夏の日の 1982
@neko_ai
第1話 雲の上で乾杯 !
1982年8月15日
とうとうその時がきた。明日、私はロサンゼルスに出発する。
計画を立てた時からずーっと続いている期待と不安は、ピークに達している。いや、交互にやってきていた期待と不安、今は不安だけになった気がする。
生まれて初めて日本の外に出る。これはともかく、20年前に去っていった恋人のラウルと再会する、これが重要な目的で、航空便で綿密に計画を立てたが、さて、どうなるのか想像がつかない。
どういう風に私たちは逢うのだろう。その時、私は?いや私を見た彼はどう感じるだろうか。考え始めると不安は怯えに変わった。洗面所の鏡に自分の顔をそっと写してみる。私の顔はさしたる変化もなく、正常に見えているが・・・
友達のヨシが同行することになったので、いくらかは心強いが、誰かと一緒というのも私にとっては、不安の一つになるのも確かだ。
二ヶ月前にメキシコシティに4日、ロサンゼルスに4日のツアーに申し込みを終えていた。
到着の夜、メキシコシティのラウルが泊まるホテルで、私は彼と再会する予定になっている。
冷蔵庫を空っぽにして、部屋の掃除もざっと済ませた。
13歳になる私の息子の世話は、近くに住む母に頼んだ。
ほーっと一息。洗濯機を回しながら、水割りを作って飲む。そしてシャワーを浴びて、後は眠るだけ。
眠れるかなー
今夜、何か起きたらどうしよう。地震とか、火事とか。
そうだ、現金とパスポートを入れたバッグをベッドのわきに置いて眠ろう。いざ!という時、それを掴んで逃げること。自分に言い聞かす。
1982年8月16日
午後8時、ロサンゼルスに向かって、私は友達のヨシと共にパンナムのジャンボ機で成田を飛び立った。10時間のフライトの後、ロサンゼルス空港に無事着陸した。ロサンゼルスタイム午後2時、日付はまだ16日だ。
初めてのジャンボ機、初めての長いフライトで、すっかりむくんだ足にサンダルをつっかけて私は空港に降り立った。乗客は列を作りゆっくりと前に進む。突然パット明るいところに出た。思わず上を見上げる、切り取ったようにそこには真っ青な空があった。カリフォルニアの空だー!アメリカだー! 心が叫んだ。
入国審査は、パスポート、その他の書類を手に、二列に並んで待つ。そして一段高いところに座る入国審査管とひとりづつ相対するのだ。英語で言わなくてはいけないらしい。入国の興奮だけではなく、ドキドキしてきた。番が来るまでに言うべきことを頭の中でまとめる。
「I’m going to Mexico City right now ,I will come back Los Angeles in fore days 」
聞いていた審査官は「うむ」と頷き、私のパスポートに、ポンとスタンプを押した。 入国完了 !!
ベルトに乗って出てきたトランクを受け取り、次のベルトに持って行って乗せると、私たちはショルダーバッグだけを持って出口へと向かった。
エレベーターに乗ったり、細い通路をくねくねと歩く、なぜか私たちの前後に誰もいなくなっている。不安を感じながら歩いていく、と突然、広いところに出た。やっと出口だ。
出迎えの人たちの顔がずらーっと並んでこちらを向いている。知っている顔があるはずがなく、ヨシと私はジェットツアーのマークを探した。
そして、動くベルトの前で辛抱強く待ち、自分の荷物を受け取り、指定されていた掲示板の前に行った。
ツアーの仲間は若い人たちが8人すでにいて、私とヨシ全部で10人。
出迎え人のカタカナの名前を胸に付けた太った男性に導かれて、私たちは荷物をもって建物の外に出た。たちまち心地よい乾いた空気に全身が包まれた。降りそそぐ太陽はサングラスを突き抜けて、ストレートに私の網膜を直撃してきた。思わず目を細める。
列をなして並ぶヤシの木は、抜けるような青い空を突き上げるように伸びている。まるで、絵画のような光景だ。これぞ、カリフォルニア! 最高!
