お前がいてくれて助かったよ)


「おっと、いけね! 山崎、森さん、ワリィな。このあとちょっと野暮用があるのを忘れてたわ。申し訳ねーけど、ちょっちお先に失礼しまーす」


 会話が興に乗り、珍しく他人とのコミュニケーションを楽しみ始めた俺の感謝は瞬間に裏切られた。

 二対一から一対一。だが野郎側のコミュ戦力は半減どころの話ではなかった。去り際、『邪魔者はいなくなるので上手くやれ』と言わんばかに宏が立てた親指を、俺は見逃さなかった。


「あらら、田口君行っちゃったね」

「そうですね」


 流石の俺も、ここでいきなり解散となると雰囲気が良くなかろうと小さなコミュ脳で判断した。それとなく終局に向かわせる手札を探し始める。だが、対面の綾子はなぜか周囲をキョロキョロと見渡し、こんなことを言い出した。


「よしっ。これでようやく、本題に入れるね」

「へっ」

 綾子の目つきがギラリと変わったのを見て、俺の喉から気の抜けた声が出る。

「もしかしたら田口君なら知ってることかもしれないけど、多分山崎君は誰にも話してないことだろうから、二人きりになりたかったんだ」

(なんの、なんの話だ……。俺の秘密をなにか知っているとでも……?)

 

 綾子は俺の目を見て、囁くように告げた。

「君って、超能力が使えるんじゃない?」

「…………」

 綾子の放った特別難しくもない日本語は、理解へと着地することなく俺の脳内をしばらく飛び回った。

 ――キミッテ、チョウノウリョクガツカエルンジャナイ?――。


「はぁ?!」

「しっ。声が大きいよ」

 綾子は口に人差し指を当てて俺に黙秘を促す。

(……なんだこいつ。ヤバい。危険だ)

「じ、冗談だよね? 今、超能力がどうとか聞こえた気がしたけど」

「冗談を言ってる目に見える?」

 身を乗り出す綾子。女の子の顔を正面から見る機会に恵まれてこなかった俺は、思わず目を逸らす。

「いや、意味が分からないよ。なんで僕が」

「この前の、陸のネッシー事件だよ」

(またその話か……。というか、よく躊躇いもなくその名前を連呼できるな)


「アレが解決されたって聞いてから、私、その経緯を色々人づてに調べたの。それで田口君に――――山崎君に繋がったわけなんだけど」

 綾子の話を聞いて、俺は思った。冷静に考えてみると、あの知る人ぞ知るなんとも言えない事件から自分のことを割り出すのは、簡単にできることではない。

「色んな人に詳しく話を聞いていくと、やっぱりおかしいのよ」

「おかしいって……?」

「んーと、具体的に一言で言うのは難しいんだけどね。山崎君が、真相に到達するまでに要した時間とか、その結果明らかにした真相とか。色々想像すると、普通に推理で解決するのは難しいというか」 

 ロダンの考える人っぽいポーズを取りながら、綾子は続ける。

「別に山崎君が真相を明らかにしたってことを疑ってるわけじゃないよ。むしろ信じてる。そう……私は昔から信じてるの。この世には心躍る不思議なことがあるってことを!」


 綾子の語りが徐々に熱を帯びてくる。その瞳は三人でいたときの品のある雰囲気とは打って変わって、珍しい昆虫を見つけた少年のそれだった。

 俺はその勢いに飲まれ、押し黙るしかない。

「だからあの、陸のネッシー事件にも首を突っ込んで、運悪く大変なことになっちゃったんだけど。それもいつの間にか終わってて。実際あの事件自体は不思議な話ではなくて残念だったよ。でも、事件を通りすがりに解決したって人がいるっていう、心躍る話が残ってたんだよね」

「それが……僕」

 止まらない語りに、俺はなんとか合の手を入れる。


「そう。しかも、田口君言ってたよ。山崎君とは小さい頃からの付き合いだけど、こういうことが何度もあったって。それを聞いて私、思ったの」

 考える人の構えを解き、綾子はテーブルに両手をついて俺の目を見た。

「君は超能力が使える。昔から、『真実を視る』ことができてるんじゃないかって――――」


 綾子が一旦語り切り、俺が返す言葉見つけられずにいる数秒。意図せずして無言で見つめ合う男女というシーンが発生する。


「ああ、ご、ゴメンね一方的に話しちゃって! こういうトコ、家族や古い友達からは抑えろってよく言われてるんだけど、久しぶりにワクワクすることに出会えて、テンション上がっちゃって……えへへ」


