町長との面談
夕刻。
一日の出来事を精算して一日を締めくくる業務を行う中、訪問者が訪れる。
町長は執務室で金庫を閉め、それにあたる。
「お待たせしても主訳ない、不知火殿。なんでもうちの娘まで相手をしていただいたようで、これからの話もしやすい。今日はよろしく頼む。」
客室の長机の主席に町長は座る。
「早速ですが今回のお話はこの町の開発ということでよろしいですか?」
不知火も長机の端の席に着く。
朱莉はドアの近くで自分の発言するタイミングを探していた。
「お帰りなさいませ、お嬢様。これから食事の準備を始めますので、体を洗ってきてはいかがですか?」
父の秘書をしている詩織が朱莉を退室するように促す。
詩織は凛としていて、その言葉にも従いそうになる。
髪を頭の後ろで結う髪型に黒のスーツはいつも乱れはない。
「私も町の未来が気になるの。代々この地を守って来た家の暴走は防がなきゃ。」
朱莉は嫌味も含めて返した。
「・・・かしこまりました。」
詩織は朱莉に一礼すると来客用のお茶を持ち、不知火のもとに向かう。
不知火に一礼し、お茶を入れると、町長の後ろに立つ。
町長も話を続ける。
「そうとも。代替わりを見据えて、周りの村々も自治権を競うようになってきている。ここで我が町はそれを一まとめにして、新しい自治区を開きたいのだ。」
不知火は朱莉の婚姻の理由を悟った。
「自治権を競うということは、近隣は衝突や膠着状態にあるということですか?」
「その通り。若手当主の手腕が問われているのだ。娘からも聞いているかもしれないが、有力当主に娘を預けたいと思っている。開発計画は今のうちに練らなくてはこちらが上に立てない。そこで君には調査や情報収集を頼みたい。」
「承知しました。毎週一回の報告という頻度でいかがですか?」
「これは頼もしい。近隣と言っても村々は転々としていて広いぞ。」
「私はこの通り浮浪の身です。なにかあってもクライアントの身には影響はでないでしょう。」
「信用しよう。報酬は何がお望みだ?」
「報告の度に賃金をいただきたい。食事や宿泊の手配はそれで済ませます。契約金としては三日分の生活費相当の賃金をいただきたい。」
「わかった。詩織、試算しておいてくれ。それから長旅でお疲れだろうから、空室を一室、彼に渡してくれ。」
「かしこまりました。」
「契約は明日の朝、改めて行おう。気持ちばかりだが、夕食を用意しよう。今日は旅の疲れを癒してくれ。」
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