私は思い切り深呼吸をする。
「飛行機の到着が遅れましたので、予定のレストランでのランチが無理になりました。このままメヒカーナの乗り場に直行します。ご了承ください」出迎え人の声だ。えっ!あらー、残念!予定にあるアメリカ最初のランチがなくなってしまった。
私たちは間もなくやってきたバスに乗り込み、腰を掛ける間もなく、5分ほどでメヒカーナの乗り場に到着した。出迎え人がカウンターで搭乗の手続きをしている間、外国人ばかりが行きかう中で、みんなで周囲を見回す余裕もなく一塊になって待っていた。
まもなく戻ってきた男性は私たち一人一人に搭乗券を配った。
ここからは、初めて顔を合わせた私たち10人だけでメキシコに向かう。
荷物検査を終え、わたしたちはゲートに入った。待合室で搭乗時間まで待つのである。みんなばらばらに座ったようだった。
私とヨシはトイレに向かった。初めて体験するアメリカのトイレは、ドアの上と左右の壁、足元がかなり開いていて、落ち着かないまま用を済ませた。日本のトイレの個室とはかなり違う。慣れるだろうか。
待合室に戻ってベンチに座り、さて、一服しようと、彼女と私は煙草を取り出し火をつけた。
私はフーっと煙を吐き、ずいーっと待合室の中を見回す。一人の男性が私の前をゆっくりと通り過ぎるところだ。何気に上を見上げ、その人の横顔に目がいった。
ええっ! あー! ラウル !?ドックン 心臓が大きくはねた。慌てた私は目をそらして、下を向く。煙草を消さなくっちゃ、と焦った。灰皿は確か彼女の後ろにあったはず。私は体をそらし腕を伸ばし、灰皿に煙草を突っ込む。
座り直して正面を向き、私は下を向いたまま言葉を発した。
「いた!居た!来た!」「誰が ?」左からヨシの声がした。
「彼よ。ラウル 」私は答えたが、本当にラウルだろうか。彼に会うのは今夜、メキシコのはずだ。
私はゆっくりと右の方へ首を回した。さっきの男性が椅子に腰を下ろし、ぴたっと私を見ている。何ということだ。もう目をそらすわけにはいかない。
5メートルほどの距離があると思うが、彼も私を認めただろうか。
ウアーッ!!
こんなハプニングってある? どうする? 慌てふためく私。オタオタ考えている頭より先に身体が反応した。
私は両手を前に突き出し、彼を指さして「あーっ!」叫びながら立ち上がったのだ。そのまま一歩二歩前に踏み出す。彼も立ち上がり両手を前に突き出しこちらに向かってくる。私の手は彼の手に届いて縋りつくようにつかまっていた。
「Cold hands 」何か言わなくちゃ、出た言葉がこれだった。
ラウルの手を離さず何歩か後ろに下がり、並んで椅子に座った。私の目の真ん前30センチの近さに彼の顔がある。私はまじまじとその顔を凝視する。20年前とさほど変わってはいない。うん、ラウルだ。
「Your look not change ・・・」小さな声で私は言った。
「ここにはいつ来たの?もう5回は見に来たよ」彼がしゃべる英語を、そんな意味だなーと私の耳は捉えながら、目は彼の顔を凝視し続けている。グリーングレーの透き通る瞳、私の記憶のままだ。でも口のわきにほくろ、あった?
