第2話 龍娘

「は…?」

異世界。

異世界である。

正真正銘の

「いや、いやいやいや」

人間ではない人達が和やかに草原を歩いている。

「いやいやいやいや」

草原。

土。


「ぬああああああんで土がぁ!こーんな糞オブ糞みたいな状況に置かれとるんじゃあ‼︎‼︎」

家に一度戻って農具を取ってくる。


「まずは雑草を駆逐ぅ‼︎‼︎」

「土が可哀想だと思わんのかぁ!」

草を刈り、害虫をどかし、防虫剤を撒く。


─────────────────────


「ふー。やーっと終わったぜい」

爽やかな汗を拭く。

「じゃあこの土らを守った勇者として私は去ると」

もう2度とここに来るつもりはない。

何故ならもうこの国(土)は安全だからな!

「ふはははははは‼︎‼︎

さらば異世界!

さらば愛しき土!」

そう言って扉を出て閉めようとしたら


「ぬああああ!

何でワシの畑がこーんな土まみれに!」

悲鳴が聞こえる。

気になってもう一度扉の中に入ってしまう。

「可哀想に!ワシのフィラーヌ(にんじん)!ああ!ドルーチャ(ジャガイモ)まで!

ぎゃあああああ‼︎ハラープ(唐辛子)ぅ!誰がこんなことしたんじゃあ!許さぬ…許さぬぞ…」

龍みたいなの耳が生えて目が切れ目の子がいた。

赤い頭髪、黄色い眼球。

うん、もう龍だな。こいつ。

「ワシが丹精込めて水をやり!日光に当て!育てたのにぃぃぃぃ‼︎‼︎」

「正気かお前」

気がついたら彼女の後ろに立っていた。


「まず土のしつが悪いんだよ。

そんで配置がゴミカス。

日光当てなきゃいけない野菜が日陰に入ってどうするねん。

あと草。これはいけない。本当にダメ。カスカスのカス。底辺。ダメだねこれは。

てか畑だったんだ。全部枯れてるし…」


ふと横を見ると龍娘がすごく目をうるうるさせてた。


「だあああああああってぇ!ワシ!悪くないもん!しょうがないじゃん!知らないんだから!てかお前が壊したんかよ!」


「まあそうだよね。無知な人が畑やったらこうなる典型的なやつだよ」


「うわあああああああ嫌い!あっちいけぇ!」


チッ。慰めてやっただろうが。


「まあだからぁ」


土を掘る。

家から持ってきた種を放り込む。


「こうやってぇ」

肥料をやったり水をあげたり

「こうしてぇ」

他の苗も植える。

「こうすんの」

完成。

完璧な畑。


「おおおおお!すごいぞ!

お前!名はなんという!」


「…あー琴音」


「コトネじゃな!

じゃ、そなた、ワシの家に居候して畑を耕すのじゃあ!」


「やだ」


「はっ?」

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