疑似デート 前半

―ショッピングモール―


「おはよう。」


「おはよう・・」


「どうしたのじっと見て。私、そんな変な格好してる」


「いや・・ご馳走様です!」


「・・・殴って良い?」


「なんで!?」


「ほんっとにデリカシーないんだから。私はともかく、デートの時には冗談でも言ってはダメよ。」


「はい・・」


「・・今日はあなたの場馴れの為に敢えてこんな服装にしたけど・・」

ズキッ


「感謝しかない。」


「女の子は男の視線に敏感だから、チラチラ見てたら嫌われるわよ。」


「え!?」


「そんな事は誰も教えてくれないでしょ?だから気をつけなさいって言ってるの。」


「深く心に刻みつけておきます。」


「宜しい。で、これからどうするの?」


「俺と行きたい所ないか?」


「私に聞くなっ。それ位は予めプラン立てときなさいよ!」


「俺の行きたいを一方的に押し付ける訳にはいかないだろ?それは一緒に決めね?」


「相手を喜ばす為に合わせるのがダメだとは言わない。けど、ある程度は引っ張ってあげなきゃ・・いざって時の頼り甲斐があるか否かの判断に関わるわよ?」


「そんなもんか・・?」


「オレオレ系もダメだけどね。」


「そりゃ、な。」


「・・好きな人、いるんでしょ?」

ズキッ


「あぁ・・目の前にな(小声)」


「なら頑張らなきゃ。まぁ私も大した事言えないけど、ね。」


「そんな事は・・」


「今日は・・とりあえず貴方が私を連れていきたい所に連れてって。後はお茶しない?」


「おっけ。」


「ショッピングモールだから選択肢は限られてるけど・・私を喜ばす為に何処に連れてってくれるのかな?」

ムニュっ


「お!?おいっ!!」


「照れちゃって可愛いわね。疑似とはいえデートだから・・腕に抱きつく位はしてあげるわよ。」


「嬉し恥ずかし・・」


「その分、今日はお財布よろしくねっ。」


「なんだそりゃ!?」


「残念でしたっ。」

ズキッ


「・・なぁ、もしかして香水つけてる?」


「へ・・気付いたの?キツいと香害なるから軽くにしたのに・・よく分かったわね。」


「微かにだが・・どうしたんだ?今までこんな事無かっただろ。」


「・・・あ・・暑いからよ。こんな人が沢山の所行くなら、女の子は気にするわよ。」


「そういう事か・・」


「さっさと行きましょ!道案内、よろしくね。」


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


「・・・・あんたねぇ・・・」


「なんだよ。」


「何でデートの行先がゲーセンなのよ!馬鹿じゃないの!?馬鹿にしてるの??何の為に私が服装を頑張ったか分からないじゃない・・」


「どうどう!!」


「私は馬かぁ!!」


「とりあえず話を聞くだけは聞いてくれ。」


「・・聞くだけは聞いてあげるわ。」


「お前、UFOキャッチャーで欲しいのあるんだろ。」


「確かにフリマに出てるの見て、友達には欲しいとは言ったわよ。」


「教室中に響く声で、な。」


「・・そうね、あんな声出したし、否応なく聞こえるわよね・・ごめんなさい。」


「それを取ってプレゼントしてやる。だからここに来たかったんだ。」


「本気?」


「あぁ・・」


「本当に取れたら・・」


「もう貰った。」


「へ?」


「さっき腕に抱きついてくれだだろ。」


「いや、あれはノーカンでしょ!?」


「そこは曖昧にしたくない。」


「・・分かった。じゃ、必ず取ってよ。取れなかったら腕に抱きつく前まで時間遡ってナシにして貰うからね。」


「任された!」


チャリン


「頼むわよって・・なんか・・目が据わってない?」


「悪ぃ、黙っててくれ。」


「あ・・ごめん・・」

ドキッ


ウィーン・・


「へ?なんでそこ狙うの?重心は全然違うじゃない!」


「よし、狙い通りっ!」


「なにガッツポーズしてるのよ。取れてないじゃない。」


「まぁ見てろ。」


「へ?」


チャリン


ウィーン・・


「ここだ!」


「また変な所って・・え!何それ!!」


コロコロコロコロ・・ガコンっ


「ウソ・・釣り上げるんでなくて転がしてって・・」


「さっきは転がる様に向きを変えたんだ。そして転がしたって訳。ほれ。」


「あ・・ありがとう・・大事にするね。」

ツー・・


「ちょ・・どうした!?」


「え!?あ・・ごめん、どうしたんだろ、私・・」


「ハンカチ!使え!!」


「ご・・ごめんね、びっくりさせて。」


「とりあえず・・座らないか?」


「うん・・」

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