第8話 異界ーエンデー 対追跡者

宿へと戻る途中、レイラがふと足を止めた。

ー……来てる。三人。森の入口の影。もう一人、教会の屋根の上。

「確認した。……仕掛ける」


その瞬間、修は風になった。

距離、およそ百メートル。

足音も、気配も無い。疾走する影は木陰に潜む追手の前に現れ、その勢いのまま鳩尾へ肘を叩き込んだ。

崩れ落ちる音を背に、さらに走る。

異変を察知しかけていた二人目の顎を、下から打ち上げた。

骨が軋む乾いた音が、夜気の中に吸い込まれていく。


三人目が腰のショートソードに手をかけた瞬間、修の膝が腹部を突き抜けた。

月光が差し込み、倒れた男の影を静かに照らす。


その様子を、遠く教会の屋根の上から見ていた一人の男がいた。

あまりの速さに、ただ息を呑む。

報告を……と、振り返ったその瞬間、

そこに修が立っていた。


言葉を発する間もなく、修の手が男の口元に伸びる。

掴んだまま、音もなく地面に落とした。


「……ふう」

息をひとつ吐く。


ーほんっと容赦ないねぇ、シュウ。

「こんなしつこい連中が側に居たら、寝るに寝れねぇだろ。」

ーそれはそう。

「さて。片づけて、飯食って、調べもんしよう。」


夜が再び静寂を取り戻す。

月が流れ、風が草原を撫でた。


──翌朝。

教会の裏で黒いマントを羽織った四人の男が、孤児によって発見された。

小さな騒ぎになったが、彼らは皆、同じことを口にしたという。


> 「……私たちは、なぜここに居るのだ。」

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