第23話 探索者支援協会
「おそい」
その出入り口前で待っていた
声ひっく。
「刻限を指定したのは貴様だろう。いま何時だと思っている」
コイツと別れて三時間と十五分。大目に見てくれとは微妙に言いづらい程度には遅刻。
それもこれも、行き帰り両方とも
「そもそも、どこに行っていた」
「あー」
視線を
ちょっとそこまで自分探しに、みたいな感じで押し通せるだろうか。モラトリアムって人生において割と重要だと思うし。
「ちょっとそこまで自分探しに──」
「あの眼帯女のところだな」
キッショ。
なんで分かるんだよ。
「何しに行っていた」
「……シブヤの連中が使ってたヤクについて調べてもらってた」
こうなっては誤魔化すだけ無駄と判断し、素直に白状。
ヘンなところで
「そうか。どうでもいい」
じゃあ聞くなよ、と軽口を叩くのは
機嫌わっる。
もっとも
「で?」
で、とは一体。
プリーズ会話インザ主語。
「わざわざ集合場所に
その通り。
先日の件で、ちょっと報告と申請に参った次第。
「ほら、さっさと行くぞ」
唯一強化外骨格を
常人なら骨が
「そう怒るなよ……行き先を黙ってたのは謝る」
「別に怒ってない。貴様が昔の女のところで何をしてこようが、私の知ったことではない」
その割には肩プルプル震えてるが。着物の
「……
「うるさい。私は本当に怒ってなど──きゃっ」
自動ドアを通る瞬間、ちょうど中から出て来るところだった人影とぶつかる
よろめいた身体を抱き止め、懐に収める。
「あっ……す、すいません……! ちゃんと前を見て無くて……!」
一方、ぶつかった側──十代半ばほどの少年は、軽く半歩たたらを踏んだだけ。
コイツも
「あの、だ、大丈夫……です、かぁ……?」
謝罪の途中で
初見、それもいきなりだと普通そうなるよな。ちゃんと着付けしろ。せめてサラシくらい巻け。
「……問題無い」
再び深々と頭を下げ、重たげな足取りで去って行く。
「今の奴、なりたてだな」
すれ違い様に鼻を突いた、濃い液化エーテルの匂い。
それに顔色が優れず、声もカスカスだった。
まるで、死ぬほどの苦痛に何時間も叫び続けていたかのように。
「おそらく
望めば誰だって受けることができるし、費用も雀の涙。ゆえに
九割以上、そのまま帰ってこないが。
……
「む」
俺に身を預けている現状に気付き、至近距離から真紅の瞳で睨まれる。
「離せ。気安く触るな。私は怒っているんだ」
そう言いつつも、自分から離れたり押しのけようとはしない。
つーか、やっぱり怒ってるんじゃねぇかよ。
「無理だね」
背中に腕を回したまま、この世で一番綺麗な銀色をした髪へと指を通し、くしけずる。
「──キミが一時期『
エントランスの待合用ソファに座っていた顔見知りの
どういう意味だ、てめぇ。
「そもそも
それに関しちゃ完全な風評被害。
「貴様のやることに
「そこまで目の
「今はそうでも、向こうが隙あらばヨリを戻そうとしてくるのが問題だと言っている!」
「戻すも何も、
「……え……つ、つまり私が最初ということか?」
「あぁ? まあ最初ってか唯一だな」
「…………ふっ……あーっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは!」
「どうした急に」
「これが笑わずにいられるか! てっきり私は……んふふふふっ」
「
まず声を上げてカラカラと、次いで口元を袖で覆いながらクスクスと
ここしばらく暑い日が続いたし、脳みそでも
ともあれコイツの機嫌が直ったところで、用件を済ませるべくカウンターに向かう。
今日も今日とて協会内は
「御用件は?」
今日当たった受付は、眼鏡をかけた同年代くらいの女。
絵に描いたような役所人間で、いっそ好感すら
ゆえにこそ、話が早くて助かる。
「報告と申請」
「ではまず報告からどうぞ」
ポケットに突っ込んであったエーテル測定機を引っ張り出し、卓上へと置く。
記録して置いた数値を表示させると、受付嬢が眼鏡の奥で少しだけ目を細めた。
「ヨツヤゲートのエーテル値がイエローゾーンに入った」
「このまま放置した場合、早ければ一ヶ月以内にスタンピードが発生する」
「では申請とは」
「ああ」
ホント話が早くて助かる。
「ヨツヤゲートに対スタンピードの
今日買ったオモチャの試運転も兼ねさせてもらおう。
何事にも楽しみを見出さなきゃ、こんな世の中やってらんねぇ。
「
さて。今回は何人集まるかね。
帰ったらジルにも伝えておかないとな。
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