 我に返ったように照れくさそうに笑う綾子は、第一印象の普通に可愛い女子大生とのギャップで俺の脳を揺らした。超能力やUМAを好む少年のようなマインド。そいつを捨てられずにここまで来て、表面だけ取り繕っていることによるコンプレックスが垣間見えたことで、俺の中の彼女の好感度はむしろ増していた。

(でも、いくつかの違和感とかだけでこの結論に達するなんて、やっぱり普通じゃない)


 お互い目線を外し、仕切り直すかの如くに残りのコーヒーを口に運ぶ。


「まぁ、そんなわけでさ。山崎君は、持ってるんでしょ、そういう超能力チカラを」

「持ってないよ」

 俺は即座に否定する。

「えー、嘘だぁー」

 気を遣って普段押さえている部分をカミングアウトしたこともあって、綾子の声色や喋り方は少し子供っぽくなっていた。

「じゃあさ、これはこれは?」

 言いつつ、綾子は自身の小さなカバンの中をまさぐる。そして握り込んだ拳を俺の前に突き出した。

「この手の中に何が入ってるか、当ててみてよ。山崎君ならできるでしょー?」

 俺は目を細める。

「分からないよ。見えないし」


 綾子の手の中は、空だ。

 なにも握ってはいなかった。

「ふふふ、実はね」

 笑いながら綾子は手を開き、白く綺麗な掌を俺に向けてヒラヒラさせた。

「なにも入っていませんでした〜。見えないっていうのは、ある意味正解。なーんだ。やっぱりじゃない」

 こじつけられた俺は、適当なことを言っておけば良かったと後悔した。

「では第二問」

「これ続くの?!」

「私に兄弟、もしくは姉妹はいるでしょうか?」

「だから、分からないって」

 俺はナイナイと手を降って否定する。

 しかしそんなもので引くような綾子ではなく、その目は闘志に燃えていた。

(仕方……ないなぁ)


 綾子には、兄がいる。

 だが両親が離婚し、綾子は母親に、兄は父親に引き取られており現在では名字も違っていた。だから、これは綾子なりに考えた難問。もし現在の私生活を多少念視できる程度の能力ならば、兄弟はいないと思うかもしれない。思考を読む能力ならばバレバレであるが。ともかく、この第二問には綾子が想定する『俺の真実を視る力』を試す意図があった。

「…………」

 適当な答えを探して俺が沈黙していた時間は、そこまで長くはなかった。が、見たいものしか見えない綾子はそれを都合よく自己解釈する。

「ごめん! 答えづらいよね。私にはお兄ちゃんがいるんだけど、色々あって中学生くらいから別々に暮らしてるんだ。気を使ってくれたんだよね〜。ありがとう」

「そっちかぁ」

(駄目だこいつ……早く何とかしないと……)


「じゃあ次は、そうだなあ」

「ち、ちょっと待ってよ森さん」

 少年の目で第三問に続こうとする綾子に、俺はコミュ症なりに気合で割り込んだ。

「僕は、そもそも超能力なんて使えないんだけどさ」

 その前置きに綾子はぷぅ、と膨れる。

「もしも本当に色々見通せる目を持ってたとしたら、なんというか、その、森さんの知られたくないこと、恥ずかしい部分とかも視てしまうかもしれないんだよ? どうしても僕を超能力者にしたいみたいだけど、それはいいの?」


 これってハラスメントに当たるのだろうかと、言い終わってから俺は焦ってきていた。だがそのリスクを踏んだ価値はあったようで、先ほどまでの綾子の覇気は急速に萎んでいった。

「そっか。本当だ……。もしかして、その、私のアレも知ってるの? 山崎君は」

 綾子は身を震わせる。世の中にそういう超能力が存在すると信じているからこそのリアクションだ。俺はダメ押しとばかりに、綾子の目を凝視する。

 

 綾子の言うアレとは、ここ最近の一番恥ずかしい出来事――――それは、漫画のようなスリルある体験を夢に求めてイメージ強化を行っていたところ、ガチで恐ろしい殺人鬼に追われる明晰夢を見てしまい、夢の中で追い詰められた際に恐怖のあまり失禁し、そのまま現実のベットの上でも――――というものだ。しかも十八歳にもなって、だ。


「もちろん、分からないよ」

 そう言って俺は、綾子を安心させるべく顔を緩めた。ここで変な表情を浮かべようものならあらぬ誤解を受けてしまうかもしれないと、内心ビビりつつ。

「そ、そっか。なら良かった、かも」

「でしょ。特殊な力があったとしても、良いことなんてそんなにないよ、多分」

「ううぅ。でもホントに? 山崎君、ホントになにもそういうのを持ってないの? 過去を見たり、未来を見たり、普通の人じゃ見えないものを見たり」

「そんな神様みたいな力、持ってる方がおかしいよ」

 それを聞いた綾子は、ついにがっくりと肩を落として溜息を吐く。


「はぁ。またやっちゃった。迷惑かけてゴメンね」

(こういうことして玉砕するの、何度目かなんだな)

