第22話 カワル
「ねぇ、宮園さん」
背後からかけられた甘い声。
私は振り返る。
そこに立つのは、同じグループの亜久屋A子。
無理に作った笑みが、どこか冷たく見えた。
「ごめーん、あなたの制服、間違えて別の部屋に置いちゃったかも」
「そう」
短く返事をして、私は指定された部屋へ向かった。
分かっていた。
この先に何が待っているのか。
──篠宮くんと立てた作戦通り。
けれど、足は自然と震えていた。
心臓が早鐘のように鳴る。
本当にうまくいくのだろうか。
このまま、亜久屋さんが騙されて
当初の手筈通りに動いてくれるだろうか?
扉を開ける。
そこには“待ち構えているはずの男”がいた。
けれど彼は動かない。
代わりに、私へ向けて小さく頷いてくれた。
私は作戦通り、言葉を口にした。
「──篠宮さん、バッチリです」
◇
「今よ!」
亜久屋の叫びが響く。
だが男は動かない。
宮園が落ち着いた声で合図を口にする。
その瞬間、僕──佐伯は前に出た。
「亜久屋さん……もう、やめてください!」
亜久屋の目が驚きに揺れる。
「誰……?あんた、私の邪魔したの?」
亜久屋がすっと無表情になって僕にとう
「違う。僕は……ただしに来たんです」
震える声で、それでも必死に言葉を重ねる。
「努力が報われなかった、立場を奪われた
……悔しいのは分かります。
その悔しさの一部は僕の所為でもあります。
でも、だからって宮園を壊そうとするなんて
僕が許さない!」
「うるさい!あんたに何が分かるの!」
亜久屋は机を叩き、鬼気迫る声をあげる。
正直、足は震えていた。
押されている──そう感じた。
でも、それでも逃げたくはなかった。
「僕は……宮園を守りたい。 僕の知らない所で、これ以上なにも壊させないために!」
必死に叫ぶ僕を、亜久屋は冷笑でねじ伏せるように見下ろした。
「甘いわ。お前に何ができるのよ」
いいや、できる。
だって篠宮くんがついているから。
そう思った時。
その瞬間、ドアが勢いよく開いた。
「もちろん、できるとも!」
驚いて振り返ると、そこには篠宮くん。
その篠宮くんの隣にはもう1人男性が立っていた。
その男性の厳しい目が亜久屋を射抜く。
「亜久屋……全部聞かせてもらった」
「しゃ、社長……?」
A子は一瞬怯んだが、すぐにかぶりを振って叫ぶ。
「嘘です!この人たちが仕組んだ罠なんです!私は何も──」
だが、その声をかき消すように、篠宮が前へ進み出た。
いつも穏やかな彼が、珍しく強い目をしていた。
「観念しろ。計画を練っていた時の会話の録音。他にもチャットの履歴
全ての証拠が君の
「なんなのよ……お前……」
亜久屋は絶句し、足をふらつかせた。
社長が低い声で告げる。
「亜久屋。もう言い逃れはできん。観念しろ」
亜久屋は震える手で顔を覆い、その場に崩れ落ちた。
「……どうして、こんな……」
嗚咽混じりの声が、狭い部屋に虚しく響いた。
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