「I’m so surprize meet you here ・・・」
「Why ? Yuko it very simple あなたがくれたスケジュールを見て私のを変更する、簡単だよ」ラウルはこともなげに言う。
「ほらー、紹介してよ」左の方からヨシの声が聞こえたが、私はラウルから目を離すことができない。彼女を無視してしまった。
「How do you do ? ・・・」私を飛び越し彼女は自己紹介をしたらしい。同じ挨拶の言葉を言っているラウルの唇を、私はひたすら見つめていた。
「Our airplane got late here so・・・」英語で話すには考えなくてはならない。なのに私の頭は痺れたように後の言葉が出てこない。完全に私はアガってしまっている。
ラウルとヨシは何か話していたようだ。周囲の人たちがざわざわと立ち上がり並び始めるまで、私は呆然としたまま座っていた。
ようやく私も立ち上がりふらふらとラウルと並んで歩き出す。
「座席は何番?」ラウルがヨシに訊いている。
「ええと、何番かしら」彼女がバッグから搭乗券を取り出した。
「あなたの席と私のを変えてくれませんか?」ラウルがヨシに訊いたが、OKという彼女の返事を待たずに、彼の手が素早く動いた。次の瞬間さっと自分の搭乗券と取り換えてしまった。何という早業!
そんな 強引すぎる! 彼女に悪い。私はそう思ったが言葉になって出てこない。
ヨシはびっくりしたのか代わりに持たされた搭乗券を手に握り、啞然としている。
「わるいなあ~」と言った私の声は間が抜けていた。
私たちはメキシコ行きの飛行機に乗り込んだ。ボーイング727。通路を挟んで両側に3人ずつのシートが並んでいる。チケットを手に後方に進んでいくと、ヨシの席が先に見つかり、私とラウルの席はその10列位後ろだった。
すでに座っている彼女のわきを通るとき、「悪いな~ 」私はまたも気の利かないセリフを呟いた。彼女は無言の硬い表情でちらりと私を見ただけだ。隣にはメキシカンらしい男性が二人座っていた。
私はラウルの強引さに抗議するすべもなく、その気もないまま、あれよあれよとことは進み気がついたら、窓際の席に座っていた。
ラウルは真ん中、通路側にはメキシコ人と思われる中年の女性がいた。これでいいの? よかったのかな? まだおろおろと考えている私。何という思い切りのなさ。ラウルの背中越しにこちらを向いた女性と視線がぶつかり、化粧気のない大きな目がニコッと私に微笑んだ。つり込まれて、私も微笑み返す。
ラウルと女性はスペイン語で何か話していた。優しそうに見えるこの人なら、話せば席を取り換えてくれたかも、と思うが、しかし、
「彼女を驚かせたね・・・でも仕方がなかった。三人一緒には座れなかった」
後になってラウルはそう言っていたが、おそらく頼もうなどと思っていなかったのだろうと私は思う。
飛行機はすでにロスアンゼルスの空港を飛び立っていた。軽やかなエンジンの音。窓の外には抜けるような青い空に白い雲が浮かんでいる。
シートに並んで座るラウルと私。夢のような4時間の旅が始まっていた。
メキシコ人のスチュワーデスが機内食を配り始めた。ちっとも空腹を感じていないが、昼食がまだだったのを思い出す。
「Chicken or Beef ? 」と聞かれ、ラウルも私もチキンを選んだ。そして、ラウルは特別に赤のワインをオーダーしたのだ。ラウルと私は大空の上、飛行機の上で、赤ワインが入ったプラスチックのグラスとグラスをカチリ!「サルー!!」 乾杯 !
