憂さ晴らしの日に
雨森アマ
第1話
この春、高校生活二年目に入った朝倉誠一(あさくらせいいち)は、暇そうなそぶりを見せながら放課後、席に座っていたのであった。黒板をながめる、そこは端っこに日付だけが書いてあった。
今年度から同じクラスになった女子に呼ばれていた。朝倉は何も思わず、とりあえず女子の後ろをついて行く。やって来たのは体育館横にあるところで、人目がつかないなんと静かな場所だった。
「なに?」
と、不思議に聞く。その言葉に反応して女子は朝倉に振り向いた。すると手を頭高く上げて勢いよく、朝倉に向けて一発のビンタをした。
「イタッ! なにするんだよ!」
と、朝倉は言って、その衝撃は自分の耳に一瞬、膜を張るような症状を感じた。
「アンタ、名前はなんだっけ?」
「ああ、朝倉だけど……」
「朝倉、そうだったね、忘れていたわ……」
するとふたたび、彼女のビンタを受けた。それも何回も、それでも満足しなかった
らしく、今度は片足で腹に一発を目がけた。
「オェッ……」
と、反動でうしろに下がる。一瞬、胃の中にある物がその衝撃で今にでも出てきそうだった。とりあえず朝倉はそれに耐えた。
すると、どこから来たのか、同学年の三島奈々(みしまなな)が急いでやって来た。三島は抱き着きながら押さえて、彼女を説得していた。
「愛梨さん落ち着いて、これじゃあ、朝倉が死んでしまうよ」
それでも彼女は、まだ満足していなかった。
「愛梨さん、落ち着いて……もう、いいでしょう……」
「これでも、私はまだ、あの時が許せないわ!」
彼女は奈々の言葉を無視して、倒れている朝倉に近寄ると胸ぐらをつかみ、無理矢理にでも立たせた。そして再びビンタを浴びせる。
手のひらではじいた音が、晴れた空の静かな場所で響いていた。良い響きだと、朝倉は頬の痛みを感じながら倒れた。彼女の整った綺麗な顔には、かすかに涙が浮かんでいた。朝倉は一瞬見ていて、どこか美しく何故か自分が清々しい気持ちであった。
「奈々、行こう」
「えっ?」
「ほらぁ、行くわよ」
「うん、わかった……」
二人は校舎へと戻って行き、今は倒れた朝倉だけが残っていた。
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