第2話 無知の知×2

あれからしばらくれいちゃんと話していくつか分かったことがある。

どうも俺が来たこの世界では大半の存在が能力を持っているらしい。


「私の硬化もそれ。スライムには似つかわしくない能力だと思う。さっきみたいにふとした瞬間発動してしまう事もある。」


 今は解除されているが、先程のれいちゃんの腕は本当に金属みたいにカチカチになっていた。自分の意思では解除出来ない上、硬化している部分は自由に動かせないらしい。


「時間が経てば今みたいに戻る。あと硬いから殴る時に拳を固めると凄く強い。」


 フンッとれいちゃんが硬化した拳を地面に振り下ろすと、大きく地面が陥没する。殴られたら俺位すぐにミンチになるだろうな!!


「すげぇ……!!れいちゃんめっちゃつええじゃん!!」


 フフンと嬉しそうに笑うれいちゃん。最初に会った時はなんか人間離れした感じがしたけど、ものの数分で親しみやすい子になった気がするな。


「ん?となると俺もその能力ってのもってるんかな。そう言えばさっき変なの出てたけど。」


 再び視界の端を意識すると【れい Lv50】と表示されている。その上にはPTってかいてあるけど、PTってなんだ……?


「れいちゃん。PTってなにかわかる?」


「アスカが分からない物は私もわからん。しかしアスカと握手してからモヤモヤが晴れた他にも繋がりみたいな物を感じる。」


「繋がり……?なんだがよくわかんねぇな……って……ん?なんか視界が……。」


 突然視界が調子の悪いテレビみたいになったかと思うと、すぐに治まった。

 するとさっきまでPTと書いてあったところに仲間と表示されていた。


「れいちゃん、PTって仲間って意味らしいわ。俺とれいちゃん仲間なんだって。というか最初っから仲間って書いてくれりゃ良いのにな。」


 不思議そうな表情を浮かべ首を傾げるれいちゃん。かわいい。


「仲間……アスカの能力は私と群れになる能力って事か?」


「野生的な感じだと仲間って群れになるんだ……。うん、でもそんな感じじゃないかな!!わかんないけど!!」


 群れって家族みたいなもんだよな……なんかそれってちょっとえっちだな!!と俺は思った。

 しかし仲間になる能力。これは凄く便利な予感がするぞ!!


「俺のレベルがいくつかわかんねぇけど、れいちゃん50もあるっぽいからな!!50って結構強いだろ!!頼りになるな!!」


 ちなみになんでLvが読めたかって??んなもんゲームしてたらよく見るだろ。昔から色んなRPGやってきたから分かるぜ!!

 ん?ならPTってパーティーか。パーティーって書けばすぐわかったのに、なんでややこしくするかねー。


「まかせろ、アスカは多分貧弱だから私が守ってやる。」


「やべぇ、めっちゃ頼りになるよれいちゃん。てゆーか俺一応勇者っぽいのに直接戦闘能力皆無か……。剣とか握ったら隠れた才能とか出ないかな。」


 でもゲームでこういうモンスターを仲間にして戦うRPGって主人公が戦わないの結構あるよな……。

 スライムとはいえ女の子のれいちゃんに頼りっぱなしはどうかとおもうけどね!!


「ってかそうだよ、ここまで結構歩いたりしたけど全然他のモンスターとかと会わなかったんだよな。

れいちゃんなんか知ってる?この辺あんまりそういうのいないの?」


「ん、少し前までは結構いた。」


 そうなのか、ならなんで今は全然居ないのだろう。

 他のモンスターがどんなのが居るか全然わからないけど、少なくとも野生ではこんな長時間呑気に喋ってたら食い殺されるだろう。


「じゃあなんで今はいないんだろ?みんなどっかに大移動したとか?」


「多分そう。結構な数私が叩き潰したし、逃げたのかも。」


 さらっとれいちゃんがとんでもない事を言う。

Lv50って結構高いから歴戦のスライムかと思ったけど、もしかしてこの子結構やばい……??


「えーっと、なんか事情とかあったの?他のモンスターに襲われたとか?」


「いや、なんか時々全部壊さなきゃって。目に入る物に襲いかかってた。

 アスカに会った時が落ち着いてる時で良かった。アスカに会ってからはなんかずっと落ち着いてるし大丈夫。」


「そうなのか!モヤモヤが晴れたって言ってたし俺の能力ってそう言う効果もあるのかな!

れいちゃんが大丈夫って言ってるなら大丈夫だろうし!!」

 

 しかし、うーん。能力の内容の確認とか出来たらいいんだけど……駄目だ……視界に映ってるやつもれいちゃんの名前しかわかんない。


「そう言えば改めてになっちゃうけど、俺とれいちゃん仲間って事になってるじゃん?多分俺の能力で。

 俺この辺りの事……ってか何もかも全然知らなくてさ。れいちゃんさえ良ければ一緒に居てくれない?」


 改めて手を差し出す。れいちゃんも今度は迷わず手を取ってくれた。


「よろしく。私も何にも知らないから助かる。」



 こうして俺達は正式に仲間になった。この辺に俺より長くいたれいちゃんが仲間になったなら心強い……。


「ごめんれいちゃん、今なんて言った?」


「何も知らないって言った。能力の事とかこの辺で暴れてた事は覚えてるけど、なんでこんな所にいるとか覚えてない。

 というかアスカ、ここどこ?」


 どうやら俺達、迷子が2人になっただけらしい。餓死とかする前に色々みつかるといいね!!

 

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HENTAI勇者と変なモン娘達 有頂 @Utyou

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