「Sleep Yuko ,眠るといいよ」ラウルが優しく言う。「Yes 」私は頷き目を閉じるが眠れそうではない。目だけがしんわりとしていて、頭の芯は少しも眠気を感じていない。
寝不足のひどい目をしていると思い、私はサングラスを外せないでいる。
私たちはぽつぽつと話をした。「うん、うん、そう」と頷く私、頭はフル回転で英文作成をしているはずだが、実際に出てくる言葉はほんの少しで、貧弱な私の英語は喉で止まってしまって、頷いているばかり。
「Yuko 変わらないね、いつもそうやって、うんうんって」ラウルは私の真似をして楽しそうに笑う。
硬い弾力を感じるラウルの肩に私は頭を預け目を閉じた。一番記憶に残るあなたの姿は、店のドアをさーっと勢い良く外側に開いて、店に足を踏み入れまさに入ってこようとしている瞬間のあなたなの。スポットに浮かび上がるジオラマのように、あなたの姿はジオラマになって、ずっと私の脳裏に固定されている。
「あのね、Raul、夢ではないわね」言いたくて、彼の耳に口を寄せると、彼が首を傾けたので「チュッ!」唇が彼のほほにぶつかり、照れ笑いする私にラウルが言った。
「エアポートで会った時、キスをしたかったよ、Yuko あなたはやっぱり恥ずかしがり屋だね」
私もそんなふうに想像していた。私達は再開した瞬間にしっかりと抱き合い、熱いキスを交わすだろうと。
彼の現れ方はあまりに唐突で、そんな想像はどこかに吹っ飛び、あれほど私は呆然としてしまい、いまだ夢見心地でいる。
「まもなく、メキシコシティに到着いたします」スペイン語とスペイン語なまりの英語が機内に流れた。
「Look ,Yuko ! 」窓の外を見ていたラウルの声がした。
「Wow !」下界へ目を向けた私は歓声を上げていた。空から見る地上は、見渡す限り一面にキラキラと輝く宝石の海が広がり、飛行機は宝石の海をゆっくりと滑るように進む帆船のようだ。メキシコシティが私たちを歓迎している。
飛行機は無事に空港に着陸した。
出口方向に向かいながら、私はヨシの姿をさがした。荷物が出てくるところで見つかり近づいたが、彼女は顔を背け私を見ようとはしない。今更説明のしようもないし、謝りようもない。
この旅行を計画したとき、「彼と再開するのよ、20年ぶりに、しっかり見てね」
「うん、分かった」と答えてくれたはずだったのだが・・・一日早い再会劇と、アッという間のチケット交換は、すっかり彼女を面食らわせ心情を害してしまったのだ。今、友情を期待する方が無理かもしれない。しかし出だしからこれではあとが心配になってきた。が、私はラウルの前では平静を装う事にした。
メキシコ人の運転手と小型のバスが空港の外に出た私たち10人を待っていた。
出迎え人は40歳ぐらいの中肉中背、細面の田中さんという男性だ。
顔を合わせたメンバーは、高校生二人、20代半ばの女性二人、若い夫婦、一人旅の男性が二人、そして私たちである。
「Yuko、バスに私も乗せてもらえないだろうか、訊いてほしい」とラウルが言う。ホテルまでどのくらいの距離なのか、確かにタクシーはもったいない気がする。田中さんは今会ったばかりだし、ラウルは外国人だし、私はあまり気が進まなかったが、田中さんに訊いてみた。
「皆さんが支払っているバスですから、皆さんに訊いてください」当然だがきわめて事務的な田中さんの返事だった。
メンバー全員が初対面だ。みんなに話すのは少々勇気がいる。バスのステップに、私は足を乗せ、すでに乗り込んでいる皆を見回して声を出した。
「すみませ~ん、一人乗せてもらっていいでしょうか?」返事がない。聞こえているはずなのでそのまま待った。すると、
「いいんじゃないですか、どうせ空いているんだから」一人旅の男性が返事をしてくれた。
「ラウル、O.Kよ」そう告げて、私はバスに乗りヨシと並んでドライバーの後ろに腰を下ろした。私たちの後ろのシートに座ったラウルが
「Yuko!」私を呼んだ。
「No」小さく言って私はヨシの隣から席を立たなかった。
バスは夜のメキシコシティを40分も走っただろうか、私達はホテルアラメダに到着した。時計は10時30分を指している。到着は9時のはずでかなりの遅れだ、と思ったら、メキシコは1時間の時差があるそうで、すでに時刻は11時30分になっていたのだ。
