第23話 後日譚

事件から数日が経ち、ようやく私たちのグループは落ち着きを取り戻していた。

けれど胸の奥にはまだ、あの日の緊張と熱が残っている。


リハーサルを終えた後、私は佐伯くんに声をかけた。

「……あの、佐伯くん。この前はありがとう」


彼は振り返り、少しだけ照れた笑みを浮かべた。

「いやいや、僕なんて大したことしてないよ」


「そんなことないって、亜久屋さんに立ち向かってくれたじゃん。

小さい頃は泣き虫だったのに」


すると彼は小さく首を振って、柔らかく笑う。

「……もう、、そんな昔のこと掘り返さないでよ。

あとさ、やっぱり一番大きかったのは篠宮だよ。僕なんかより、ずっと落ち着いて動いてた。最初から、彼の読みが全部当たってたんだ」


「……そうだね」

私は小さく頷いた。


正直、佐伯くんの言葉に異論はなかった。

あの日、篠宮さんの存在がどれほど心強かったか。

まるで何歩も先を見ているように冷静で、時に強引なくらいに私を守ろうとしてくれた。


学生時代の私は、彼のそんな一面を「嫌な人」としか受け取れなかった。

けれど今は違う。

本当はずっと、彼の行動を正しく評価していた。

ただそれを認める勇気が、自分に足りなかっただけなんだ。


ふと視線を向けると、篠宮さんがスタッフと話している姿が見えた。

不器用で、ときに棘のある言葉を吐く人。

でも、その裏にある行動はいつも真っ直ぐで、揺るがない。


胸が熱くなる。

気づけば、自然と名前がこぼれていた。

「……篠宮さん」


その瞬間、彼がこちらに気づき、目が合った。

わずかに笑ったその表情に、心臓が跳ねる。


佐伯くんの優しさも、確かに支えだった。

でも、私の心が惹かれているのは――ずっと、篠宮さんの方だった。




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