参拝の代償
あるうだつの上がらない会社員のお話。
運気アップの噂を聞き、一日に何度も神社を巡るようになった。
小さな町の神社から、有名な寺社まで、短時間で十社以上を参拝する日もある。
最初は気分も上がり、仕事もうまくいくように感じた。
「神様、ありがとう」と心の中でつぶやき、毎回礼を尽くす。
同僚から「なんでそんなに忙しそうなのに神頼み?」と笑われても、
本人はいたって真剣だ。
しかし、ある日、違和感が生じる。
夢の中で神様の怒った顔が浮かび、飛び起きると背筋に冷たいものが走る。
通勤途中、鳥居の影が歪み、目には見えない力に押される感覚に襲われる。
気のせいだろうと思い、また神社を巡っていると、
ふと手を合わせた瞬間、耳元で低く囁く声がした。
「お前は何でも良いのか?……」
その日から、参拝するたびに小さな不幸が積み重なる。
傘が壊れ、足元で石が転がり、財布を落とす。
同僚や友人も「あれ、運気アップどころじゃないね」と半笑いで言う始末。
神頼みどころか、周囲からの心配と軽い嘲笑まで増えてしまったのだ。
誰も原因を突き止められず、主人公はじわじわと日常を蝕まれる。
「あれ、これって…運気アップの副作用?」
いや、神様の怒りのほうがはるかにリアルで、笑えない。
――短期間に複数の神社をめぐるのは、思わぬ事態を招くかもしれません。
小さな運気アップの噂に惑わされず、心静かに一社ずつ参拝するのが、案外安全で、世間からも笑われずに済む方法なのです。
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