壊れた世界のドラマツルギー

阿炎快空

第一部

プロローグ

 あんた、「オカルト」は好きかい?


 そもそもは、ラテン語で「秘密」だとか「隠されたもの」なんて意味らしいが——俺が言ってるのは、もっと一般的で俗っぽい意味の「オカルト」だ。


 即ち。

 幽霊、妖怪、超能力、宇宙人、UFO、UMA、黒魔術、オーパーツ——エトセトラ。

 まあ、とにかくそんな感じのやつね。


 俺?

 勿論好きだよ。

 大好きだ。


 つまらない日々のあれこれを忘れさせてくれるそれらを、俺は心の底から愛している。

 ただし——あくまでエンタメの一つとして、だ。


 いくらスターウォーズが好きだからって、あれが実話だと思ってる奴はいないだろ?

 つまりはそういうこと。


 俺にとっての「オカルト」は、アニメやら漫画やらを消費するのと同じで、日常を彩るちょっとしたスパイスに過ぎなかった。

 そう——までは。






 古くから伝わる伝承や、ネットの普及に伴い爆発的に広がった都市伝説。

 それらの中には、決められた手順を踏むことにより、特異な現象を引き起こすことができる、という類のものも多い。


「丑の刻参り」や「こっくりさん」。

「ひとりかくれんぼ」に「異界エレベーター」。


 挙げていけばキリがないが——今回俺が体験した現象の引き金となったのは、そのどれとも異なる、とある恐ろしい「儀式」だった。






 まあ、あまり勿体ぶっても仕方ない。

 そろそろ物語を始めるとしよう。


 運命のあの日——俺は、通っている大学の一室に居た。

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