 その綾子の発言から、自身でも驚くべきことに俺は一抹の寂しさを感じていた。

「驚いたけど、森さんが思った以上に面白い人で、楽しかったよ」

「もしかして馬鹿にしてるー? 言っておくけど私、諦めないからね。本物に会えるまで」

 綾子は俺に向けて拳を突き出す。その目には少年のような輝きが戻っていた。

「本物じゃなくて、なんかその、ゴメン」


 そんなやりとりを経て、俺と綾子の超能力問答は完全に終わりの空気感となった。解散のタイミングを察し、俺達は二人ともそれとなく帰り支度を始める。

(なんとか無事に終わりそうだな)


 だがその裏で、危機は進行してた。

 俺から見えない位置に座っている一人の男子学生。秋には少し不似合いな分厚いコートを羽織ったそいつは、ポケットの中に刃物を隠し持っていて、今まさに凶行に及ぼうとしてしたのである。

 ひどい失恋に、愛犬の死、立て続けに起こった不幸によって日々の積み重なった不満が埃のように舞い上がり、粉塵爆発を起こしていた。そうやって壊れた心は、その男子学生を無敵の人に変えつつあった。

 この恨みつらみをぶつけるのは誰でもいいと考えつつも、そいつのターゲットは目の届く範囲で仲良く談笑するリア充の男女(に見えないこともない)俺と綾子に定まっていた――――。


「山崎くん、あの人」

 俺と違い、その男子学生が見える位置にいる綾子が、不穏なオーラを感じ取って声を上げる。

 俺も振り返り、そいつを視界に捉えた。


 そのとき、奇跡的な偶然が起こる。

 男子学生が機会を伺いながら周りに怪しまれないように自動再生していた動画共有サイトのショート動画。それが、まさに刃物を抜く直前で、死んだ愛犬そっくりの犬が出てくる動画に切り替わったのである。

 『やめてご主人』と今は亡き愛犬(ぴえーる)に引き留められたような気がして、無敵と化しかけていた男子学生は、一撃でその場に崩れ落ちた。


「あの人、なんか泣いてるね」

 立ち上がったと思ったら突然机に突っ伏して泣き始めた男子学生を、綾子は少し心配そうに見る。

「だね。きっと悲しいことがあったんだと思う。そっとしておこう」

 そう言って、俺は席を立つことを勧めた。



**********



「それじゃあ森さん、僕はここで」

 初対面の女子と長時間会話し対人用のゲージが尽きかけていた俺は、外面を取り繕っていられる内に立ち去ろうとした。

「ごめん、最後に一個だけ、質問いいかな」

「え、うん。いいけど」

「山崎君の名前って、どう読むの? 私、名前の漢字は目にしたんだけど、読み方は分からなくて」

(あぁ、そのことか)

 それは綾子からさっき受けた衝撃的な問とは真逆で、俺が人生で一番多く受けてきた質問だった。

「もしかして、そのままオ」

「違うよ」

 俺の名前をそのまま読む。それは俺をからかう者達が面白半分でやってきたことだった。たとえ綾子に悪意がなくとも、俺は続く言葉を遮った。そして、今までに何度かイメージトレーニングをしてきた台詞を、ゆっくりと口にする。

の、名前)

「この名前は――――『人を覆う器の大きさ』と、『価値観多様な社会に流されずに我を通せ』っていう二つの意味を考えて、両親が付けてくれたんだ」


よう。山崎、よう。それが僕の名前の読み方だよ」


 ようは自分の名前が嫌いだった。

 名前を決めた両親のことも、それを止めなかった周りの人間のことも、長い間恨んでいた。

 だが今は、両親への感謝と、この名前であることの自負を少しは持っているのだ。


「山崎、よう――――ヨウ君ね。ふふ、素敵な名前と由来だね。……それじゃ、またねヨウ君!」

 満面の笑みで手を振り、綾子は去っていたった。

(変な女だけど。良い子だなぁ)



**********



 以上が、ようと綾子の馴れ初めである。

 この後二人は一度付き合い、別れて、再びヨリを戻して結婚まですることとなる。

 結構式の席上、ようは新郎新婦が初めて会ったときの超能力問答を引き合いに出し、出会いのきっかけを作った幼馴染に感謝を述べている。


 本当に見えないものを視る力を持っていたのは、紹介者の田口宏氏だった――――と。 



(了)

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僕の名は。 野良ガエル @nora_gaeru

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