ロビーのソファーに田中さんを囲んで皆が座った。深夜のロビーにあまり人の姿はないが、吹き抜けの階上からは、ざわざわと大勢の人の話し声や音楽が聞こえてくる。
部屋割りや、細かな注意に30分くらいかかって、私達はルームキーを受け取った。ラウルは自身が宿泊するホテルサンフランシスコに行って、チェックインを済ませて戻り、後ろに座って待っていてくれた。
私とヨシの部屋は525号室。ロビーで待つというラウルを残して、私達はエレベーターで5階に上がった。
「高い階じゃなくてよかったー」高所恐怖症のヨシが言う。私もあまり高い階は好きではない。
ドアを開けると、リビング、そこから廊下につながり、右にクローゼット、浴室、そしてツインのベッドルーム。豪華ではないが質素でもない、まずまずの部屋でホッとする。
ロビーで待っているラウルが私は気がかりで、部屋に彼女を一人にするのも気になったが、バスルームでそそくさと手を洗い、
「ちょっと、行ってくる、1時間で戻る」言い残して部屋を出た。カタカタと揺れるエレベーターで下に降りた。ドアが開くと、ラウルは正面の椅子にすでに座っていた。
「Shall we go upstairs ? 」ラウルの申し出に「Sure 」私は答えて彼の腕に私の腕を絡ませ歩き出す。
そうだ!さっきロビーにいる時、上から聞こえてきたのはラテンの
“ラ マラゲーニャ”だ。
上階にはナイトクラブがあるらしい。赤い絨毯の螺旋階段を登っていくと、すぐクラブの入り口だった。ドアの外までこぼれ出てくる、ものすごいボリュームの歌声に圧倒されて、私と彼は立ち止まり、薄暗いクラブの中を覗き見た。
スポットライトに浮かび上がるステージで、茶色のコスチュームを着た6人の男たちが楽器を演奏しながら歌っている。
ウエイターに案内されて、ステージを回り込んだ席に私たちは座った。ステージを見ると、3人がこちらを向いて耳をつんざくようなボリュームでラテンの歌を歌っている。もうすでに私は音に酔ってしまいそうだ。
ウエイターが床に膝をついてオーダーを待っていた。
「What would you like Yuko ? whisky or beer ? 」
「Well I ‘d like whisky ・・・and soda please ? 」ソーダ割りって私言った? 水割りが最近ははやりだが、ここではだんぜんハイボールが店の雰囲気にぴったりだ。
私のまだるっこい話し方、頭で組み立ててからやっと口に出てくる拙い英語にラウルは辛抱強く耳を傾けてくれる。私はたちまち考えるのに疲れてしまった。
目は眠いのを通り越して、ただ見開いているだけになり、身体はふわふわと頼りなく、ボケーっと座り、ラウルに手を握られ歌声の中にすっぽりと埋まっていた。
ハイボールのお代わりをしたが、特に変化もなく、飛行場からずーっと酔った状態はさめやらず、もはや、現実なのか、夢なのか。
「Can I be with you tonight Yuko ? 」耳元でラウルのささやく声が聞こえた。
ああ、だめだ、私は気を失いそうなくらいくたくただ。
「Sorry Raul , I need sleep tonight 」ただ、一緒に居たいだけだよという彼に、 明日はあなたと一緒よ。といい、どうにか納得してもらう。
私たちはクラブを出てエレベーターに乗った。5階へと上るエレベーターの中で私は彼の腕の中に取り込まれて、再会最初の熱いキスを交わす。そして、人影のない廊下でkiss and kiss 。
「Shall we take a breakfast ? 」「Sure it ‘ s alright Raul 」朝食の約束をして、寂しげに私を見つめる彼を廊下に残して、小走りに部屋に帰り着いた。
ながいながい一日が、二日分の一日がやっと終わろうとしていた。
私はシャワーを浴びてベッドに横になった。もう眠くて眠くてたまらない。
と、突然、疲れすぎて停止していたはずの ” 思考 ” が、頭が、動き出した。目は眠いのに、次から次から考えが押し寄せ、狭い頭からあふれ出し、流れを作って、私の周りを渦を巻いて回っている。溺れながらどうにか眠りに落ちたらしい。
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